10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第1章 悪魔との出会い

5話 とある悪魔との出会い1


 今日も朝から仕事に追われ、お昼を過ぎたころに少し時間が出来たので、近くのカフェで取材内容をまとめようと思い向かっていると、ガイドブック片手に迷ってるような二人組を見つけ、直感で声を掛けた。

「すみません、私『月刊アース』の編集者のシエナ・ジュルトと申します。少しお話をお伺いさせて頂けないでしょうか」
「え!月刊アース!?マジ!?あたしめっちゃ読んでるよ!話す話す!何でも聞いて!!」
「ちょっと、そんながっつくの辞めなよ」
「いえいえ、お時間いただきありがとうございます。早速ですが――」


 一通り取材を終え気になっていたことを尋ねると、案の定道に迷っていた。行きたい店に辿り着けず1時間ほどここら辺をぐるぐる彷徨っていたそうだ。
 近くまでは来ていたので、詳しい道順を教えて別れた。

 因みに私の直感は当たっていて、二人とも女性の悪魔で、白いブラウスにチェック柄のリボンタイ、濃紺のブレザーにリボンと同じ柄のスカートという、学園生のような制服姿をしているのに、髪が一人は紫色でもう一人はオレンジ色、二人とも両耳にはたくさんのピアスがついていた。

 国民全員が6歳から18歳まで必ず通う義務教育機関である州立学園は、卒業するまで派手なヘアカラーやピアスは禁止なので、すぐに分かった。
 おそらく最近異界人の女性を中心に流行っている貸衣装店で制服姿コスプレに着替え、散策していたのだろう。楽しそうで何よりだ。


 私も次の予定までまだ少し時間があるので、やはりカフェに行こうと駅前へ移動する。
 そして、何だかつい先程も見たような光景が、目の前に現れた。

 黒髪で緋色の瞳が印象的な背の高いイケメン。
 周辺案内版の前を陣取って、時々周りを確認するようにキョロキョロと首を回す。そして再び案内板を見る。
 そんなことを3回くらい繰り返していた。

 ここは、大きな臨海公園が有名で、それ以外はそこまで有名な施設や店がある町じゃないので、いかにも観光客という出で立ちの人はほとんどが同じ場所へ向かう。
 そのための専用の案内板も大きく掲げられているので、分からないということはないだろう。先ほどのコスプレ悪魔二人組も臨海公園へ行った帰りだった。
 ということは、目の前のこの人は、何となく降り立ったがここはどこでどこへ向かえばいいんだという、完全な観光迷子状態と推測される。

 ……これは声を掛けてあげるべきか否か。
 少しの間見守っていたけど、同行者がいる気配はない。周りをみても、私達二人以外は黒猫が一匹、彼の近くを歩いているだけだ。
 このままほっておいたら、恐らくずっと案内板の前にいるだろうことは簡単に予想がつく。それも何だか可哀想で、意を決して声を掛けた。

「あの、どうかされましたか?」
「…ん?」

 うわ、近くで見るとさらにイケメンだ。
 一拍置いてこちらを向いた正面から見た顔は、今まで見たどのイケメンよりも整った顔をしていて、切れ長でややつり目気味の目に、燃える夕焼けのような美しい緋色の瞳がまるでガラス玉みたいにキラキラ輝いて、こちらを見ていた。
 手足が長く全体的にバランスの取れた体躯、艶のあるやや長めの黒髪で、私より20㎝くらい背が高いから身長190㎝以上ありそうだ。
 全身黒コーデだが、よく見ると良いものだとわかる生地のシャツにダメージ加工されたブラックデニム、手触りのよさそうなロングカーディガン、カジュアルなデザインの革靴。鞄は持っていない。
 年齢不詳だが、ほぼ間違いなく悪魔だろう彼は、一瞬目を瞠り興味深そうに私を上から下まで見た後、再び案内板に顔を向けた。

「この町に有名なレストランはあるか?」
「え?レストランですか?えぇと、有名ではないですがイタリアンで美味しい店は知ってますが…」
「じゃあそこへ案内してくれないか」
「…はい?」

 え、レストランを探してたってこと?というか、今から私にそこまで案内しろってこと?
 いやいや、困ってそうだから声かけただけで、これからまだ仕事残ってますし。
 それに、周辺案内板をずっとみてレストラン探してたって、どんだけ非効率なの!?

 さすがに怪しさ満点すぎるのと、さも案内されるのが当然のような態度に少しだけ不快感を感じて、店の場所だけ教えてさっさと離れようと思い返事をする。

「あの、私この後も仕事があるので、ご一緒はできないんです。お店の場所はお教えしますので、タクシーで行かれては?」
「タクシーとは何だ?」

 え、タクシーも知らないの?これは思った以上に無知そうだな??
 駅の方を見ると、タクシー乗り場にちょうど一台止まっていたので、それを指さして答える。

「タクシーというのは、あそこに止まっている車の事で、料金を払えば好きな場所まで送ってくれるサービスの事です」
「へぇ。そんなサービスがあるのか。人間は本当に様々なことを考えるな。それで、イタリアンとはどんな料理なんだ?」

 え?それも知らないの?この人、本当に何も前情報なしで地上界へ来たのね…
 これは、もしかしたら両替とかもしてなさそうな気がするなぁ。

「あ、えっと、その前に一つお伺いしても?」
「なんだ?」
「悪魔の方とお見受けしますが、両替はもうなさってますか?」

 切れ長の目をほんの一瞬見開いて、なんだか驚いた様子を見せたが、そんな変なこと聞いたかな?

「…一目見て悪魔だとわかるのか?」

 あぁ、そうか。普通の人は人間に擬態した悪魔なんて見分けられないもんね。

「ええ、仕事柄たくさんの異界の方とお話するので、何となく見分けがつくようになったんです。それで、両替は…?」
「そうか。いや、魔界から多少は持ってきたが、両替とやらはしてないな。しないといけないのか?」

 やっぱり―!あぁ、これは前途多難だ…
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