10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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序章 異界交流年の日常

3話 天使と悪魔による魔法講座1


 一通り注文したものを食べつくし、食休みがてら今日の本題へ入る。

「魔法がどんなものかって言ってもねえ~。私たちは呼吸するようにごく当たり前に扱ってるから、改めて口頭で説明するのって難しいのよねぇ~」
「一番手っ取り早いのは、天界か魔界へ行って、人間向けの魔法のデモンストレーションを見るのが一番だけどな。交流年の間はどこかしこでやってるから。でもシエナはこっちに来る予定ないんだろ?」

 そうなのだ。異界へ自由に行き来できるにもかかわらず、編集長は私たちが異界へ取材に行くことを許可しない。
 何故かと問えば、「普段は人間向けの情報を発信しているが、今年は別だ。異界人向けの地上界の情報を多く集めて、興味を引くような雑誌がウケるに決まっている!」ということらしい。
 そのため、異界人がどんなことに興味があるのか、どんなことを体験したいのか、とにかく多くのアンケートを取ってそれを特集記事として掲載するために、異界へなど行ってる暇はないんだそうだ。

「ええ。個人的には是非行ってみたいのですけどね。でも仕事が忙しくてとても纏まった休みが取れそうになくて。なので、せめてお話だけでも伺ってみたくて。どんなものかお話を聞いてるだけでも楽しいですし、想像するだけでもワクワクします」
「そんなもんかねぇ。俺にはわかんねぇ感覚だけど、シエナがそれでいいなら」

 そう言ってアマラスさんは追加の酒と肴を注文し始めた。
 まあ、自分でも変なことを言っているのはわかる。
 知りたいなら見に行けばいい。でも行きたいのに行けない、このもどかしい衝動を抑えるために、取材という態をとってでも話を聞きたかったのだ。

「まあまあ、いいじゃない。こうしてシエナと友達みたいに話しながらおいしい食事をしてお酒を飲んで、私は今すっごく楽しいわぁ~。それで、魔法についてだけどね~」

 若干酔いが回ってきているアリスさんの説明によると、天使と悪魔で使う魔法は大差なく(正確に言うと少し違うのだそうだが、魔法知識のない人間には理解は難しいとのことで省略された)、ほとんど同じ魔法が使えるそうだ。
 例えば、何もないところに水や火を出したり、風を好きな方角へ吹かせたり、暗いところを明るく照らしたり、離れている人と電話のように声のやり取りができたり、何もない空間から物を出し入れしたりなどが挙げられるが、人間が科学技術を使って行っていることは大概魔法でできるらしい。

 その時に使用する魔法の素となるのが『魔素』で、生まれつき自分が持っている魔素を操る能力の『魔力』で魔素を操り、魔法を発動させるための術式『魔術』を展開して使いたい魔法を発動させる、という一連の流れを何も意識することなく息をするように当たり前に行うのだ。
 天界でも魔界でも、自分の魔力操作の訓練や、魔術の勉強、魔素が人間に与える影響、魔法発動訓練など、魔法に関する基本的なことは義務教育で習い、魔法精度を上げてより多くの術式を扱えるように、より高度な魔法を発動できるように勉強するそうだ。
 
「へぇ、何もしなくても生まれてすぐヒョイって感じで魔法を使えるんだと思っていました。魔法って学問の一つなんですね」
「そうよぉ~。確かに生まれてすぐ使える人もいるけど、そんな人は稀ね~。所謂天才って呼ばれる人よ~。私達みたいな一般人は、親から最低限の魔力操作を小さいころに教わって初期魔法が少し使える程度になった状態で、学校で本格的に学ぶのよ~」
「おい、私達って一括りにすんなよ。もしかしたらお前と違って俺は天才児だったかもしれないだろ?」
「あはははっ!それは絶対ないわねぇ~。だってアマラスだものぉ~」
「はあ?喧嘩売ってんのかてめぇ」
「ちょちょちょっと!ここで喧嘩しないでくださいよ!」

 なんだか不穏な空気が漂ってきたので、話題を変えることにした。
 異界で異界人が揉め事や事件を起こすと、強制送還された上にその年はそれ以上の往来が禁止されるのだ。
 私が聞いたことが原因でこの二人に迷惑を掛けるわけにはいかない。本当はもっと魔法について聞きたかったが、致し方ない。

「魔法といえば、地上界には魔法のような芸の『手品』が皆さんに人気ですけど、あれってどういう風に捉えてるんですか?やっぱり魔法のパチモンみたいな感じなんですか?」
「手品ね!あれすごいわよねぇ~!初めて見た時、私めっちゃ感動したもの~!」
「あぁ、あれは俺も感動したな。魔法を使えない人間が魔法を使ってるんだもんな。何回見てもタネがわかんねぇし、タネ明かしされても自分じゃ魔法なしでできねぇし」

 取材時には絶対使わない、敢えて俗世な言葉を使って気を逸らしてみる。作戦は成功したらしく、内心胸をなでおろす。
 魔法を模した手品という芸は、魔法を扱えない人間が魔法を身近に体験したくて開発したもので、手先の器用な人間だからこそできる芸当であり、同じことを天使も悪魔も魔法を使って再現できるが、人間がそれをやってのけるのはかなり衝撃が大きく、地上界へ来たら必ず見たいものの一つなんだとか。

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