『IF』異世界からの侵略者

平川班長

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1章 『IF』

第6話 戦いの後

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「やりすぎちゃった」

と、いきなり葵さんが俺と水無月さんの横に現れた!

「のわっ!?」

思わず、変な声が出た。

「のわ」

葵さんが真似する。いやいや恥ずかしいからやめてください。

「葵さん、バージェスは?」

水無月さんが真剣な表情で聞くので、ふざけたノリは出来そうにない。

「んー、逃げられた。あと多分、私の正体バレた」
 
あんなに俺と水無月さんを苦しめたバージェスをこんな短時間、しかも無傷で撤退させたのか。
見た目少女に見えるけど、この人ってすごいんだなー。

とマジマジ見ていると

「何見てるの?殺すよ?」

いや、こわっ!無表情だからなお恐い。

「えっと…すいません」

一応謝っておく。

「うん、いいよ」

あっさり返された!

「ミユ、この子誰?」

年下に見える少女から『この子』とか言われるとむず痒いな。
水無月さんはこれまでの経緯を簡潔に語ってくれた。   

「ふーん、『千里眼』ね……確かに似たような能力はあるけど、そこまでとなると、あとは覚醒すれば相当な力にはなりそうだね」

そう言う葵さんは相変わらす無表情なんだけど、水無月さんは、

「それよりも、葵さんの正体がバレたほうがマズイのでは…?一応トップシークレットのはずですよね?」

と、すごく真面目な顔で葵さんに話しかけている。葵さんは

「…………………………さっきの千里眼の話だけどさ…」

「話をそらさないでください!えっ?ちょっと待ってください…葵さん、ジュンさんに何て言われて来たんですか?」

「様子を見てこい。リミッターを外しすぎるな」

「ガッツリ戦闘してるじゃないですか!?」

正体までバレちゃってますし、と水無月さん。

「まあ、でもあの状況なら仕方なくない?」

それで何とかならない?と当の本人はむしろ割り切って水無月さんに聞いている。

「まあ、助かったのは事実なのでいいですが……私からもジュンさんには説明しますよ」

「ありがとミユ、大好き」

葵さんの顔に笑顔が浮かぶ。
うわ、めっちゃ美少女。
水無月さんは全体的にシャンとしていて、カッコいい綺麗なお姉さんだけど、葵さんは、笑い方が柔らかくて、普段無表情な分、その破壊力はスゴい。

「んー?何か邪な気配を感じる?」

勘がスゴいな!

「ところで、葵さんの正体って何で隠そうとしてるんですか?」

この質問には2人とも困った顔。

「そのことなんだけど、君はまだうちの所属じゃないし、あんまり情報漏洩はさせられない。まあ、こうなった以上、基地には来てもらうことにはなるけど……」

と、水無月さん。自分もこのまま日常には戻れそうにないし、

そんなことを話しているうちに最後のポイントに到着した。
5つ目のポイントはまさかの、どこの公園にもあるような滑り台だった(何でこんなものが?)

そうして滑り台を破壊した瞬間。

スッと景色と景色が…ダブった景色同士がくっつくような奇妙な感覚。

その時、

(あっ、いつもの風景だ)

感覚的なことではあるが、これがいつもの現実の世界だと理解した。なんか息づかいというか、世界が生きてる感覚。 

「さてと、遮絶も解除したし瀧本傑を基地に案内しますか」

と葵さん。でも

「基地ってどこにあるんですか?」

「んー?」

葵さんは少し間を空けて、とびきりの美少女顔で

「ここ」

と言ったのだった。ここって?

ブン!
とまたもや景色が変わった。えーと何か建物の中?さっきまで外にいたのに……

「どうやって移動したかは秘密。君にはうちのトップに会ってもらうから」

葵さんが通路を歩き出す。水無月さんも続く。
慌ててついていく俺だが

 「トップって、さっき話してたジュンって人ですか?」

「私もトップの一人だよ?」

「葵さんは戦闘面ではそうですが……実質的な守護者のトップはそのジュンって人だよ。ちょっと性格はアレだけど私は信頼してる」

うーむ、水無月さんには悪いけど性格アレってスゴい気になるなー

「だーれが性格アレだって?」

と不意に横から声が、

「貴方ですよ、ジュンさん。てゆーか、それ以外います?」

「おー、つれないねーミユは。いつもそんなツンケンしなくてもよくない?」

タバコを加えた男性が現れた。身長は高い。おそらく180cm以上。おそらくと言ったのは猫背だから、正確にはわからない。 
髪は耳まわりはブロックを入れて頭の上の髪はツンツンに立てている。鼻も高くて大きな黒色の瞳。
シャンとしてればそこら辺のモデルよりもカッコいいのでは?と思われるが、猫背も相まって全体的になよなよした印象を与える。

「新顔がいるね。初めまして。俺は守護者達を束ねる長、名前はジュンだ。君の名前は?」

とすごくフレンドリーに話しかけてくれたので、

「俺の名前は……」

瀧本です。と続けようとした瞬間。

グンッ!!と景色が回る!
そしてドシンと地面に尻餅をついた。

「えっ?はっ?!!」

いつの間にか地面に転がされている。

「んー、受け身も取れず素人か。相手のスパイの可能性は消えたかな?」

とジュンという男が見下ろしてくる。

(この人がやったのか!?…全然気配も何も察知出来なかった!)

改めてオーラを視てみるが、普通の一般人と変わらないオーラにしか視えないのに……

「ふーん、何で人をジロジロ視るかと思ったけど特殊な眼でも使えるのかな?身体は一般人としてはずいぶん鍛えてる。なるほど、面白い逸材を見つけたねミユは」

千里眼のこともこの一瞬で見抜いたのか!


瀧本が驚きを隠せない中、それはミユも同様だった。

(速い!全く反応出来なかった……)
ジュンって人のなりと性格はわかっているから、何かちょっかいをかけるかもと警戒していたのだが、そのミユをもってしても全く反応出来ない。
この人とはそれなりの付き合いになるけど、全然実力の底がしれない。何度か手合わせしたこともあるが……実際にミユは『触れることさえ出来ていない』のだ。

まあ、そもそも最高戦力と言われる実力を兼ね備える葵を差し置いてトップを張っているのだから(葵がトップになれる性格ではないのもあるが)当然といえば当然。
一度葵から聞いた話では、ジュンとは昔にガチで対決したこともあるらしいが、その時は三日三晩決着が着かなかったらしいし(葵が言っているので本当かはわからないが……)


「いや~、悪いね。職業柄、こういうのは疑うようになってるんだよね~!改めて君の名前は?」

今度は転んだ俺を片手で引っ張り上げながら、謝ってきたので、一応の警戒をしつつ

「………瀧本傑です」

と名乗っておいた。

「よろしく傑。そして、ようこそ守護者の基地へ!歓迎するよ!」

スゴくいい笑顔で話してくる。さっきまでとは違い一気に距離を詰めてきた。初見の相手に名前で呼ばれるのも初めてだ。何か妙な感じ……

「さてと、とりあえずミユを含めて全員無事に帰還出来たことを喜ぼう!傑は巻き込まれたみたいだけど……どうもそれだけじゃなさそうだ。ミユ、これまでの経緯を詳しく聞かせてくれるかい?」

「わかりました。まず……」

水無月さんが代表して、自分はバージェスにやられたこと。俺と出会ったこと。葵さんの手を借りて何とか帰ってこれたことを説明しながら4人で廊下を歩く。ふと広い空間に出た。長い楕円形のテーブルに椅子とかが置いてあって会議室のような場所だ。

「みんな腰かけてくれ」

ジュンさんの号令でみんな席についた。
座り心地の良い椅子に座ると、ドッと疲れが来た。それは水無月さんも一緒のようでフゥと短いタメ息をついた。

「うん、ミユの説明で大体の状況は掴めた。まずは、みんなご苦労様。すまなかったねミユ、まさかナンバーズの上位ランカーが来ることまでは僕も予想出来なかった……葵を派遣して正解だったね。中途半端なやつを援軍で出したら被害が増えるだけだった」

ジュンさんは水無月さんに申し訳ない顔をしている。
すると、

「でしょ?私はジュンからあんまり戦うなと言われたけど、戦わないとミユが危なかったんだから正体バレたけど結果オーライだよね?」

葵さんがすごく威張って言ってる!さっきも言ってたけど怒られるのが嫌なんだな~

「何で威張ってるかは分からないけど、確かに仲間を助けたお前は偉い…………ただお前の正体バレたことに関しては後でみっちり説教するよ?」

ニコーッと笑って葵さんに話しかけているジュンさん。心なしか額に青筋が浮かんでいるような………

その表情を見た葵さんは

無表情で落ち込んでいた。ズーンという音が聞こえてきそうだ。

「話を戻そう。傑、君の話だ。ミユから聞いている面もあるだろうが、緊急事態というのもあって細かくは聞けていないし分かっていないはずだ。色々聞きたいこともあるだろう。巻き込んだ手前、責任者として丁寧に説明する義務が僕にはある。何から聞きたい?」

穏やかで真剣な表情でこちらを見てくるジュンさん。
この人は信用しても良さそうだ。

「そもそも、バージェス達と何故貴方達は戦っているんですか?そして、彼らと貴方達は何者ですか?……」 

色々聞きたいことはあるのだが、まずはそこからだ。水無月さんが少し困ったような顔でジュンさんを見る。しかしジュンさんはそれを手で制して

「わかった。君には一から話そう。ただし、これを聞くと今日から君はうちに入ってもらうことになるし、今までの生活には戻れないぜ?」

それでもいいかい?と言ってきた。俺は頷く。とっくに覚悟は出来ている。昨日の晩、水無月さんを助けたときから……

「了解だ!任せなさい!長くなるぜ?」

ジュンは語る、守護者とイフとの戦いの始まりを……
それは俺が想像しているものを遥かに凌駕する戦いの歴史だった!

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