10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

文字の大きさ
43 / 92
第3章 いざ、天界へ!

43話 天界側の転移門

 門を潜る時は、温い水に潜ったような感触が全身に一瞬だけして、2歩も歩くと反対側へと出た。
 目の前には、白と青が様々な色調で張り合わされている美しいステンドグラスが視界いっぱいに広がっている。よく見ると、白いガラスで天使を模しており、ちょうど私達が立っている正面に一際大きな両腕を広げた天使が白く輝いていて、羽の生えた馬や鳥などと一緒に少し小さめの天使が寄り添うように周りを囲んでいる。

「ようこそ天界へ!無事のご到着、何よりです!」

 美しいガラスに感動していると、職員らしき天使が声を掛けてきた。
 声がした方を向くと、オレンジがかった短い金髪をぴょんぴょん跳ねさせた、薄い黄緑色の瞳をした男性…というよりは少年のほうがしっくりくる、既視感のある色合いの男の人が、私達に、というよりエルマーさんに近づいてきた。
 白いジャケットに白いシャツ、白い蝶ネクタイ、白い膝丈のズボン、白い靴下に白い編み上げブーツ。
 全身真っ白で、これまた既視感のあるぴょんっと跳ねた癖羽が目立つ翼をはためかせながら、たれ目気味の目を細めた人懐っこい笑顔で、エルマーさんと仲良さげに喋っている。

「シルクス、また背が伸びた?」
「んふふ、そうなんです!エルマー様を追い越すのも、時間の問題です!」
「ええ~」

 シルクスと呼ばれた彼の頭を撫でていたエルマーさんが、「仕事しなさい」と言うと、ハッとした彼がコホンと恥ずかしそうに一つ咳をしてから、こちらへ向き直った。

「失礼致しました。改めまして、皆様ようこそ天界へ!転移門案内人のシルクスと申します!」
「シルクスは、ピルカの弟なんですよ。似てるでしょ?」

 なるほど、姉弟でしたか。どうりで似てるはずだ。
 彼もエルマーさんの学生時代の後輩で、今年から転移門で働き始めたらしい。
 挨拶を済ませると、時間を少し取ってあるので好きなだけ撮影していいと、許可が下りた。トンゴさんは二度目の天界だが、前回とは違う転移門だったらしく、早速あちこち写真に収めている。


 天界側の転移門も円型台の上にあり、地上界側と同様に周りに羽が舞っている。
 後ろを振り返って見ると、羽でかたどられた門が建っていて、手を伸ばすと見えない壁のようなものが指先に当たった。 
 どうやらこちら側からは向こうへ通れないらしい。
 前を向くと、先ほど目を奪われた大きなステンドグラスがあり、周りをよく見ると、それはこの空間の壁をぐるっと一周していた。地上界側の部屋よりは狭い空間らしく、円柱型の部屋の真ん中に一段高い円型台が設置されている。
 上を見上げると、地上界側と同じようにドーム型になっていて、その向こうには青空と雲が透けて見えた。

 台から降りようと一歩踏み出すと、左手が引っ張られる感覚がした。引っ張られるというよりも、しっかりと握られていて動かないといった感じだ。
 振り向くと、血の気の引いた顔色の悪いリトが、繋いでない方の手を口元に当てて立っていた。

「えっ、リト大丈夫!?どうしたの!?」
「…………酔った」
「…………はい?」
「転移酔いですね。たまにいらっしゃるんですよ。向こうに休憩できる所があるので、そこで暫く休みましょうか」

 シルクスさんに連れていかれたリトは、ベンチに座るや否やダウンしてしまった。
 心配していると、エルマーさんが側へやってきた。
「少し休めば治りますから、大丈夫ですよ。人間でいう乗り物酔いのようなものですからね」

 異界転移魔法は、人間に対しては過剰なほど対策がされているのだが、天使悪魔に対しては自分でどうにかできるため、最低限の保護魔法しか組み込まれていないそうだ。
 そもそも転移魔法とは、転移させる対象を分子レベルに一度分解したものを、設定した座標まで飛ばして、再び構築するというもので、分解した分子を飛ばす時に、細かく震えながら飛んでいくので、所謂乗り物酔いに似た感覚が起こるらしい。
 転移酔いは人それぞれで、全く平気な人もいれば、リトのように酷く酔ってしまう人もいるのだとか。
 転移酔いを治す治癒魔法があるので、それを発動して暫く休めば、すぐに元通りに元気になるから大丈夫だと言われ、心配はするが近くにいてもできることはないので、気持ちを切り替えることにした。

 シルクスさんが、エルマーさんとキャピキャピ話しながら翼でリトを雑に仰いでいるのを横目に、トンゴさんとあちこち写真を撮って、リトが回復するのを待った。

感想 0

あなたにおすすめの小説

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。