10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第2章 天使との出会い

32話 マーキング

 初めて聞くマーキングが分からず質問すると、要は所有印のことらしい。
 悪魔の種族は大きく高位と低位に分けられ、低位種族は高位種族に逆らえない。高位種族のマーキングが付けられた人間は所有者の庇護下にある印で、手を出せば殺されても文句は言えないくらいに強制力と抑止力が強いらしい。

「それに、私達家族は高位種族の中でも最上位だからね。強さも最上位、効果も最上位だよ」

 にっこりと笑って、「マーキング受けるよね?」と圧を掛けてくる黒猫に見下ろされて、思わず頷きそうになる。
 受け入れる前に、ちゃんと確認しないといけないことがある。

「それを受けたとして、何かしないといけないこととかあるの?」
「マーキングは契約魔法の一種だからね。双方の同意がないと出来ないし、契約内容もそれぞれなんだけど、私からお嬢さんへの契約の条件は一つだけだよ。弟の側に居て欲しい」

 え、それだけでいいの?
 契約っていうから、てっきりもっといろいろと細かいことを言われるんだと思ってたんだけど。

 リトはどうなのかと思い見上げると、「俺も同じ条件だ」と当然のように言われた。
 そんな緩い感じで良いのか困惑していると、本当にただ一緒に居るだけで良くて、それが一番大事な事だと強くお兄さんに説得された。

 後で分かったことだが、お兄さんはリトが私に興味を持ったことがかなり嬉しかったらしく、一緒に居ることがリトの為でもあると考えて、条件にしたらしい。
 本当に、使役してる猫同様、ツンデレな人だ。

 そして、気になることはもう一つ、契約期間と解消についてだ。
 仕事をしている間はいいけど、終わった後はどうするのだろうか。それに、もし解消したくなったら、出来るのだろうか。
 そのことを聞くと、かなり簡単な答えが返ってきた。

「解消は双方の同意があればいつでもできるよ。だから、期間は設けないのが普通だけど、どうしてもって言うなら、とりあえず10年とかでいいんじゃないかい?」

 交流年ごとに更新するか決めればいいし、あとの9年はどうせ異界人と会うことは無いから、リトが黒い生き物を使役して会いにくれば問題ないらしい。
 一緒に居ると言っても、一日中ずっとではないし、喋る必要も特にないような契約にすると約束してくれた。
 それならまあいいか、とマーキングを受けることを承諾することにした。


 マーキングは一瞬で終わった。
 私の手の甲にそれぞれが手を重ねて、何か魔語で言ったと思ったら、重ねた手が一瞬ポワッと淡く光り、それで終わりだった。手を見ても、特に何も変化はなく、印らしきものもない。

「悪魔にはちゃんと分かるから、大丈夫だ」

 不安になって手を見つめていると、リトがそう言って手を握ってきた。
 親指で手の甲を撫でる様に握り、優しい目で見つめてくる。
 うぅ、その目に弱いんだってば……

 そんな事を考えていると、突然、私の携帯電話の着信音が鳴り響いた。
 鞄からリトが取ってくれて、表示を見ると、『編集長』の文字。
 ちょっと嫌な気持ちになりながら、二人に一言断って電話に出る。

「はい、もしもし」
「おい、シエナ!お前よくやったな!リト様のみならず、天使の外交官とも知り合いになったって?」
「え、どこから聞いたんですか?」

 昨日エルマーさんと知り合ったことは、編集部の誰にもまだ言っていない。
 なぜ編集長が知っているのだろう。

「ふん!俺の情報網を舐めるなよ!それよりもな、上層部がこんな機会二度と巡ってこないだろうってことで、お前に特別な名誉ある仕事のお許しが出たぞ!」
「はあ」
「なんだ!そのやる気のない返事は!まあいい、心して聞けよ!お前にはこれから異界へ取材に行ってもらうことになった!」

 …………はい!?


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