10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第2章 天使との出会い

30話 身をもって知った

やや背後注意。致してはいないけど、そういう言葉が出てきます。


 + + + + + + +



 ふと目を覚ますと、いつもと触感の違う触り心地のいいサラサラのシーツに包まり、沈み込み過ぎない寝心地のいいベッドに寝ていて、自分の家ではないことに気付く。
 ここは何処か確認しようと体を起こそうとしたが、全く力が入らない。
 え、嘘、なんで?
 しかも、全身が怠くて重い。特に腰や股関節周りが酷い。
 昨日何があったっけと考え始めてすぐに色々思い出して、一気に顔が熱くなる。

 一人ベッドの上で悶えていると、入口の方から物音がして、誰かが歩いてくる足音が近づいてくる。
 心臓が飛び出るほどドキドキとして、体が緊張で強ばっていく。
 どうしよう。どんな顔で会えばいいの。

 扉のない壁の仕切の切れ間から、想像通りの人物が現れた。
 リトは、右手に銀のカバーを被せたトレーを持っていて、左腕で黒い大きな袋のようなものを抱えていた。

 私が起きている事に気付くと、すぐに側まで寄ってきて、トレーをサイドテーブルに置くと、ベッドに腰掛けて心配そうにこちらを伺った。

「シエナ、目が覚めたか。体はどうだ?不可抗力とはいえ、昨日はかなり激」
「リトくぅ~ん!!お兄さんはお腹が空いたなぁ~!!?」

 黒い袋だと思っていたのはどうやらリトの上着だったようで、その中からいつもの黒猫が飛び出してきて、リトの口を器用に両前足で抑えつけている。

【この、バカ!もう少しお嬢さんの気持ちも考えろ!恥ずかしくて気まずいに決まってるだろう!】
【そういうものか?】

 二人でコソコソと魔語で何か話し出したが、私はというとそれどころではない。
 ベッドから起き上がれないというだけでも恥ずかしいのに、昨日の情事を思い出させるような発言は、流石に耐えられない。しかも、お兄さんの前で……!
 頭から布団を被って、必死に恥ずかしさに耐える。
 しかも、その時に自分の体の状態を改めて見てしまった。
 何も身に着けていない。裸だ。
 え、待って。シーツ一枚しか今身にまとってない状態で、二人の前に居るの!?
 恥ずかし過ぎて死にそうなんですけど!?


 羞恥心に見悶えて震えていると、シーツ越しに大きな手がゆっくり頭を撫でてきた。
 
「シエナ、すまない。配慮が足らなかった。そのままでいいから、少し聞いてくれるか?」

 そう言って、昨夜起きたことの説明をしてくれた。
 リトが言うには、私を襲ってきたのは淫魔という悪魔の種族で、彼らの血には催淫効果があり、特に人間はその匂いを嗅ぐだけで強制的に発情させられるそうだ。
 私が嗅いだあの甘い匂いの正体が血で、至近距離から強い香りを嗅がされたため、あんなに、その、乱れたらしい。
 そして、淫魔の血による発情は悪魔の精液でしか治めることができず、体内に取り込むのが一番なのだとか。

 ということで、簡単に言うと中出しされたらしい。
 え、じゃあ……
 昨夜は、覚えてるだけでも3回は出されたような……

「だが、安心してくれ。子種は含ませてないから、妊娠はしていない」

 不安になっていると、悪魔の生殖に関しても説明してくれた。
 なんでも、悪魔は精子を自分の意志で出せるのだそうだ。
 だから、避妊していなくても、精子さえ出さなければ妊娠はしないのだとか。その代わり精子を出した場合、着床率は百パーセントで絶対妊娠するらしい。
 発情を治めるだけなら、精漿せいしょうでも十分効果があるのだが、精子を含まない分大量に取り込む必要があり、しかも私は強く発情していたため、何度も中に出す他なかったとリトは言った。

 なんとも言えない感情でリトの話を黙って最後まで聞いていた。
 恥ずかしすぎて正直暫く顔を合わせたくないくらいなのだが、でも治療してくれたと考えれば納得できる。……気がする。

 そう、昨日のは治療だ。治療。うん。
 その割にはずいぶんとねちっこかったし…、激しかったけど……
 治療するためにはリトもその気にならないといけなかっただろうし、うん。
 治療のためだけ。他意はない……はず……

 治療だと思い込むことにして、そろっとシーツから目だけを出してみる。
 すると、思ってた以上に優しい目でこちらを見ているリトと目が合う。
 何か聞きたい事はあるかと聞きながら、温かい大きな手で頭を撫でられる。

 ああ、この手で撫でられる感触、落ち着くなぁ……

 昨夜もそうだった。激しく求めてくるのに、優しくて甘い。
 名前を呼ばれるたびに、幸せな気持ちになった。

 そんなことを思い出して恥ずかしくなってきていたところ、頭上からお兄さんの声が聞こえてきた。

「お嬢さんさ、もしかして昨日の事、はっきりと覚えてるのかい?」 

 目線を上に上げると、丸々とした黒猫が、真剣な顔をしてこちらを見下ろして座っていた。
 いつもリトを揶揄って遊んでいる楽しそうな顔しか見たことが無いので、今の内容が大切な事なのだと理解する。
 口に出すのは恥ずかしいので、頷くと、「そうか」と言って、暫く考え込んでしまった。
 リトの方を見ると、彼も手を口元に当てて考え込んでいるようだった。
 今の返事がそんなに重要なことなのだろうか。

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