10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第3章 いざ、天界へ!

37話 異界ガイドブック

 小会議室に入り、編集長と今後の打ち合わせを行うことになった。
 改めて先ほどの社長の言葉はどういうことか聞くと、昨日私が天界外交官補佐であるエルマーと知り合ったと言う情報がどこかから齎されて、緊急で社内会議が開かれて、異界への取材はすぐに決定したそうだ。
 しかし、月刊誌での特集記事だけでは、折角の機会が生かしきれないのではという話になり、だったら思い切って、人間向けに異界のガイドブックを創ったらどうかとなったらしい。

 異界人向けの地上界ガイドブックはたくさんあるが、人間向けの異界ガイドブックは地上界には存在しない。
 各異界で販売しているが、それは異界へ行った者だけが購入できるもので、持ち帰ることはできるが個人間での譲渡や売買は禁止されている。なぜなら、異界のガイドブックはそれぞれの政府が発行しており、販売権や著作権も政府が保持しているからだ。
 地上界のガイドブックは、民間企業である出版社がそれぞれ出しているため、購入後については規制はされないが、異界のガイドブックは購入後も規制されるのだ。一冊ずつシリアルナンバーが振られていて、追跡も可能なのだとか。
 天使と悪魔が互いの内情を探り合って争いが起きないように、条約で決められているらしい。特に、天使は魔界の、悪魔は天界のガイドブックを持ち帰ることは禁止されており、人間は持ち帰ったところで害はないということで、持ち帰るだけなら許可されている。

 そういう訳で、異界へ行ったことがない人間は、異界がどういう場所なのか人伝でしか知り得なかったのが、ガイドブックが地上界で手に入るとなると、行ける人は旅行欲を更に刺激され、行けない人は情報や写真だけでも行った気分になれる。
 異界人から見ても、人間にはこう見えているのかと好奇心が満たされ、双方にとって良いこと尽くめらしい。
 そして、実はリトと契約が成立した時から、いつかはガイドブックを作りたいと水面下で動いていたらしい。金儲けの匂いになんと敏感な経営陣なんだ、と呆れたのは秘密だ。

「というわけだ!だから、それぞれの異界を様々な角度からくまなく取材し、纏め上げろよ!あと、月刊アースうちにも特集ページを設けるから、そっちの記事も忘れるなよ!内容はお前に任せるから!」
「え、いや、ちょっと待ってください!ガイドブックの編成も特集記事も両方なんて、一人では流石に無理ですよ!」
「そうか?お前ならパッパとやれるだろ?」
「私を何だと思ってるんですか!無茶言わないでください!」

 ガイドブックの製作に関しては、今人材を調整している最中ということで、しばらくは編集長が窓口になるそうだが、流石に一人で全ての取材を行うのは無理がある。自分ではそのつもりがなくてもどうしても趣味趣向が偏りがちだし、第三者目線は必要だ。
 それに何より、人手が足りない。リサーチをはじめ取材交渉なども含めると、リトは戦力にならないし、エルマーさんには外交官補佐という仕事柄あまり迷惑は掛けられない。
 そのことを強く主張したら、「じゃあ一人付けてやるよ」と渋々了承を貰った。

 ガイドブックに関する打ち合わせは、もう一人が合流次第、後日行うことになり、特集記事の打ち合わせを軽く済ませて、その日は解放された。


 会社を出て、気分転換に何か甘いものでも食べようとカフェへ向かっていると、携帯電話の呼び出し音が鳴り響いた。
 着信画面を見ると『エルマーさん』と表示されていて、急いで電話に出る。

「はい、シエナ・ジュルトです」
「シエナさん!天界外交官補佐のエルマーです!今お時間よろしいですか!?昨日の件なのですが!」

 異様にテンションの高いエルマーさんの声が、電話口を耳から離しても聞こえてくる。
 何をそんなに興奮しているのかと思っていると、天界への取材許可が下りたとのことだった。

「それだけじゃないんです!シエナさんの会社と正式に契約して、お仕事できることになりました!その務めを、僕が任されたんです!」

 今、地上界へ正式に許可を申請する準備を進めているから、そちらも早めに申請してくださいね!と、ウキウキした声で言って、電話は切られた。
 昨日の今日でそんなすぐに許可が出るとは驚きだ。
 天界政府ってフットワークが軽いんだな。

 とにかく、向こうが動き出しているのなら、こちらも急がないといけないと思い、今出てきたばかりの会社へと引き返した。

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