10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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序章 異界交流年の日常

2話 10年に一度のお祭り『異界交流年』開催中!2


 私シエナ・ジュルトが所属している雑誌『月刊アース』編集部は、何故か前回の交流年時に異界人に大流行し、バックナンバーを買い漁る者まで現れ、売れに売れて、今現在創刊12年とまあまあ長い歴史をもつ雑誌に成長している。
 そのため、『月刊アース』の取材だと言うと、二つ返事で了承してくれることが多く、アポイントを取ったりその場で取材を受けてもらうのは結構簡単だったりする。
 私が出版社に入社して『月刊アース』に配属になってからもうすぐ3年経つが、今回の交流年でも前回同様かそれ以上の売り上げを上層部は狙っているらしく、予算や発行部数も普段より大幅に上げられて、社内でも雑誌業界でも注目を集めている。
 そのため、失敗は許されないと編集長は躍起になっており、関連する施設や店や自治体などに片っ端から取材許可を取るための連絡をして、許可の下りたところへ片っ端から編集者を派遣するため、私達担当編集者は全国各地を飛び回って連日取材三昧の日々を送っているのだ。

 私ももう何か月も丸一日休日を取っていない。
 同僚の内一人は、先月子供の出産に立ち会えなかったどころか、いまだに会えてもいないそうだ。離婚が近いかもしれないと泣き言を言いながら仕事の連絡を寄こしてきたのはついこの間の事。
 可哀想に…早く会えるといいね、と励ますのが精一杯だったのは言うまでもない。
 

 こんなに忙しいなんて聞いてない!と愚痴を言っても仕事が減るわけでも休みがもらえるわけでもないので、無理やり気持ちを切り替えて、次の取材の事を考える。
 今日最後のアポを取っている天使の方は、二か月前にも取材をお願いしたことのある方で、また地上界へ観光旅行へやって来ると連絡があったので、あることについて少し講義をお願いしてある。知り合いの悪魔の方とこちらで落ち合うそうで、その方にも了承をとり協力してくれることになっている。

 その講義とは、ズバリ魔法についてだ。

 天使と悪魔は魔法が使えるのだ。なんとも夢溢れるファンタジーな現象で、私も使ってみたい!と小さい頃は思っていたことがある。…人に知られたくない黒歴史である。
 ただ、魔法を使うには『魔素』という空気中の成分が必要不可欠らしく、それは地上界には存在しない。そのため、人間は魔法を使うことが出来ないし、天使と悪魔も地上界では魔法を発動させられないのだそうだ。
 そして、魔素は人間にとって毒物でもある。人間が魔素を取り込んでしまうと、循環させることも排出させることもできず、猛スピードで体を蝕んでいき2~3日で死を迎えるほどに、人間にとっては有害物質なのだ。

 私が事前に魔法について調べられた事はこのくらいしかない。文献や記事などを見漁っても、人間には扱えない物のため最低限の知識しか出てこなかった。
 だからこそ、普段から魔法を扱って生活している天使と悪魔に、どういったものなのかを教えてほしいとお願いしたのだが、二人とも快く快諾してくれた。その代わり、おいしい海鮮料理が食べたいとリクエストされてしまったが。

 昼は熟成肉ステーキ、夜は豪華海鮮料理。なんとも贅沢な一日だ。





 熟成肉ステーキの昼食も無事に満足してもらえ、同僚おすすめの海鮮料理のレストランでアポを取っていた天使と悪魔の方と落ち合った。

「シエナちゃん、元気だった~?」
「ええ、アリスさんもお元気そうで何よりです。それにしても、2回目の地上界訪問、早くないですか?お手紙での感じだと、もう少し間をあけていらっしゃるのかと思っていました」
「そのつもりだったんだけどねぇ~、アマラスが今このタイミングでしか休みとれないって聞かなくて~」
「しょうがねえだろ。今年は仕事忙しくて希望通り休み貰えねえんだから」

 時間通りにやってきた天使のアリスさんと悪魔のアマラスさんは、元々仕事で知り合ったのだそうだ。それが、交流年の度に顔を合わせるようになり、いつの間にか友達になったらしい。

 因みに、アリスという名前は偽名らしい。何故か聞いたら、「響きが可愛いから~」と大した理由はないらしい。
 しゃべり方も仕草も女性っぽいが、長身でガタイのいい正真正銘男性だ。
 しかし、を『お兄さん』と呼んではいけない。『お姉さん』とお呼びしなければ恐ろしい視線を向けられるので、細心の注意が必要なのだ。
 アマラスさんも偽名だそうだが、これは仕事柄人間に本名を晒せないかららしい。本名を人間に名乗れない仕事ってどんな仕事なのか、そっちの方が気になる。
 アリスさんはアマラスさんの本名を知ってるそうだが、間違えて呼びそうで怖いからと偽名の方で普段から呼んでいるのだそうだ。

 天使と悪魔、名前だけでも一つ記事が書けるくらいに、奥が深いなぁ。

 そんな事を思いながら、食事が来るまでの間、お互いの近況報告などを楽しく話し合った。

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