10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第3章 いざ、天界へ!

44話 転移門の外へ

 暫くぐったりしていたリトが意外と早く回復し、漸く転移門の外へと出る。
 全面ステンドグラスだと思っていた壁は、一番大きな天使の足元付近が扉になっていて、繋ぎ目も取っ手も何も見えないのに、シルクスさんが手を翳すと両扉が内側に開いた。

 促されて外へ出ると、そこは広い草原のような場所で、足首ほどの高さの草が生え茂り、所々に白い小さな花も咲いている。
 十数メートル先には、白い幹の大きな樹が一本、大空へ向けてのびのびと枝を広げて生えていて、時々白い鳥が出入りしている。
 足元を見ると、薄いベージュのような色の一辺30センチほどの正方形の石が、交互左右に少しずらしながら等間隔に並んでいる。

「あそこに見えている大きな樹へとお進みください。足元の石がそこまで続いてますので、迷うことはありません」

 「行ってらっしゃいませ」と、にこやかに手を振りながら、シルクスさんが送り出してくれる。
 お礼を言って前を向き歩きながら、周りを観察しつつ写真に収めていく。
 途中で振り返ると、シルクスさんはまだ手を振っていた。私達にではなく、エルマーさんにかな。
 そんな彼の後ろ、私達が出てきたはずの建物は、建っていなかった。間違いなく建物から出てきたはずなのに、その建物がどこにも見当たらないのだ。
 不思議に思って立ち止まって凝視していると、先を歩いていたエルマーさんがこちらへ戻ってきて、私の隣に立った。彼が隣に立った瞬間、シルクスさんがぴょんぴょん跳ねながら大きく手を振り出した。

「外側からは見えないようになっているんですよ。転移門のある部屋はここに幾つかあるんですが、その全てが外側から視認できないようになっているんです。足元の石があるので、迷うことはないですけどね」

 シルクスさんに手を振り返しながら、エルマーさんが説明してくれた。これも演出の一つだそうだ。
 異界へ来たという実感が感じられるように、交流年の間だけの特別な対人間用演出なのだとか。普段は普通に白い建物が見えているらしい。

 エルマーさんの解説を聞きながら白い樹に向かって再び歩き出す。
 頭上高くには白い鳥が時々飛び交い、足元の草陰からは白いウサギが飛び出し、偶に白い蝶がひらひらと目の前を通過する。
 数メートル歩いている間に視界に入る生物全てが白い。天界には白い生き物が多いと聞いていたが、これほどまでとは思っていなかった。本当に白い生き物しかいないように感じてしまう。


 暫く歩いて白い幹が近づいてくると、それがかなり太く大きな大樹であることが分かる。
 その根元に平屋の大きな建物が埋まっているようにして建てられていた。もちろん、真っ白な建造物である。

 開け放たれた入り口から中へ入ると、白と淡い黄緑のマーブル模様の床に、下から上へ向かって淡い黄緑から白のグラデーションになった壁、5メートルはありそうな白く高い天井が広がっている。
 横に長い建物は、私達が入ってきた入り口の他にも幾つか入り口があり、壁沿いに4メートル間隔くらいで並んでいて、その全てが開け放たれていた。
 更に数歩進むと、入り口と対面するように広くて白いカウンターが現れ、その中に立っている白いジャケットと襟に黄緑色のラインの入った白いシャツを着た男性天使が、にこやかに出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、エルマー様。お連れの皆様も、ようこそ天界へ」
「ただいま。あれの準備できてるかな?」
「はい。外に既に準備させてあります」
「ありがとう」


 入界手続きを手早く済ませてくれたエルマーさんに連れられて、カウンターの右側を通り外へ出ると、目の前に馬車が停まっていた。
 馬車なんて、歴史本や小説の中でしか見たことないが、大きな車輪に装飾のあまり付いていないシンプルな白い箱、御者風のアイボリーの衣装を着た天使が二人、箱に付いている扉の前に立っていた。
 馬車の前には、翼の生えた白い大きな馬が二頭繋がれている。馬の額には一本の角が生えているのが見えた。

 あれ知ってる。ユニコーンだ。
 物語の中でしか見たことないけど、天界には実在するんだ!

「トンゴさん、あれ!」
「ああ、ユニコーンだね!前回来た時は見れなかったから、こんな近くで見れるなんて感動だよ!」

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