39 / 92
第3章 いざ、天界へ!
39話 転移門と保護指輪
合流したエルマーさんは、明らかにテンションが高い。
この間電話した時も、打ち合わせを兼ねて食事をした時も、言動の端々に嬉しさが隠しきれてない感じだった。
今日も私たちを見つけると腕をブンブンと振りながら走り寄ってきて、目の前に来た途端に両手をぎゅっと握られる。
握った手を見て一瞬険しい顔になるもすぐに笑顔に戻り、「今日を楽しみにしていました!」と言ってそのまま歩き出そうとしている。
私の手をずっと握っているエルマーさんの手をリトが叩き落とし、無表情で睨みつけるという器用なことをやってのけると、エルマーさんは笑顔で無言で答えていた。
見えない火花的なものがバチバチと散っている気がするんだけど、気のせいかな。
そんな二人に挟まれて一つため息を吐くと、数日前の食事の時のことを思い出す。
打ち合わせを兼ねた食事をとエルマーさんに誘われてリトと行ったのだが、会ってすぐにマーキングに気づいたらしいエルマーさんは、「ちょっと失礼」と言って、リトと二人で天語と魔語で何やら話をしていた。
食事後にリトの機嫌が直ってから聞くと、マーキングは天使にも分かるらしく、なぜ二重に重ね掛けしているのかを聞かれて、私が淫魔に襲われた上に、魔素耐性があると分かったため、念のためお兄さんと二人で重ね掛けをしたと説明をしたらしい。
淫魔に襲われたことも喋ったのかと焦って聞くと、何か問題でもあるのかと逆に聞かれてしまった。
いや問題大ありでしょう!あんな恥ずかしいことを他の人にも知られてしまうなんて!
そう言うと、詳しく話せとしつこく聞いてきたが言ってないから大丈夫だと言われた。
どこをどう取ったら大丈夫だと思えるのか。
淫魔に襲われた=強制発情は、天使悪魔にとって共通認識だと、この間お兄さんにこっそり教えてもらったばかりだ。
私が普段通りに戻っているということは、そういう行為をしたという事だ。リトが説明した時点で、その相手が彼であることは容易に想像できることなのだ。
これから一緒に仕事をする人になんてことを言ったんだと、一人で悶絶したのは言うまでもない。
しかし、そこはさすが外交官。
全く私に気づかせることなく、打ち合わせも食事も最後まで普通の態度だった。
気遣いのできる人で良かったと、心から感謝した。
そんなことがあったため、今日エルマーさんと会うのに少しだけ緊張していたのだが、私に対する態度は至って普通で、というよりも、尻尾をブンブン振って全身で喜びを表現している犬の幻覚が見えるくらいのテンションだった。
左側にリト、右側にエルマーさんを従えて、トンゴさんとの集合場所へと歩く。
合流したトンゴさんは、いつも通り穏やかな笑顔だった。
「トンゴさん、お待たせしました。こちらの悪魔が以前から私と仕事をして頂いているリトさん、こちらの天使が今回ご協力してくださる外交官補佐のエルマーさんです」
「トンゴ・セフトネペです。よろしくお願いしますね」
トンゴさんとエルマーさん、リトがそれぞれ握手し挨拶を交わしてから、私達は転移門へと移動を始めた。
転移門は、その名の通り異界へと転移するための門だ。地上界では各州に一つずつ存在しており、国が管理している。
各異界に設置されており、それぞれの世界へと転移魔法で行き来することが出来るのだ。
地上界の転移門は、交流年時のみ開かれ、それ以外の時には、どんなことがあろうとも絶対に開かないようになっている。
天使悪魔が容易に人間に接触できないようにと、不可侵条約によって決められているのだ。因みに、天界魔界間はいつでも行き来できる。
そして、全ての転移門は各政府の管理下にある。
専属の部署がそれぞれの異界にあり、天界魔界には転移門のメンテナンスを専門とする役職も存在するらしい。
転移門は転移魔法を用いるため、人間には操作できないので、交流年の間のみ天界魔界それぞれの政府から役人が派遣されて、彼らが稼働させているのだ。
目の前に建つレンガ造りの立派な建物は、正面から見ると普通の3階建ての建物のように見える。転移門だと知らなければ、歴史ある美術館や博物館かのような外観だ。
建物真ん中にある重厚なドアが開け放たれている入口を入りまっすぐ進むと、ホテルのフロントのようになっている受付が見えてくる。
受付カウンターのあるフロアは、老舗ホテルのロビーにようになっており、天井からは美しくも控えめなガラス製シャンデリアが吊り下げられ、ゆったりめの一人掛けソファーと小さめのローテーブルが、寛げる様に等間隔に並べられている。
壁には、天界と魔界をイメージしたような絵がそれぞれ飾られ、合間合間に季節の花が美しく活けられている。
受付カウンターへ向かうと、3人の男女がお揃いの制服を着て迎えてくれる。
会社が予約してくれた旅券を人数分渡すと、中身を確認した後、私とトンゴさんにのみ指輪ケースを渡された。
「こちらは『保護指輪』です。転移門に向かう間に装着してください。人間の方は装着を確認してからでないと、入ることはできません」
ケースを開けると、月桂樹の葉を繋げて輪っかにしたような繊細な細工に所々小さな花があしらわれた指輪が一つ入っていた。
受付の男性の説明によると、人間が天界魔界へ行く時は、滞在期間を前もって申請し、魔素を分解する保護魔法陣が付与された『保護指輪』を常に身につけなければならないそうだ。
保護指輪は、空気中の魔素を勝手に取り込み、装着した人間を魔素から守るための保護魔法が常時発動するのだとか。
「異界は空気中にも食べ物にも魔素が含まれています。必ず、常に身に着けてください」
「食べ物に含まれる魔素も分解してくれるんですか?」
「はい。装着者を内外から守るように魔法陣が組まれています。ですので、体内に入ったものに含まれる魔素も、分解されます」
エルマーさんの追加説明によると、体全体に薄い結界が張られているような感じで、結界を空気や食べ物が通過するときに魔素が分解されるようになっているそうで、濾過装置みたいなものと考えていいらしい。
発動している保護魔法自体も、人間に害の無いように高度な魔法技術が使われているそうで、常に発動させていても、人体に一切問題ないとのこと。
色んな人に話には聞いていたし、実際に見せてもらったりもしたが、実際に手に取ってみるとその高い魔法技術力も、繊細なデザインも、聞いていた以上にとても素晴らしいものだ。
「地上界へ戻ればただの指輪だから、お土産や記念に取っとく人が多いみたいだね。毎回デザインが変わるから、代々コレクションする人もいるらしい。私も30年前の新婚旅行の時の保護指輪を未だに取ってあるよ」
妻は記念日ごとに指輪を出してきてはその日一日着けているんだと、嬉しそうにトンゴさんが言った。
なんだか微笑ましい夫婦だ。こちらまでほんわかした気分になる。
この間電話した時も、打ち合わせを兼ねて食事をした時も、言動の端々に嬉しさが隠しきれてない感じだった。
今日も私たちを見つけると腕をブンブンと振りながら走り寄ってきて、目の前に来た途端に両手をぎゅっと握られる。
握った手を見て一瞬険しい顔になるもすぐに笑顔に戻り、「今日を楽しみにしていました!」と言ってそのまま歩き出そうとしている。
私の手をずっと握っているエルマーさんの手をリトが叩き落とし、無表情で睨みつけるという器用なことをやってのけると、エルマーさんは笑顔で無言で答えていた。
見えない火花的なものがバチバチと散っている気がするんだけど、気のせいかな。
そんな二人に挟まれて一つため息を吐くと、数日前の食事の時のことを思い出す。
打ち合わせを兼ねた食事をとエルマーさんに誘われてリトと行ったのだが、会ってすぐにマーキングに気づいたらしいエルマーさんは、「ちょっと失礼」と言って、リトと二人で天語と魔語で何やら話をしていた。
食事後にリトの機嫌が直ってから聞くと、マーキングは天使にも分かるらしく、なぜ二重に重ね掛けしているのかを聞かれて、私が淫魔に襲われた上に、魔素耐性があると分かったため、念のためお兄さんと二人で重ね掛けをしたと説明をしたらしい。
淫魔に襲われたことも喋ったのかと焦って聞くと、何か問題でもあるのかと逆に聞かれてしまった。
いや問題大ありでしょう!あんな恥ずかしいことを他の人にも知られてしまうなんて!
そう言うと、詳しく話せとしつこく聞いてきたが言ってないから大丈夫だと言われた。
どこをどう取ったら大丈夫だと思えるのか。
淫魔に襲われた=強制発情は、天使悪魔にとって共通認識だと、この間お兄さんにこっそり教えてもらったばかりだ。
私が普段通りに戻っているということは、そういう行為をしたという事だ。リトが説明した時点で、その相手が彼であることは容易に想像できることなのだ。
これから一緒に仕事をする人になんてことを言ったんだと、一人で悶絶したのは言うまでもない。
しかし、そこはさすが外交官。
全く私に気づかせることなく、打ち合わせも食事も最後まで普通の態度だった。
気遣いのできる人で良かったと、心から感謝した。
そんなことがあったため、今日エルマーさんと会うのに少しだけ緊張していたのだが、私に対する態度は至って普通で、というよりも、尻尾をブンブン振って全身で喜びを表現している犬の幻覚が見えるくらいのテンションだった。
左側にリト、右側にエルマーさんを従えて、トンゴさんとの集合場所へと歩く。
合流したトンゴさんは、いつも通り穏やかな笑顔だった。
「トンゴさん、お待たせしました。こちらの悪魔が以前から私と仕事をして頂いているリトさん、こちらの天使が今回ご協力してくださる外交官補佐のエルマーさんです」
「トンゴ・セフトネペです。よろしくお願いしますね」
トンゴさんとエルマーさん、リトがそれぞれ握手し挨拶を交わしてから、私達は転移門へと移動を始めた。
転移門は、その名の通り異界へと転移するための門だ。地上界では各州に一つずつ存在しており、国が管理している。
各異界に設置されており、それぞれの世界へと転移魔法で行き来することが出来るのだ。
地上界の転移門は、交流年時のみ開かれ、それ以外の時には、どんなことがあろうとも絶対に開かないようになっている。
天使悪魔が容易に人間に接触できないようにと、不可侵条約によって決められているのだ。因みに、天界魔界間はいつでも行き来できる。
そして、全ての転移門は各政府の管理下にある。
専属の部署がそれぞれの異界にあり、天界魔界には転移門のメンテナンスを専門とする役職も存在するらしい。
転移門は転移魔法を用いるため、人間には操作できないので、交流年の間のみ天界魔界それぞれの政府から役人が派遣されて、彼らが稼働させているのだ。
目の前に建つレンガ造りの立派な建物は、正面から見ると普通の3階建ての建物のように見える。転移門だと知らなければ、歴史ある美術館や博物館かのような外観だ。
建物真ん中にある重厚なドアが開け放たれている入口を入りまっすぐ進むと、ホテルのフロントのようになっている受付が見えてくる。
受付カウンターのあるフロアは、老舗ホテルのロビーにようになっており、天井からは美しくも控えめなガラス製シャンデリアが吊り下げられ、ゆったりめの一人掛けソファーと小さめのローテーブルが、寛げる様に等間隔に並べられている。
壁には、天界と魔界をイメージしたような絵がそれぞれ飾られ、合間合間に季節の花が美しく活けられている。
受付カウンターへ向かうと、3人の男女がお揃いの制服を着て迎えてくれる。
会社が予約してくれた旅券を人数分渡すと、中身を確認した後、私とトンゴさんにのみ指輪ケースを渡された。
「こちらは『保護指輪』です。転移門に向かう間に装着してください。人間の方は装着を確認してからでないと、入ることはできません」
ケースを開けると、月桂樹の葉を繋げて輪っかにしたような繊細な細工に所々小さな花があしらわれた指輪が一つ入っていた。
受付の男性の説明によると、人間が天界魔界へ行く時は、滞在期間を前もって申請し、魔素を分解する保護魔法陣が付与された『保護指輪』を常に身につけなければならないそうだ。
保護指輪は、空気中の魔素を勝手に取り込み、装着した人間を魔素から守るための保護魔法が常時発動するのだとか。
「異界は空気中にも食べ物にも魔素が含まれています。必ず、常に身に着けてください」
「食べ物に含まれる魔素も分解してくれるんですか?」
「はい。装着者を内外から守るように魔法陣が組まれています。ですので、体内に入ったものに含まれる魔素も、分解されます」
エルマーさんの追加説明によると、体全体に薄い結界が張られているような感じで、結界を空気や食べ物が通過するときに魔素が分解されるようになっているそうで、濾過装置みたいなものと考えていいらしい。
発動している保護魔法自体も、人間に害の無いように高度な魔法技術が使われているそうで、常に発動させていても、人体に一切問題ないとのこと。
色んな人に話には聞いていたし、実際に見せてもらったりもしたが、実際に手に取ってみるとその高い魔法技術力も、繊細なデザインも、聞いていた以上にとても素晴らしいものだ。
「地上界へ戻ればただの指輪だから、お土産や記念に取っとく人が多いみたいだね。毎回デザインが変わるから、代々コレクションする人もいるらしい。私も30年前の新婚旅行の時の保護指輪を未だに取ってあるよ」
妻は記念日ごとに指輪を出してきてはその日一日着けているんだと、嬉しそうにトンゴさんが言った。
なんだか微笑ましい夫婦だ。こちらまでほんわかした気分になる。
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。