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5月の暗殺
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男は行きつけのバーで酒を飲んでいた。
「マスターもう一杯くれ」
その言葉を聞き優雅な手つきで酒を作ったマスターがカウンターにグラスを置く。しかし、その酒を見た男は、
「おい、俺はこんな高い酒は頼んでないぜ」
するとマスターは
「あちらのお客様からです」
と男の3つ離れた席に座る人物を見た。釣られて男もそちらを見ると、一人の女が座っていた。
女は男に気づくと少しこちらを向いてニコッと微笑んだ。
男は席を立ち女の横に移動した。
「有り難く頂くよ」
「いえそんな…有り難くなどはありません……失礼ながら先程から飲んでいるのを拝見していましたが、お疲れのようなので」
ヤケ酒もほどほどに。と女は微笑を顔に称えながら、自身のグラスを向けてきた。それにグラスを合わせながら
「見られてたのかい?恥ずかしいな…」
と言葉を交わし、一緒に飲むことになった。
不思議な女だった。
年齢は自分と同じくらいだという。見た目は20代前半なのに、纏っている雰囲気は、とても自分と同じ世代とは思えないほど落ち着いていて、
存在感が希薄なので気づきにくいが、恐ろしいくらい整った顔をしている。
気がつけば色々と話してしまっていた。
会社の経営をしている自分は、仕事人間で、一度離婚したこと。最近再婚したのだが、その妻もどうやら俺のお金を使って浮気していること。
「なんかさ…俺って何の為に働いてるのかなって……最初は生活のため、そして家族のためだったのにな……」
不思議と素直な気持ちで話せている事に気がついた。
女は適当な相槌ちを打ちながら、真剣に話を聞いてくれている。
「そうですか……だからヤケ酒していたのですね」
すると女は席を立ち、
「○○さん、私は近くのホテルで一室とっているので、良かったらそこで飲み直しませんか?」
ドクンと鼓動が跳ねた。
こんないい女と一晩過ごせたら……そう思っていたのは偽りのない事実だが…まさか、向こうから誘ってくるとは……
「私……もっと貴方のことが知りたいです…」
欲望が頭を駆けめぐる。彼女のバランスよく、いやらしい体に視線がどうしても向いてしまう……
どうする?だが、その行為は自分が先程まで非難していた妻と同じことをすることになる。
(先に浮気したのはあいつだ……俺だって……!)
「………いや、やめておくよ。せっかく俺の為に飲んでくれた君に迷惑はかけたくない。ありがとう、話したらスッキリしたよ」
彼女は少し目を見開き驚いたような顔をしていた。
そんな彼女の手に少し多めのお金を渡して俺は店を出る。
なんだか清々しい気分だ。
こんな気持ちはいつぶりだろうか……
「明日から……また頑張ろう」
後日
妻が何者かに殺害されて帰らぬ人となった。
その日、俺は出張で地方に出向いていたのだが、やはりというか……妻は不倫相手と会っていたらしい。食事をして、ホテルに向かい朝まで一緒だったようだ。
不倫相手と別れてから帰りの途中で殺害されたらしい。
「抵抗した形跡はなく、額にナイフが刺さっている状態で発見されました。我々も全力で犯人逮捕に努めます。どうか気を確かに」
説明してくれた警察の人が気を遣ってくれているが、俺はあまり悲しいとは思わなかった。
というよりも、不思議な気持ちだった。あの女性と会ってから数日でこの事件は………
彼女が関係している?しかもこの手際の良さと額にナイフ……
「暗殺者A………」
「何ですと?」
「いえ…なんでもありません」
警察官が問い詰めてくるが、俺はスルーした。
聞いたことがある。5年前まで世界はあらゆる国で戦争が起こっていた。いわゆる世界大戦である。
戦争は基本的には長い期間起こるものなのだが、わずか2年で終止符が打たれた。
なぜなら、戦争を起こしていた各国の要人、軍のトップ、はたまた王様までが、ことごとく暗殺されたのだ。
その暗殺者の名が「A」しかもその暗殺方法が今回と同様、「額を一撃で貫かれている」というものだ。
どんな厳重な警備でも、どんなに守られた王室でも関係なく殺されている。
中でも信憑性の高い噂として、殺された人の多くが男性で、個人的な部屋で殺されていることから、暗殺者は「女」なのではないかというものだ。
(もし、そうなのだとしたら、あの時の誘いでホテルに行ってたら……)
その瞬間、背筋に冷たいものが走る。
(まさか……な)
「自分はこれにて失礼します」
警察官が挨拶してきたので
「ああ、ありがとうございました。犯人の逮捕よろしくお願いいたします」
敬礼してすれ違う時
「もし…情報をバラしたら貴方の命はありませんよ?」
あの女の声!!
バッ!と振り返る。
そこには今すれ違ったはずの警察官がどこにもいなくなっていた。
俺は一度深呼吸して、目を瞑る。
あれが伝説の殺し屋……
暗殺者A
わかったよ、言う通りにするさ。せいぜい殺されないようにな!
それでもやはり感謝の気持ちが大きい。
妻を殺されて感謝も何もあったものじゃないが、
それでも俺の心は晴れていたのだから……
「マスターもう一杯くれ」
その言葉を聞き優雅な手つきで酒を作ったマスターがカウンターにグラスを置く。しかし、その酒を見た男は、
「おい、俺はこんな高い酒は頼んでないぜ」
するとマスターは
「あちらのお客様からです」
と男の3つ離れた席に座る人物を見た。釣られて男もそちらを見ると、一人の女が座っていた。
女は男に気づくと少しこちらを向いてニコッと微笑んだ。
男は席を立ち女の横に移動した。
「有り難く頂くよ」
「いえそんな…有り難くなどはありません……失礼ながら先程から飲んでいるのを拝見していましたが、お疲れのようなので」
ヤケ酒もほどほどに。と女は微笑を顔に称えながら、自身のグラスを向けてきた。それにグラスを合わせながら
「見られてたのかい?恥ずかしいな…」
と言葉を交わし、一緒に飲むことになった。
不思議な女だった。
年齢は自分と同じくらいだという。見た目は20代前半なのに、纏っている雰囲気は、とても自分と同じ世代とは思えないほど落ち着いていて、
存在感が希薄なので気づきにくいが、恐ろしいくらい整った顔をしている。
気がつけば色々と話してしまっていた。
会社の経営をしている自分は、仕事人間で、一度離婚したこと。最近再婚したのだが、その妻もどうやら俺のお金を使って浮気していること。
「なんかさ…俺って何の為に働いてるのかなって……最初は生活のため、そして家族のためだったのにな……」
不思議と素直な気持ちで話せている事に気がついた。
女は適当な相槌ちを打ちながら、真剣に話を聞いてくれている。
「そうですか……だからヤケ酒していたのですね」
すると女は席を立ち、
「○○さん、私は近くのホテルで一室とっているので、良かったらそこで飲み直しませんか?」
ドクンと鼓動が跳ねた。
こんないい女と一晩過ごせたら……そう思っていたのは偽りのない事実だが…まさか、向こうから誘ってくるとは……
「私……もっと貴方のことが知りたいです…」
欲望が頭を駆けめぐる。彼女のバランスよく、いやらしい体に視線がどうしても向いてしまう……
どうする?だが、その行為は自分が先程まで非難していた妻と同じことをすることになる。
(先に浮気したのはあいつだ……俺だって……!)
「………いや、やめておくよ。せっかく俺の為に飲んでくれた君に迷惑はかけたくない。ありがとう、話したらスッキリしたよ」
彼女は少し目を見開き驚いたような顔をしていた。
そんな彼女の手に少し多めのお金を渡して俺は店を出る。
なんだか清々しい気分だ。
こんな気持ちはいつぶりだろうか……
「明日から……また頑張ろう」
後日
妻が何者かに殺害されて帰らぬ人となった。
その日、俺は出張で地方に出向いていたのだが、やはりというか……妻は不倫相手と会っていたらしい。食事をして、ホテルに向かい朝まで一緒だったようだ。
不倫相手と別れてから帰りの途中で殺害されたらしい。
「抵抗した形跡はなく、額にナイフが刺さっている状態で発見されました。我々も全力で犯人逮捕に努めます。どうか気を確かに」
説明してくれた警察の人が気を遣ってくれているが、俺はあまり悲しいとは思わなかった。
というよりも、不思議な気持ちだった。あの女性と会ってから数日でこの事件は………
彼女が関係している?しかもこの手際の良さと額にナイフ……
「暗殺者A………」
「何ですと?」
「いえ…なんでもありません」
警察官が問い詰めてくるが、俺はスルーした。
聞いたことがある。5年前まで世界はあらゆる国で戦争が起こっていた。いわゆる世界大戦である。
戦争は基本的には長い期間起こるものなのだが、わずか2年で終止符が打たれた。
なぜなら、戦争を起こしていた各国の要人、軍のトップ、はたまた王様までが、ことごとく暗殺されたのだ。
その暗殺者の名が「A」しかもその暗殺方法が今回と同様、「額を一撃で貫かれている」というものだ。
どんな厳重な警備でも、どんなに守られた王室でも関係なく殺されている。
中でも信憑性の高い噂として、殺された人の多くが男性で、個人的な部屋で殺されていることから、暗殺者は「女」なのではないかというものだ。
(もし、そうなのだとしたら、あの時の誘いでホテルに行ってたら……)
その瞬間、背筋に冷たいものが走る。
(まさか……な)
「自分はこれにて失礼します」
警察官が挨拶してきたので
「ああ、ありがとうございました。犯人の逮捕よろしくお願いいたします」
敬礼してすれ違う時
「もし…情報をバラしたら貴方の命はありませんよ?」
あの女の声!!
バッ!と振り返る。
そこには今すれ違ったはずの警察官がどこにもいなくなっていた。
俺は一度深呼吸して、目を瞑る。
あれが伝説の殺し屋……
暗殺者A
わかったよ、言う通りにするさ。せいぜい殺されないようにな!
それでもやはり感謝の気持ちが大きい。
妻を殺されて感謝も何もあったものじゃないが、
それでも俺の心は晴れていたのだから……
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