10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

文字の大きさ
4 / 92
序章 異界交流年の日常

4話 天使と悪魔による魔法講座2


「本当に人間って手先が器用よねぇ~。手品もそうだけど、今回の目玉の携帯電話には驚いたわぁ~。前回の固定電話もびっくりしたけど、それを持ち歩けるように小型化してさらに写真も撮れるなんて!」
「たった10年でそれだけ技術開発が進むなんて、俺たちには考えらんねえよなぁ。離れた相手と会話するなんて通信魔法で一瞬でつながるし、静止画も動画も記録魔法で一発だし」
「そうそう!それに、普段使いするものにこんなに実用的且つ素敵なデザインで作られてるのよぉ~。ホント惚れ惚れしちゃうわぁ~。私なんてコレクション用に5個も買っちゃったもの~」
「…5個は多すぎでは?地上界以外では使えないですよ?毎年新デザインが発売されるので、地上界でも故障してなくても買い替える人も多いですね。それに、本体に傷をつけるのを防ぐために、それこそ様々なデザインや形のカバーが売られていますし」
「そうそれ!ケータイカバーってやつ!あれホント色んなオシャレなものがあるわよねぇ~!目移りしちゃってもうどうしましょうって感じだものぉ~」
「別に地上界以外で使えなくても、その技術とデザインだけでも持ってる価値があるんだよ。俺らにはそんなもの必要ないし開発できないからな」
「へぇ、そういうものなんですねぇ」
「それに、一人1台もってれば一緒に地上界へ来た仲間とはぐれても連絡取れるしな。ここじゃ通信魔法も使えねえし」

 

 地上界の技術力は、天界も魔界も一目置いているようで、毎回目玉となる新技術が披露されるのだが、それを楽しみにしている人がかなり多い。
 今年はここ10年で急速に普及した携帯電話が目玉になっている。そのため、コレクション目的やお土産として買って帰る天使や悪魔がかなりたくさんいると聞いている。アリスさんも例に漏れず、大量にお買い上げ頂いたみたいだ。


「うんうん、通信魔法が使えないのは本当に辛いわぁ~。今回携帯電話が手に入って、本当に本当にうれしかったもの~。以前、当時のダーリンとこっちに遊びに来た時に逸れちゃったことがあったんだけど、その時は大変だったのよ~。迷子センターに飛び込んで半日かけて見つけてもらってやっと合流できたんだからぁ~」
「天使と悪魔の皆さんにとっては死活問題だったんですね」
「そうよぉ~。天語なら聞こえるかと思って試してみたけど全くだったし~」
「何となくここら辺にいるってのは把握できるが、正確な位置まではわかんねぇしな」
「何となくでも相手の位置がわかるんですか?」
「あぁ。俺らの体内に残ってる魔素を感知する追跡魔法の一種なんだが、空気中に魔素が無いから正確な場所までは特定できねえんだよ。あっちの方角にいるっぽい、って感じでしかわかんねぇな。1回発動しちまったら、自分の魔素残量もカラになるから、それ以上発動もできなくなるし」
「それに、体内に残ってる魔素も時間経過で消化されて消えちゃうしねぇ~。ついいつもの癖で魔法を発動しようとして残ってる魔素を使い切っちゃったりなんかしたら、それこそ全く感知できなくなっちゃうし。本当大変だったのよぉ~」

 全く知らなかった。異界人専門の迷子センターが各地に設置されているのは知っていたが、そんな裏事情があったとは。
 そんなことより、さらっと興味の惹かれることを言っていたような。

「天語と魔語が使われているのはもちろん、人語が共通言語で皆さん流暢に話せるのは知っているんですが、どういった言語なんですか?今少し聞かせてもらうことってできますか?」

 


 そう、天使が話す天語、悪魔が話す魔語、人間が話す人語の、3つの言語が存在するのだが、天語と魔語は人間には聞き取ることが出来ない。そのため、天使と悪魔は人語が学校で必修科目になっているのだ。
 録音された音声を聞いたことがあるが、鈴虫のような高い音域が幾重にも重なっている音や、ジージーと不快に感じる音や、ザァ――――――とテレビの砂嵐のような音がずっと鳴っていたりと、本当に天語魔語を録音したものなのか疑いたくなるような音声が流れていた。

「いいけど、人間にとったら不快な音だって聞いたことあるぞ?」
〈いいじゃない別に。聞きたいっていってるんだし聞かせてあげれば。不快に思っても自業自得でしょ~〉
「!!」
【そうだけど。てかお前だいぶ酔ってるだろ。それともどうせ聞き取れないからって悪態ついてんのか?ハッ、性格悪っ】
「!?」
〈あんたにだけは言われたくないわ~。シエナが気に入ったからって手出さないでよ~。さっきから下心丸出しで親切にしてるのすっごい気持ち悪い~。でも彼女は全く気付いてなさそうだけどねぇ~〉
【あ゛ぁ゛?んだとこのクソガキ野郎もう一遍言ってみろやコラ】
「???」
〈はぁ?誰がクソガキ野郎だゴルァ?てめぇより150年長生きしてるっつーの。それよりも男として扱ったことの方を訂正しろや〉
【俺らにとったら100年なんて年の差でもなんでもねぇだろが。それとも人間の感覚に慣れちまったってか?ハッ、天使の矜持とか普段言ってるくせにそんなもんなんだな】
〈てめぇもう一回言ってみろや殺すぞあ゛あ゛?〉

 ……なんかヤバい気がする。罵り合ってる気がする。アリスさんが漢になってる気がする。今すぐ止めないと喧嘩始める気がする!

「やっ、やっぱり聞き取れないですね!なんだか讃美歌のハーモニーみたいな美しい高音と、ジーっていうネジ巻きみたいなずっと聞いててもなんか心地いい音が交互に聞こえました!お互いの言語は聞き取れるんですね!」
「あらぁ~美しい声だなんて嬉しいわぁ~!」
「…心地いいなんて初めて言われたな。ほとんどの奴が不快な音って言うのに」
「そんなことないですよ!私はお二人の声?は好きです!」
「いやぁんシエナってば嬉しいこと言ってくれるのねぇ~!もう大好きよ~!ハグしちゃう!」
「あ、こらてめぇ!どさくさに紛れて何してやがる!」

 何とか危険は脱したようだ。し、心臓に悪いっ!もしかして二人とも結構喧嘩っ早い性格なのかな?
 私の前だからおとなしくしてるとか?
 …余計なことは考えないでおこう。私の平穏な日常のために。うん、それがいい。



 その後、買ったばかりという二人の携帯電話の番号を交換し、アリスさんにアマラスさんとは絶対二人きりで会うなとしつこく言い寄られ約束させられてから別れた。
 あんなに親切で優しい方なのに何をそんなに心配しているのか、よくわからなかったけれど、あの天語と魔語での会話が原因だということは察せられたので、深く考えないようにした。知らなければ平和でいられるし。

 二人との時間が楽しくて思ったよりも食事の時間が長くなり、編集部へ寄ってから家へ帰ってきたのは日付の変わる前ギリギリだった。
 それにしても、なんだか、めっっっちゃ疲れた。
 すごい濃くて長い一日がやっと終わり、倒れるようにベッドへ沈んだ。

感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。