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第1章 悪魔との出会い
11話 再会1
今日の取材をすべて終え、一旦編集部へ帰ろうと駅に向かって歩いていた時、駅前案内板の前に上から下まで黒い人が立っているのを見つけた。
デジャブ……
買ってあげたガイドブックはどうしたんだろう。まさかまた案内板を見てレストランを探してるわけじゃないよね…
「こんにちは」
「――!ああ、君か」
そう言って、ほんの少しだけ切れ長の目元を優し気に緩めて、こちらを見た緋色の瞳は、以前会った時と同じようにキラキラと輝いていた。
今日も全身黒色コーデで、ぱっと見では先日と同じ服のように見えるが、よく見るとデザインが違うものを着ていることが分かる。
「服、買われたんですね」
「ああ、君と別れた後に教えてもらった洋服店で何着か購入したんだ。あと鞄も」
彼の左手には、程よい大きさの黒いボストンバックが握られていて、その中に買った服が入っているのだろう。
身一つで地上界へ来た彼は、荷物は全て魔法で作り出した亜空間へ入れていた。
もちろん、地上界では魔法は発動しないため、亜空間を開くことはできず、着替えなども全て取り出せない。
というわけで、必要なものを調達する必要が出てしまい、店を紹介しておいたのだ。
しかし、なぜ黒色ばかりなのか。鞄までしっかり黒い物を選んでいる。他の色も似合うと思うのに。まあ、本人が気に入っているなら、他人が口を出すことではない。
「ふふっ、気に入ったものがあってよかったです。それで、その後いかがですか?地上界観光は楽しめていますか?」
「…ああ、あのガイドブックで君がおすすめしてくれた場所へはほとんど行ったかな」
おぉ、おすすめは制覇してくれたんだ。といっても、有名所ばかりだし、外れはなかったはず。
「そうですか。いかがでしたか?何か興味の湧くものはありましたか?」
「……」
あれ?もしかして楽しくなかったのかな?
そう思ったのが表情に出ていたのか、彼は慌てた様子で喋りだした。
「あ、いや、その、楽しかった…と思う。景色は美しかったし、技術も素晴らしいものばかりだし、食事も美味しかった。しかし、興味があるかと言われると、それは違うというか…」
何だか煮え切らない答えだが、興味が湧く場所は無かったということのようだ。
多彩なジャンルの有名所を回っても興味がないとなると、かなり重症だ。それか、一人で行ったから感動も薄れたとか?
何か原因でもあるのか、それとももっと特殊な場所や物の方がいいのか、うんうんと唸って考えていると、不意に頭に何かが触れる感触がした。
目線を上げると、彼が私の髪を撫でながら、今まで見たこともないほど優しい顔をして見つめていた。
「あ、あの…」
「…髪に花びらが付いていたから」
うぎゃああぁぁぁぁぁあ!!イケメンに、あ、頭撫でられた!それになにそのめっちゃ優しい顔!そんな顔で頭なでなでとかされたらもうドキドキするじゃん!ていうか、そんな顔もできるのね!表情筋死んでなくてよかったね!?
「あ、ありがとうございます…」
軽く脳内パニックを起こしながらも、なんとかそれだけ言うと、恥ずかしくて俯いてしまった。
どうしよう。どう反応すればいいのか全く分からない。
こんな事、学園生時代に付き合ってた彼氏にもされたことないんですけど!?どうするのが正解ですか!?
何も言えず俯いたままでいると、しばらくして彼の方から声を掛けてきた。
「この後少し時間はあるか?もしよければ、君とまた話がしたいんだが。その…、本には載っていない、君自身のおすすめの場所を教えてほしい」
…どうしよう。
今日の予定は既に終わっている。この後編集部へ行くのも、必ず行かなければならないわけではない。状況としては、彼と話す時間は十分にとれる。
それに、私自身も、もっと彼と話したい。
けれど、こんな心情で、落ち着いておすすめの場所の話なんてできるんだろうか。
視線をうろうろと彷徨わせて迷っていると、再び彼が声を掛けてきた。
「忙しいなら、いいんだ。無理を言った。ここで君にまた会えただけでも、よかったよ」
……なんでそんな寂しそうな顔するの?
「いいえ、今日の業務は先ほど終わりました。なので、この後時間は空いています。夕食がまだでしたら、食べながらいかがですか?」
気が付いた時には、口が勝手にそんなことを言っていた。完全に無意識だ。
彼は、了承してもらえるとは思っていなかったのか、目をわずかに瞠り「いいのか?」と遠慮気味に聞いてきた。
無意識に口走った事とはいえ、彼と話したいというのは本心なので、緋色を見つめながら頷いた。
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