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序章 異界交流年の日常
4話 天使と悪魔による魔法講座2
「本当に人間って手先が器用よねぇ~。手品もそうだけど、今回の目玉の携帯電話には驚いたわぁ~。前回の固定電話もびっくりしたけど、それを持ち歩けるように小型化してさらに写真も撮れるなんて!」
「たった10年でそれだけ技術開発が進むなんて、俺たちには考えらんねえよなぁ。離れた相手と会話するなんて通信魔法で一瞬でつながるし、静止画も動画も記録魔法で一発だし」
「そうそう!それに、普段使いするものにこんなに実用的且つ素敵なデザインで作られてるのよぉ~。ホント惚れ惚れしちゃうわぁ~。私なんてコレクション用に5個も買っちゃったもの~」
「…5個は多すぎでは?地上界以外では使えないですよ?毎年新デザインが発売されるので、地上界でも故障してなくても買い替える人も多いですね。それに、本体に傷をつけるのを防ぐために、それこそ様々なデザインや形のカバーが売られていますし」
「そうそれ!ケータイカバーってやつ!あれホント色んなオシャレなものがあるわよねぇ~!目移りしちゃってもうどうしましょうって感じだものぉ~」
「別に地上界以外で使えなくても、その技術とデザインだけでも持ってる価値があるんだよ。俺らにはそんなもの必要ないし開発できないからな」
「へぇ、そういうものなんですねぇ」
「それに、一人1台もってれば一緒に地上界へ来た仲間と逸れても連絡取れるしな。ここじゃ通信魔法も使えねえし」
地上界の技術力は、天界も魔界も一目置いているようで、毎回目玉となる新技術が披露されるのだが、それを楽しみにしている人がかなり多い。
今年はここ10年で急速に普及した携帯電話が目玉になっている。そのため、コレクション目的やお土産として買って帰る天使や悪魔がかなりたくさんいると聞いている。アリスさんも例に漏れず、大量にお買い上げ頂いたみたいだ。
「うんうん、通信魔法が使えないのは本当に辛いわぁ~。今回携帯電話が手に入って、本当に本当にうれしかったもの~。以前、当時のダーリンとこっちに遊びに来た時に逸れちゃったことがあったんだけど、その時は大変だったのよ~。迷子センターに飛び込んで半日かけて見つけてもらってやっと合流できたんだからぁ~」
「天使と悪魔の皆さんにとっては死活問題だったんですね」
「そうよぉ~。天語なら聞こえるかと思って試してみたけど全くだったし~」
「何となくここら辺にいるってのは把握できるが、正確な位置まではわかんねぇしな」
「何となくでも相手の位置がわかるんですか?」
「あぁ。俺らの体内に残ってる魔素を感知する追跡魔法の一種なんだが、空気中に魔素が無いから正確な場所までは特定できねえんだよ。あっちの方角にいるっぽい、って感じでしかわかんねぇな。1回発動しちまったら、自分の魔素残量もカラになるから、それ以上発動もできなくなるし」
「それに、体内に残ってる魔素も時間経過で消化されて消えちゃうしねぇ~。ついいつもの癖で魔法を発動しようとして残ってる魔素を使い切っちゃったりなんかしたら、それこそ全く感知できなくなっちゃうし。本当大変だったのよぉ~」
全く知らなかった。異界人専門の迷子センターが各地に設置されているのは知っていたが、そんな裏事情があったとは。
そんなことより、さらっと興味の惹かれることを言っていたような。
「天語と魔語が使われているのはもちろん、人語が共通言語で皆さん流暢に話せるのは知っているんですが、どういった言語なんですか?今少し聞かせてもらうことってできますか?」
そう、天使が話す天語、悪魔が話す魔語、人間が話す人語の、3つの言語が存在するのだが、天語と魔語は人間には聞き取ることが出来ない。そのため、天使と悪魔は人語が学校で必修科目になっているのだ。
録音された音声を聞いたことがあるが、鈴虫のような高い音域が幾重にも重なっている音や、ジージーと不快に感じる音や、ザァ――――――とテレビの砂嵐のような音がずっと鳴っていたりと、本当に天語魔語を録音したものなのか疑いたくなるような音声が流れていた。
「いいけど、人間にとったら不快な音だって聞いたことあるぞ?」
〈いいじゃない別に。聞きたいっていってるんだし聞かせてあげれば。不快に思っても自業自得でしょ~〉
「!!」
【そうだけど。てかお前だいぶ酔ってるだろ。それともどうせ聞き取れないからって悪態ついてんのか?ハッ、性格悪っ】
「!?」
〈あんたにだけは言われたくないわ~。シエナが気に入ったからって手出さないでよ~。さっきから下心丸出しで親切にしてるのすっごい気持ち悪い~。でも彼女は全く気付いてなさそうだけどねぇ~〉
【あ゛ぁ゛?んだとこのクソガキ野郎もう一遍言ってみろやコラ】
「???」
〈はぁ?誰がクソガキ野郎だゴルァ?てめぇより150年長生きしてるっつーの。それよりも男として扱ったことの方を訂正しろや〉
【俺らにとったら100年なんて年の差でもなんでもねぇだろが。それとも人間の感覚に慣れちまったってか?ハッ、天使の矜持とか普段言ってるくせにそんなもんなんだな】
〈てめぇもう一回言ってみろや殺すぞあ゛あ゛?〉
……なんかヤバい気がする。罵り合ってる気がする。アリスさんが漢になってる気がする。今すぐ止めないと喧嘩始める気がする!
「やっ、やっぱり聞き取れないですね!なんだか讃美歌のハーモニーみたいな美しい高音と、ジーっていうネジ巻きみたいなずっと聞いててもなんか心地いい音が交互に聞こえました!お互いの言語は聞き取れるんですね!」
「あらぁ~美しい声だなんて嬉しいわぁ~!」
「…心地いいなんて初めて言われたな。ほとんどの奴が不快な音って言うのに」
「そんなことないですよ!私はお二人の声?は好きです!」
「いやぁんシエナってば嬉しいこと言ってくれるのねぇ~!もう大好きよ~!ハグしちゃう!」
「あ、こらてめぇ!どさくさに紛れて何してやがる!」
何とか危険は脱したようだ。し、心臓に悪いっ!もしかして二人とも結構喧嘩っ早い性格なのかな?
私の前だからおとなしくしてるとか?
…余計なことは考えないでおこう。私の平穏な日常のために。うん、それがいい。
その後、買ったばかりという二人の携帯電話の番号を交換し、アリスさんにアマラスさんとは絶対二人きりで会うなとしつこく言い寄られ約束させられてから別れた。
あんなに親切で優しい方なのに何をそんなに心配しているのか、よくわからなかったけれど、あの天語と魔語での会話が原因だということは察せられたので、深く考えないようにした。知らなければ平和でいられるし。
二人との時間が楽しくて思ったよりも食事の時間が長くなり、編集部へ寄ってから家へ帰ってきたのは日付の変わる前ギリギリだった。
それにしても、なんだか、めっっっちゃ疲れた。
すごい濃くて長い一日がやっと終わり、倒れるようにベッドへ沈んだ。
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