10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

文字の大きさ
45 / 92
第3章 いざ、天界へ!

45話 空飛ぶ馬車

 御者風の天使二人と何やら話をしていたエルマーさんが、ユニコーンに夢中になっている私とトンゴさんに、馬車に乗る様に声を掛ける。
 ユニコーンも馬車もたくさん写真を撮ってから乗り込むと、外から見た時よりも倍以上広い空間が広がっていた。
 馬車の中は応接室のような内装になっていて、床は木目が美しい白いフローリング、壁と天井は白に近い薄い水色、三人掛けくらいあるオフホワイトのソファが2台に淡い水色のクッションが3つずつ差し色として配置されており、2台のソファの間にガラスのローテーブルが置かれ、その上にはお茶請けの焼き菓子が白い皿に並んでいる。
 端の方にはミニキッチンもあり、お茶の準備などもその場で出来るようになっているようだ。

 どう見ても先ほど外側から見た馬車の容量と一致しない空間に驚いていると、空間魔法の一種で、馬車内を拡張してあるのだそうだ。
 魔法ってなんでもありだなと思いながら、促されるままソファに座ると、当然にように隣にリトが座り、トンゴさんとエルマーさんは向かい側へ腰かけた。
 御者風天使の一人が中へと入り扉を閉めて、端にあるキッチンへ向かいお茶の準備をしてくれているのが見えた。
 てっきり、魔法でお茶とかも出せるのかと思っていたのだが、流石に口に入れる物に関しては、地上界と変わらない方法で準備されるそうだ。

「食器やその日食べる分だけとかなら、亜空間に入れることもあるけど、基本的にはやらないですね。時間経過を止めた亜空間を作り出すのは、高度魔法なので、普通の亜空間に食べ物を入れると、時間が経つと普通に腐っちゃいます」

 御者風天使さんが淹れてくれたお茶を皆に配り、入り口付近に下がると、エルマーさんがどうぞと言って勧めてくれる。
 一口飲むと、ほんのり甘い花の香りと味がして、ほっとする。
 天界にのみ生えるモスイという桃に似た果物の花茶で、今の時期が旬だそうだ。
 お茶に旬とかあるのかと思いながら、エルマーさんにユニコーンのことや馬車のことを質問しながらゆっくり過ごした。


 馬車は、交流年時のみの移動手段で、観光用の乗り物らしい。
 普段は転移魔法でどこにでも行けるため、使われないのだが、人間が頻繁に転移魔法で移動するのは危険だということと、以前、転移魔法で送ってもらおうとした人間が別の場所に連れ去られた事件があったことから、人間を転移魔法で移動させるのは禁止になったそうだ。
 それ以降、何か観光の目玉になるような人間向けの安全な移動手段はないかと、地上界を覗き見しながら考えていた時に、人間が昔使っていた馬車に目を付けたんだとか。

「地上界と違って道路整備とかされてないから、空を飛べる動物に引っ張らせて、馬車自体に飛行魔法を掛けて空を飛んで移動するようにして、天使が御者みたいに操縦したら、安全だし受けもいいんじゃないかってことで、採用されたんですよ」
「ということは、この馬車は空を飛ぶんですか?」
「ええ。今すでに飛んで移動中ですよ。外見てみますか?」

 こちらへどうぞと、大きな窓の近くへ案内されて外を見てみると、眼下に建物がいくつも並んでいる上を、本当に移動していた。
 どんどんと街並みが後ろへ流れていく様は、飛行機に乗っている時のようで、飛行機よりも高度が低く、街の様子がしっかりと見ることが出来る距離だ。

「ほあ~、すごい……」

 流れる景色に見入っていると、別の馬車が後ろから近づいてくるのが見えた。
 その馬車を引いているのは、獅子の体に鷹の頭と翼を持った、グリフォンと呼ばれる生き物だ。これも、物語の中でしか見たことのない生物だ。
 急いでカメラを構えて撮っていると、「動物園にも飼育されているから、今度見に行きましょうか」と聞かれて、速攻で頷いた。
 天界動物園なんて、今まで空想の中でしか知らない生き物が、たくさんいるのかな。
 すっごく楽しみ!

感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。