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第2章 天使との出会い
22話 とある天使との出会い2
そろそろお腹もいっぱいになってきたところで、クレームに巻き込んだお詫びにと、店長さんがサービスのデザートを持ってきてくださった。
もちろんデザートは別腹なので、美味しく頂くことに。
頂いたリンゴのシャーベットに、リトは目を輝かせていた。
リンゴのさっぱりとした甘さが、口の中をすっきりさせてくれる。
そろそろ帰ろうとお会計に向かうと、カウンターの前で先ほど間に入って助けてくれた天使と鉢合わせになった。
「あ、さっきの……」
「先ほどは助けていただいて、本当にありがとうございました」
もう一度お礼を言うと、彼は少年のようにふわりと笑った。
「気にしないでください。当然のことをしたまでですから」
あなたに何もなくてよかったと、紳士的に対応してくれるのに、笑顔は少年のように少し幼くて、そのギャップにドキドキしてしまう。
見た目通りの年齢ではないんだろうなと思いながら少し話していると、急に腕を後ろに引っ張られた。
突然の事に対応しきれず、そのまま後ろの人物にもたれ掛ってしまい、振り返ると、リトが眉間に皺を寄せて、今まで聞いたこともない低い声で「誰?」と聞いてきた。
……びっくりした。
なんでそんなに不機嫌なんだろう。
さっき話した、絡んできたクレーマーから助けてくれた人だよと説明するも、リトは相手の天使に敵意剥き出しみたいな顔で眉間に深く皺を寄せて、睨みつけていた。
なんか怒ってる?なんで??助けてくれたいい人なのに。
意味も分からず睨まれた天使も、誤解されたままなのは嫌だと言って、先ほどの状況を詳しくリトに説明してくれる。
その時に彼はエルマーと名乗り、名刺を差し出してくれた。
『天界外交官補佐 エルマー』と書かれたそれを、二度見三度見して、驚愕した。
そんな偉い人に私助けてもらったの!?
偶然とはいえ、すごい確率で出会ったな!?
てか少年っぽい見た目だけど、ちゃんと成人してるんだ!?
取材で鍛えたポーカーフェイス(できてるはず)を装いながら、ビビりまくっていたが、私も記者の端くれ、この機会を逃すわけにはいかないと、こちらも名刺をお渡しした。
すると、私の名刺を見た途端、『月刊アース』の記者なのかとかなり驚かれた。
やはり、雑誌のネームバリューは凄まじい。
読んだことがあるのか聞いてみると、もちろんだと返ってきた。行く行くは官僚になるだろう人が読んでくれてるなんて、なんかちょっと嬉しい。
しかし、それだけではなかったようだ。
詳しく聞いてみると、最近話題になっている、正式に悪魔と仕事の契約をした会社の雑誌として、目を付けていたらしい。
色んな方面から注目を集めているとは編集長から聞いていたが、まさか異界の政界まで噂が回っているとは、かなり驚きだ。
「ということは」と、リトに視線を移した天使ことエルマーさんは、相変わらず笑顔だが、先ほどとは違い、何だか含みがあるように見える。
それに、なんだか少し険悪な雰囲気?のような気がする。
リトは怖い顔のままだし、エルマーさんはニコニコ笑顔だし。
それが逆に怖いんですけど。
「あなたがその悪魔ですか。へぇ…… それで、いかがですか?組織に所属する人間との仕事は。やり辛いとか、扱いやすいとか、いろいろとご意見を伺いたいですね」
「は?何が言いたい」
「そう気を悪くしないでください。私達天使も、個人ではなく組織として正式に人間と仕事をしたいと、常々思っていたところなんですよ。そこにあなたたちの噂が聞こえてきたものですから、ぜひ参考にしようかと思いまして」
「……天使は本当にいつも上辺ばかりだな」
「何をおっしゃいます、本心ですよ」
二人の間には、バチバチと見えない火花が散っているような気がした。
両者は大昔から確執があると先ほど聞いたばかりだし、交流年の間は争いや問題を起こすことは重罪なのだが、暗黙の了解で口喧嘩はそれに含まれないのだそうだ。大半の天使悪魔はこの一年は楽しむことを優先するため、口喧嘩にもならないことがほとんどらしいが、偶に煽られてどうしようもない時などは、口喧嘩に発展するらしい。
その『偶に』が目の前で起きているとは、今日はある意味ついてる日だ。何故かはわからないけど、エルマーさんがリトを煽っているのはわかる。
悪魔と天使の喧嘩とは中々珍しい物を見れたな、と思いながら様子を見ていると、リトが腕を強く握ってきた。
「リト、ちょっと痛いよ」
「……悪い」
すぐに緩めてくれたけど、その手は離してもらえなかった。
その後も暫くの間、二人は怖い顔と笑顔で睨み合うという器用なことをしていて、間に挟まれた私は、始めこそ物珍しさから見物感覚だったが、段々と居たたまれなくなってきた。
すると、エルマーさんが私に視線を戻し、目を覗いてきた。
これも何かの縁だと言って、「天界のことや天使のことで聞きたいことなどあれば、遠慮なく自分に言ってほしい」と、輝く笑顔で、リトが掴んでるのとは逆側の手を持ち上げて、胸の前でぎゅっと握られた。
うぅ…… そんなにキラキラした顔で見つめないで……
さっきから、目が合う度にすごくドキドキしっぱなしなんですけど……
私の手を握っている天使の手は、すぐにベシッと痛そうな音を立ててリトに払い落された。
それにもめげずに、「連絡お待ちしてますね」と、アイドル並みに美しいウインクをして、会計を終えた同行者と共に去って行った。
ぼーっとエルマーさんが去って行った方向を見ていると、「次お待ちのお客様、どうぞ」と店員の声が聞こえてきて、私の腕を掴んでいたリトが、腕から手へと指を滑らせてぎゅっと握って、カウンターの前まで引っ張っていく。
お金を出そうとしたが、リトが「俺が払う」と言って、さっさと支払いを済ませてしまった。
何とか領収書だけは貰って店を出て、しばらく夜道を歩いて散歩することになった。
その間もずっと、握られた手は繋がったままなのに、リトは不機嫌なままだった。
どうしたら機嫌を直してくれるのか、考えてもスイーツを食べさせることしか思いつかない。
この辺りはあまり店がないので、スイーツを買うにしても少し移動しなければいけないし、時間的にももう閉店してしまってる可能性も高い。
どうしたものかと考えていると、ふとエルマーさんを見かけた時のことを思い出した。
あれは、乗り物博物館へ行った帰りのバスの中。
とても美しい、見惚れるほど見事な翼の、金髪碧眼天使を見たことがある。
あれが、エルマーさんだったんだ。
そういえば、エルマーさんが私たちと話している時に後ろで会計をしていたのも、あの時一緒にバスに乗っていたのと同じ二人だ。
どこで見かけたのか、ずっともやもやしていたのが分かって、すっきりした。
「そっか、あのバスで見た綺麗な翼の天使がエルマーさんだったんだ」
思わず独り言をつぶやくと、リトにも聞こえたようで、私の言葉の意味を理解すると、先ほどよりも更に目を細め眉間に深く皺を寄せ、超超不機嫌になった。
……なんでだ?
そこからは地獄だった。
サービスのシャーベットを食べた時はご機嫌だったのに、不機嫌全開になってしまった彼を再び宥めるのに、またとてつもなく苦労するはめになった。
もちろんデザートは別腹なので、美味しく頂くことに。
頂いたリンゴのシャーベットに、リトは目を輝かせていた。
リンゴのさっぱりとした甘さが、口の中をすっきりさせてくれる。
そろそろ帰ろうとお会計に向かうと、カウンターの前で先ほど間に入って助けてくれた天使と鉢合わせになった。
「あ、さっきの……」
「先ほどは助けていただいて、本当にありがとうございました」
もう一度お礼を言うと、彼は少年のようにふわりと笑った。
「気にしないでください。当然のことをしたまでですから」
あなたに何もなくてよかったと、紳士的に対応してくれるのに、笑顔は少年のように少し幼くて、そのギャップにドキドキしてしまう。
見た目通りの年齢ではないんだろうなと思いながら少し話していると、急に腕を後ろに引っ張られた。
突然の事に対応しきれず、そのまま後ろの人物にもたれ掛ってしまい、振り返ると、リトが眉間に皺を寄せて、今まで聞いたこともない低い声で「誰?」と聞いてきた。
……びっくりした。
なんでそんなに不機嫌なんだろう。
さっき話した、絡んできたクレーマーから助けてくれた人だよと説明するも、リトは相手の天使に敵意剥き出しみたいな顔で眉間に深く皺を寄せて、睨みつけていた。
なんか怒ってる?なんで??助けてくれたいい人なのに。
意味も分からず睨まれた天使も、誤解されたままなのは嫌だと言って、先ほどの状況を詳しくリトに説明してくれる。
その時に彼はエルマーと名乗り、名刺を差し出してくれた。
『天界外交官補佐 エルマー』と書かれたそれを、二度見三度見して、驚愕した。
そんな偉い人に私助けてもらったの!?
偶然とはいえ、すごい確率で出会ったな!?
てか少年っぽい見た目だけど、ちゃんと成人してるんだ!?
取材で鍛えたポーカーフェイス(できてるはず)を装いながら、ビビりまくっていたが、私も記者の端くれ、この機会を逃すわけにはいかないと、こちらも名刺をお渡しした。
すると、私の名刺を見た途端、『月刊アース』の記者なのかとかなり驚かれた。
やはり、雑誌のネームバリューは凄まじい。
読んだことがあるのか聞いてみると、もちろんだと返ってきた。行く行くは官僚になるだろう人が読んでくれてるなんて、なんかちょっと嬉しい。
しかし、それだけではなかったようだ。
詳しく聞いてみると、最近話題になっている、正式に悪魔と仕事の契約をした会社の雑誌として、目を付けていたらしい。
色んな方面から注目を集めているとは編集長から聞いていたが、まさか異界の政界まで噂が回っているとは、かなり驚きだ。
「ということは」と、リトに視線を移した天使ことエルマーさんは、相変わらず笑顔だが、先ほどとは違い、何だか含みがあるように見える。
それに、なんだか少し険悪な雰囲気?のような気がする。
リトは怖い顔のままだし、エルマーさんはニコニコ笑顔だし。
それが逆に怖いんですけど。
「あなたがその悪魔ですか。へぇ…… それで、いかがですか?組織に所属する人間との仕事は。やり辛いとか、扱いやすいとか、いろいろとご意見を伺いたいですね」
「は?何が言いたい」
「そう気を悪くしないでください。私達天使も、個人ではなく組織として正式に人間と仕事をしたいと、常々思っていたところなんですよ。そこにあなたたちの噂が聞こえてきたものですから、ぜひ参考にしようかと思いまして」
「……天使は本当にいつも上辺ばかりだな」
「何をおっしゃいます、本心ですよ」
二人の間には、バチバチと見えない火花が散っているような気がした。
両者は大昔から確執があると先ほど聞いたばかりだし、交流年の間は争いや問題を起こすことは重罪なのだが、暗黙の了解で口喧嘩はそれに含まれないのだそうだ。大半の天使悪魔はこの一年は楽しむことを優先するため、口喧嘩にもならないことがほとんどらしいが、偶に煽られてどうしようもない時などは、口喧嘩に発展するらしい。
その『偶に』が目の前で起きているとは、今日はある意味ついてる日だ。何故かはわからないけど、エルマーさんがリトを煽っているのはわかる。
悪魔と天使の喧嘩とは中々珍しい物を見れたな、と思いながら様子を見ていると、リトが腕を強く握ってきた。
「リト、ちょっと痛いよ」
「……悪い」
すぐに緩めてくれたけど、その手は離してもらえなかった。
その後も暫くの間、二人は怖い顔と笑顔で睨み合うという器用なことをしていて、間に挟まれた私は、始めこそ物珍しさから見物感覚だったが、段々と居たたまれなくなってきた。
すると、エルマーさんが私に視線を戻し、目を覗いてきた。
これも何かの縁だと言って、「天界のことや天使のことで聞きたいことなどあれば、遠慮なく自分に言ってほしい」と、輝く笑顔で、リトが掴んでるのとは逆側の手を持ち上げて、胸の前でぎゅっと握られた。
うぅ…… そんなにキラキラした顔で見つめないで……
さっきから、目が合う度にすごくドキドキしっぱなしなんですけど……
私の手を握っている天使の手は、すぐにベシッと痛そうな音を立ててリトに払い落された。
それにもめげずに、「連絡お待ちしてますね」と、アイドル並みに美しいウインクをして、会計を終えた同行者と共に去って行った。
ぼーっとエルマーさんが去って行った方向を見ていると、「次お待ちのお客様、どうぞ」と店員の声が聞こえてきて、私の腕を掴んでいたリトが、腕から手へと指を滑らせてぎゅっと握って、カウンターの前まで引っ張っていく。
お金を出そうとしたが、リトが「俺が払う」と言って、さっさと支払いを済ませてしまった。
何とか領収書だけは貰って店を出て、しばらく夜道を歩いて散歩することになった。
その間もずっと、握られた手は繋がったままなのに、リトは不機嫌なままだった。
どうしたら機嫌を直してくれるのか、考えてもスイーツを食べさせることしか思いつかない。
この辺りはあまり店がないので、スイーツを買うにしても少し移動しなければいけないし、時間的にももう閉店してしまってる可能性も高い。
どうしたものかと考えていると、ふとエルマーさんを見かけた時のことを思い出した。
あれは、乗り物博物館へ行った帰りのバスの中。
とても美しい、見惚れるほど見事な翼の、金髪碧眼天使を見たことがある。
あれが、エルマーさんだったんだ。
そういえば、エルマーさんが私たちと話している時に後ろで会計をしていたのも、あの時一緒にバスに乗っていたのと同じ二人だ。
どこで見かけたのか、ずっともやもやしていたのが分かって、すっきりした。
「そっか、あのバスで見た綺麗な翼の天使がエルマーさんだったんだ」
思わず独り言をつぶやくと、リトにも聞こえたようで、私の言葉の意味を理解すると、先ほどよりも更に目を細め眉間に深く皺を寄せ、超超不機嫌になった。
……なんでだ?
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