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1章 『IF』
第10話 眼の使い方
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(…あれ?……意識が飛んでた?)
ミユは自分が仰向けに倒れているのに気づいた。
(そうか……葵さんの一撃で………)
「瀧本君は!?」
ガバッと起きる。
ミユには最悪の状況が浮かんでいたが、見えた光景は全く別物だった。
「…うそ」
咄嗟に呟く。
瀧本が渡した短剣を使い、葵と近接戦闘を繰り広げていた。
正確には互角ではないだろう。おそらく葵の方が手を抜いてる。それでも一般人では到底あり得ないレベルの戦闘が行われている。
蹴りを軸に身体を自在に動かし、嵐のような連打を放つ葵の攻撃を、ギリギリの反応速度で歯を喰いしばりながら避ける瀧本。時には短剣の反撃を行いながら、喰い下がる!
しかし、徐々についていけなくなり、防戦一方となる。
空中からの踵落とし!短剣で受けるが…
「……ぐっ!!」
手が痺れる!
ダメだ、葵さんはすでに着地。このオーラの流れからして、俺の膝を狙ったローキックがくる!視えているけど、身体がついていけない!間に合わない!
「『壁(ウォール)』!!」
っと、諦めかけていた俺の目の前に血の壁が出現し攻撃を受けてくれる!
水無月さんの意識が戻っていたらしい。
(………それなら!!)
俺は血の壁の横から飛び出し、葵さんの背中側に回り、短剣を振るう!
「『解除(リリース)』!」
瞬間、血の壁が一瞬液体に戻り、葵さんの足を取り込みまた固まる!
「……むむ!」
葵さんは足をホールドされて動けない!
いける!
~モニタールーム~
「この男は何者だ?葵さんが能力を使ってないとはいえ、あれだけの攻撃をズブの素人が避けられるか?」
ジュンと一緒にモニターを観る男が腕を組みながら問う。
全身黒のシャツとズボン。
目は細く、開いているのかわからない。
背筋をピンと伸ばしスラッとした男で髪の毛も塗ったような黒。
カラスが人間になるとこんな感じなのではないだろうか?
ただ1つ異様なのは、腰に提げた日本刀くらいである。
「まあ、これが彼の能力だね。相手のオーラ?みたいなのが視えて攻撃の予測も出来る……もしかしたら『千里眼』の可能性もある」
「…千里眼!?ならば……女王の……?」
「いや、彼は無関係だよ。生まれも育ちもこの世界だ。僕も驚いてる……因果を感じてならないよ」
クイッと日本酒を呷る。
じんわりした熱さが喉を伝わる。
「ところで仁(じん)……君はこの訓練、どちらが勝つと推測してる?」
仁と呼ばれた男は、うーむと考え
「水無月は仮にもAランクの守護者。この男…瀧本といったか?瀧本がこうして能力を使えだすと2対1の差は大きい。しかも葵さんは能力の禁止がある。流石に2人が有利ではないのか?」
そう答える。この男らしい理路整然とした答えだとジュンは思った。
「たしかにそうだね。でも、葵の封じられてる「力」はあくまで『拒絶』だけ。これが「スキルホルダー」との最も違うところだけど、向こうの世界から来た僕達は少なからず「魔術が使える」「スキルホルダー」が1人1個の能力なのに対して魔術の数は実質「無限」だ。この差は大きい。そして…………」
ジュンはモニターを観ながら
「葵は体術が凄すぎるからわかりにくいけど、魔術めちゃくちゃ得意だからなー」
~シュミレーター室~
いける!
俺は短剣に力を込めて振り下ろす。
しかし、
(なんだ?葵さんの身体の内側で何かが渦巻いてる?)
スローモーションの世界で葵さんの体内で動く力のオーラが視える。それが回転し速度が一定まで上がったかと思うと……
(足に……?)
その力の塊が、血の壁に拘束されている足に流れていく!
なんだ!?
ドロッと血の壁が融解する。
「なっ!?」
水無月さんの驚愕。
葵さんは地に足をつけ、こちらに右手をかざす!
マズイ!さっきの力の塊が今度は手の平に…!
「『星よ(エトワール)』」
葵さんの呪文?と同時に光の弾が、5つの指先から発射される!
スローモーションの世界で視ているが
(速い!!ダメだ!俺の反応じゃ躱せない!)
普通に避けてもダメなら身体を速く動かせ!
バージェス戦で出来たアレをもう一度!
光弾の軌道は視えている。これを「速くなった」身体で躱す。そしてそのままで俺だけが速く動ける世界で、葵さんに肉薄する。
よし!今度こそいける!
だが葵さんも歴戦の猛者。
ありえない速度で動く俺に反応し
「『空よ(シエル)』」
呪文を唱えた!
ブン!と俺のいる地面に複雑な紋様が浮かぶ。
(関係ない!このまま……!)
俺の方が速い!と思った瞬間
フッと視界が揺れ
気づくと……
「えっ?」
「なっ…!?」
水無月さんの頭上に落ちる。
というよりは……
「ちょ!?瀧本君!?どこ触って……!」
抱きついたような形になってしまった!
うわー、身体細っ!普段の水無月さんからは想像つかないくらい華奢で……てゆーか、柔らか!あとすごくいい匂いが……
「もうっ!離れて……!」
ゲシっと蹴られてしまった。
俺のせいじゃないですよ?
あと、高速で動いたツケで身体がめちゃくちゃ痛いんですけど……
2人の様子を見ながら葵は1人感心していた。
(ふーん、ただ相手のオーラを視るだけじゃなくて、ああいう風に、高速で動くことも出来るのか……どうやら時間軸がズレてるなぁ。でも身体にかかる負担はかなり大きいはずだから長時間は使えないでしょ)
(身体機能も申し分なし。多分相当鍛えてる。でも、一番驚きなのは「精神力」)
そう、つい先程まで、戦いなんてこれっぽっちも知らなかった瀧本がいくら眼の力があるとはいえ、葵と近接戦闘をこなし、あまつさえ、短剣を迷いなく「人」に向かって振るうことが出来る。これは一般人からしたら到底あり得ない精神構造だ
(ある意味「イカれてる」どんな人生送ってきたのやら……)
ついニヤけてしまう。久しぶりに原石に出会えたような感覚を葵は感じていた。
瀧本傑は近い将来、守護者の中核を担うくらい強くなる!
そんな予感が葵の脳裏に走っていた。
(うーん、瀧本傑については大体見えたかな。そろそろお姫様を虐めるとしますか!)
と、良からぬことを考え今度はすごく人の悪い笑顔をしながら2人に近づく葵であった。
眼の能力を使い始めた瀧本はミユと協力し、葵という強大な敵を倒すことは出来るのだろうか。
ミユは自分が仰向けに倒れているのに気づいた。
(そうか……葵さんの一撃で………)
「瀧本君は!?」
ガバッと起きる。
ミユには最悪の状況が浮かんでいたが、見えた光景は全く別物だった。
「…うそ」
咄嗟に呟く。
瀧本が渡した短剣を使い、葵と近接戦闘を繰り広げていた。
正確には互角ではないだろう。おそらく葵の方が手を抜いてる。それでも一般人では到底あり得ないレベルの戦闘が行われている。
蹴りを軸に身体を自在に動かし、嵐のような連打を放つ葵の攻撃を、ギリギリの反応速度で歯を喰いしばりながら避ける瀧本。時には短剣の反撃を行いながら、喰い下がる!
しかし、徐々についていけなくなり、防戦一方となる。
空中からの踵落とし!短剣で受けるが…
「……ぐっ!!」
手が痺れる!
ダメだ、葵さんはすでに着地。このオーラの流れからして、俺の膝を狙ったローキックがくる!視えているけど、身体がついていけない!間に合わない!
「『壁(ウォール)』!!」
っと、諦めかけていた俺の目の前に血の壁が出現し攻撃を受けてくれる!
水無月さんの意識が戻っていたらしい。
(………それなら!!)
俺は血の壁の横から飛び出し、葵さんの背中側に回り、短剣を振るう!
「『解除(リリース)』!」
瞬間、血の壁が一瞬液体に戻り、葵さんの足を取り込みまた固まる!
「……むむ!」
葵さんは足をホールドされて動けない!
いける!
~モニタールーム~
「この男は何者だ?葵さんが能力を使ってないとはいえ、あれだけの攻撃をズブの素人が避けられるか?」
ジュンと一緒にモニターを観る男が腕を組みながら問う。
全身黒のシャツとズボン。
目は細く、開いているのかわからない。
背筋をピンと伸ばしスラッとした男で髪の毛も塗ったような黒。
カラスが人間になるとこんな感じなのではないだろうか?
ただ1つ異様なのは、腰に提げた日本刀くらいである。
「まあ、これが彼の能力だね。相手のオーラ?みたいなのが視えて攻撃の予測も出来る……もしかしたら『千里眼』の可能性もある」
「…千里眼!?ならば……女王の……?」
「いや、彼は無関係だよ。生まれも育ちもこの世界だ。僕も驚いてる……因果を感じてならないよ」
クイッと日本酒を呷る。
じんわりした熱さが喉を伝わる。
「ところで仁(じん)……君はこの訓練、どちらが勝つと推測してる?」
仁と呼ばれた男は、うーむと考え
「水無月は仮にもAランクの守護者。この男…瀧本といったか?瀧本がこうして能力を使えだすと2対1の差は大きい。しかも葵さんは能力の禁止がある。流石に2人が有利ではないのか?」
そう答える。この男らしい理路整然とした答えだとジュンは思った。
「たしかにそうだね。でも、葵の封じられてる「力」はあくまで『拒絶』だけ。これが「スキルホルダー」との最も違うところだけど、向こうの世界から来た僕達は少なからず「魔術が使える」「スキルホルダー」が1人1個の能力なのに対して魔術の数は実質「無限」だ。この差は大きい。そして…………」
ジュンはモニターを観ながら
「葵は体術が凄すぎるからわかりにくいけど、魔術めちゃくちゃ得意だからなー」
~シュミレーター室~
いける!
俺は短剣に力を込めて振り下ろす。
しかし、
(なんだ?葵さんの身体の内側で何かが渦巻いてる?)
スローモーションの世界で葵さんの体内で動く力のオーラが視える。それが回転し速度が一定まで上がったかと思うと……
(足に……?)
その力の塊が、血の壁に拘束されている足に流れていく!
なんだ!?
ドロッと血の壁が融解する。
「なっ!?」
水無月さんの驚愕。
葵さんは地に足をつけ、こちらに右手をかざす!
マズイ!さっきの力の塊が今度は手の平に…!
「『星よ(エトワール)』」
葵さんの呪文?と同時に光の弾が、5つの指先から発射される!
スローモーションの世界で視ているが
(速い!!ダメだ!俺の反応じゃ躱せない!)
普通に避けてもダメなら身体を速く動かせ!
バージェス戦で出来たアレをもう一度!
光弾の軌道は視えている。これを「速くなった」身体で躱す。そしてそのままで俺だけが速く動ける世界で、葵さんに肉薄する。
よし!今度こそいける!
だが葵さんも歴戦の猛者。
ありえない速度で動く俺に反応し
「『空よ(シエル)』」
呪文を唱えた!
ブン!と俺のいる地面に複雑な紋様が浮かぶ。
(関係ない!このまま……!)
俺の方が速い!と思った瞬間
フッと視界が揺れ
気づくと……
「えっ?」
「なっ…!?」
水無月さんの頭上に落ちる。
というよりは……
「ちょ!?瀧本君!?どこ触って……!」
抱きついたような形になってしまった!
うわー、身体細っ!普段の水無月さんからは想像つかないくらい華奢で……てゆーか、柔らか!あとすごくいい匂いが……
「もうっ!離れて……!」
ゲシっと蹴られてしまった。
俺のせいじゃないですよ?
あと、高速で動いたツケで身体がめちゃくちゃ痛いんですけど……
2人の様子を見ながら葵は1人感心していた。
(ふーん、ただ相手のオーラを視るだけじゃなくて、ああいう風に、高速で動くことも出来るのか……どうやら時間軸がズレてるなぁ。でも身体にかかる負担はかなり大きいはずだから長時間は使えないでしょ)
(身体機能も申し分なし。多分相当鍛えてる。でも、一番驚きなのは「精神力」)
そう、つい先程まで、戦いなんてこれっぽっちも知らなかった瀧本がいくら眼の力があるとはいえ、葵と近接戦闘をこなし、あまつさえ、短剣を迷いなく「人」に向かって振るうことが出来る。これは一般人からしたら到底あり得ない精神構造だ
(ある意味「イカれてる」どんな人生送ってきたのやら……)
ついニヤけてしまう。久しぶりに原石に出会えたような感覚を葵は感じていた。
瀧本傑は近い将来、守護者の中核を担うくらい強くなる!
そんな予感が葵の脳裏に走っていた。
(うーん、瀧本傑については大体見えたかな。そろそろお姫様を虐めるとしますか!)
と、良からぬことを考え今度はすごく人の悪い笑顔をしながら2人に近づく葵であった。
眼の能力を使い始めた瀧本はミユと協力し、葵という強大な敵を倒すことは出来るのだろうか。
応援ありがとうございます!
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