10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

文字の大きさ
42 / 92
第3章 いざ、天界へ!

42話 転移

 ふと円型台の向こう側を見ると、トンゴさんが様々な角度からこの空間の写真を何枚も撮っていた。
 私も撮っておこうかな、と二人から離れようとした時、天使が一人近づいてくるのが見えた。

 オレンジ掛かっている腰まである長い金髪を後ろの高い位置で一つに括り、薄い黄緑色の瞳をしたタレ目のかわいらしい女性天使だ。
 彼女は、白いジャケットに白いフリルブラウス、白い膝丈のスカート、白いブーツという、この空間に溶け込めそうな全身真っ白コーディネートで、美しい髪と瞳がさらに際立っていた。
 背中から生えている翼は、羽に少し癖があるように見える。癖毛ならぬ癖羽とかあるのだろうか。

「エルマー様、お久しぶりです。お話は伺っております」
「ああ。よろしくね、ピルカ」

 エルマーさんの砕けた話し方が新鮮で、お知合いですかと聞くと、学生時代の後輩の方で、交流年の間は地上界の天界転移門に派遣されている職員さんで、転移門案内人という役職なのだと、紹介してくれた。
 近くで見ると本当にきれいな人で、美人というよりも可憐という言葉が似合う人だ。背は私より少し小さいくらいだが、以外と胸が大きい。スーツ姿でもわかるほどの大きさとは、羨ましい……

 トンゴさんがいつの間にかこちらへ来ていて、ピルカさんに写真をお願いしている。さすが編集長の知り合い、抜け目ない。心なしか、先ほどまでより嬉しそうな顔でピルカさんを撮っている。
 ピルカさんも撮られるのは嫌ではないらしく、寧ろノリノリで色々なポーズを自ら取っていた。


 暫くモデルとなっていたピルカさんが突然姿勢を正し、「皆様、台から2メートルほど離れて下さい」と言ってきた。
 何かあるのかと不思議に思っていると、リトに手を引かれて、言われた通り2メートル離れた場所に連れていかれた。

 そのまま待っていると、円型台が徐々に光り出し、全体が淡く輝くと、そこからいくつもの白い羽が舞い上がる。羽は台から次々に噴き出し高く高く舞い、まるで踊っているようだ。それは天井のドームまでの空間を舞い続け満たしていく。
 幻想的なその景色に見惚れていると、舞い上がった羽が次第に門の形をかたどっていく。
 白い羽が集まり門が出来上がると、その中から5人の人間が姿を現した。

「お帰りなさいませ。天界から地上界へ、無事に転移完了です」

 そう言って、ピルカさんが今転移してきた5人を、私達が入ってきた扉とは別の扉へと案内していく。
 興奮したような楽しそうな声を上げながら5人が円型台から全員降りて、ピルカさんと共に離れていくと、門は再びふわふわと一枚づつ羽になって舞っていき、天井まで満たしていた羽が徐々に下へ落ちていく。
 円型台に全ての羽が吸い込まれて無くなると、淡い光も消えていった。



 ……今のが転移魔法!
 なんて幻想的で美しいの!

 目の前で起きた奇跡に感動していると、ピルカさんが戻ってきた。
 所々ぴょこっと跳ねている癖羽のある翼を一度広げて伸びをするように数回羽ばたかせてから、こちらへと近づいて、「お待たせ致しました。それでは皆様、参りましょう」と言って、私達を円型台へと案内する。
 案内されるがまま、台の上へ登ると、全員揃っているのを確認したピルカさんが、転移魔法陣へ手をかざして発動させた。

 すると、先ほど見たのと同じように、足元が淡く光り始める。
 描かれている魔法陣が全て淡く光り輝くと、白い羽がふわっと目の前に舞い上がった。
 次々舞い上がる羽に手を伸ばすと、実体は無いようで触ることはできず、手や腕を通り抜けてしまう。しかし、羽のある所はほんわりと温かい。
 触れないのに温かいものが通り抜けていく不思議な感触を楽しんでいると、私たちが立っている数メートル先に、羽が集まり出した。
 徐々に4~5メートルくらいある大きな門へと形作られていく。

 白い羽で出来た扉の無い門が出来上がると、ピルカさんが声を掛けてくれた。

「天界転移門の完成です。この門を潜ると、天界へ到着となります。それでは皆様、良い旅路を」

 行ってらっしゃいませと言ってお辞儀をしてから、私達に手を振って笑顔で見送ってくれている。
 少し興奮しているせいか、いつもより元気な声で「行ってきます!」と答えて、門に向かって進んでいると、横に並んで歩いているリトが手を握ってきた。
 驚いて隣を見上げると、優しい目でこちらを見て、ぎゅっと手を繋いでくる。まるで、「大丈夫」と言ってくれているみだいだ。


 …実は、目の前の魔法に興奮しているのと同時に、少しだけこの門を潜るのに緊張していた。
 行くことが夢だった異界へ、ここを潜れば辿り着く。ここまでこれて嬉しい反面、仕事へのプレッシャーや、これから起こることへの期待と不安などで、ずっと緊張しっぱなしだったのだ。

 人には見せないように気を付けていたし、上手く隠せていると思っていたのだが、リトにはバレていたらしい。
 それでも、こうしてそっと寄り添ってくれることが、心地よくて安心する。
 なんでバレたんだろうとか、思う所もあるが、今はその手の温もりが有難い。
 気恥ずかしさを誤魔化して、ありがとうの気持ちが伝わる様に、私もリトの手を握り返した。

感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。