10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第2章 天使との出会い

21話 世界の成り立ち

「ずいぶん遅かったな。心配し……どうした、顔が赤いぞ?何かあったのか?」

 心配そうな顔で聞いてくるリトに、先ほどあったことを説明する。
 すると、見る見るうちに怖い顔へと変貌していった。

「だから放っておけと言っただろう。仕事中でもないのに、何でもかんでも首を突っ込むからだ。その天使が助けてくれなかったら、もっと面倒なことになっていたかもしれないんだぞ」
「だって……」

 リトの言うことも分かる。けれど、記者としてその場に居合わせたら、気になってしまうのはどうしようもない性分なのだ。
 しかし、リトも中々許してくれず、ずっと機嫌が悪いままだ。
 結局、今後何かに巻き込まれそうになったら、すぐにリトを呼ぶ事を約束させられた。どこにいても、何をしてても、駆け付けてくれるそうだ。

「以後気を付けます……」


 やっとリトの機嫌が直り、食事を再開する。
 その時に懇々と説明されたのが、種族格差の話だ。

 天使と悪魔は何億年も前から、お互いを忌み嫌い争っていた。
 天使はこの世界を作った創造神の眷属で使者、悪魔は闇から生まれた悪の化身。悪魔の中には、神から追放された堕天使もいるそうだ。互いに相容れない存在のため、常に争い、全てにおいて競ってきた。

 どちらかが相手を倒すような強力な攻撃魔法を開発すると、相手はそれに対抗する強力な防御魔法や更に上をいく攻撃魔法を開発する、といった感じで、どんどんエスカレートしていったそうだ。
 さらに、初めは個人的な競争だったものが、徐々に集団になり、組織立ったものになり、遂には種族間での争いになった。

 天使は唯一神が手ずから遣わした者という矜持を持っていて、天使である自分そのものが誇りなのだとか。そのためか、プライドが高い者が多い。
 白い翼は神の使者の印であるとされ、そのことを貶されたり翼を汚されることを特に嫌う。

 悪魔は存在よりも自身の強さや能力を誇示する者が多く、それを極限まで極めることを生きがいとしている者がほとんどらしい。
 また、天使と違い悪魔はとにかく種族が多く、その数は優に百を超え、他種族間では優劣が存在する。高位種族は低位種族を従えることが出来るが、完全な実力至上主義のため、下剋上を起こして倒すことが出来れば、その順位が入れ替わるのだとか。

 天使至上主義と実力至上主義、生まれた時からお互いを罵り貶し合っているため、何万年と天魔大戦を続けていたのだが、ある時、創造神が気まぐれで人間を創った。
 人間は天使悪魔と違い、強い力も魔法も特殊な能力もなく、軟弱な体と心で、ちょっと突いただけですぐに死んでしまう。
 しかし、天使悪魔にはない想像力と創造力が特に発達していて、短い寿命を高い繁殖力で繋ぎながら、世界に新しいものをたくさん創り出した。

 初めは、天使は神が創られたものだからと傍観して、悪魔は面白いものが現れたと観察していた。
 それに飽きると、両者は再び戦争を再開した。
 当時は、それぞれが住む世界は分かれておらず、非力な人間は天使悪魔の戦争に巻き込まれ、成す術もなく大量に死亡した。それに伴い、人間の造り上げた文明も、絶滅しかけた。

 人間を気に入っていた神がそのことを悲しみ、人間を保護する目的で強制的に三つの棲み分けを行い、天使は天界・人間は地上界・悪魔は魔界と、現在の世界が創られ、地上界で天使悪魔が魔法で暴れられないように、地上界から魔素を排除した。

 神自らが保護した人間を、天使は魔界に降りるのに地上界を通る時に無下に扱うことができず、悪魔は別に人間はどうでもよかったのだが天界まで昇るのが大変で面倒くさくなり、結果終戦を迎えた。
 その後、人間がある程度復興したタイミングで不可侵条約が結ばれ、それぞれの住処への自由な行き来が出来なくなった。



 「その後の話はシエナも知ってるだろう」とリトは言って、酒をあおった。
 確かに、不可侵条約が約五千年前に締結して以来、異界交流年が10年に一度開催され、その1年間のみ異界へ行き来できるようになり、人間の尊厳は守られるようになったと、歴史の授業で習った。
 条約締結以前の事は、天使と悪魔が戦争していたとしか知らなかったため、中々興味深い話だ。

天使悪魔おれたちは、人間を簡単に殺せるんだ。地上界で魔法が使えなくても、力で押さえつけられるし、天界魔界へ連れ帰ればこっちのものだ。今は禁止されてるが、実際に二~三千年前に人間攫いが流行ったことがあったし、今でも法の目を掻い潜って違法スレスレの事をやってる奴もいる。天使悪魔おれたちに何かされても、人間では太刀打ちできない」

 だから、たとえどんな状況であろうと、人間が一人で異界人に立ち向かうのは無謀な事なのだと論された。
 確かに、魔法も使えないし、身体能力も劣るし、魔素に晒されるだけで死んでしまうのだから、異界人に敵意を向けられ何かされたら、それは死を意味する。
 だから政府は異界人との仕事には慎重なのか。

 ……ん?だったら、悪魔であるリトと二人きりで行動している私は危険なのでは?

 そう思い聞いてみると、「俺がシエナに何かするなんて死んでもあり得ない」と超真剣な顔で言われた。
 ですよねー。

 これからは、何があっても異界人がらみの面倒ごとには、首を突っ込みません。
 ……………………多分。

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