10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第4章 天界取材

53話 商業区域

 馬車は一切揺れることなく、いつの間にか商業区域へと到着した。
 馬車から降りると、馬車乗り場から扇状に広い石畳の道が広がっている。
 道沿いには大小様々な建物が並んでいる。外観はレンガで作られたものが多いようで、レンガその物の色味を残したままの外壁もあれば、カラフルに彩られた外壁もあり、窓の上や入り口の上部分に布で日よけが設置されている店も見受けられる。
 平屋の建物は、瓦屋根になっており、オレンジや青、白などの色瓦を使って、店のロゴやマークを施しているらしい。上空からでも目的地が見つけやすいように工夫がされていると、エルマーが教えてくれた。
 道路沿いに面した一階は店舗になっており、様々な業種の店が並んでいた。


 打ち合わせ通り、まずは街全体の様子を見て回ることになった。
 広い石畳の道は歩道で、車道はない。これは、馬車が店の前に止まれるだけの道幅のみ確保されており、天使は移動時は転移か空を飛ぶため、専用の車道は必要ないからだ。
 そして、歩道には一定間隔で一部色の変わった大きめの石が敷かれている部分がある。
 これは転移指定陣や転移ステーションと呼ばれているもので、この石の上でのみ転移可能であると天界交通法で決められた場所なのだとか。地上界でいう所のヘリポートやバス停のようなものらしい。
 商業区域は人の出入りが普段から多いため、全員が好き勝手に好きな場所に転移すると玉突き事故のようなことが起こることがあるらしく、それを解消するために決められた法律ということだ。
 特に交流年の間は、人間を巻き込まない様に厳重注意喚起されている。
 色石の周りには人間が間違って入らないように私の腰の高さあたりまである柵が設けられており、『転移ステーション・巻き込まれ注意』と人語で書かれた看板が掛かっている。
 商業区域以外にも、人の出入りの特に多い区域には、同じような転移指定陣が設置されている。しかも、それぞれの区域で違った形のものが設置されているのだとか。
 指定陣が設置されていない場所は、基本的に自己責任で転移先の安全を確保しなければならないらしい。
 それぞれの区域の転移ステーション巡りをしても、楽しそうだなと思いながら、エルマーに付いて歩いて回った。



 三人で並んで歩いていると、時より何かが空を横切る影が差すことがある。
 見上げると、建物上空を白い大きな翼を広げて飛んでる天使が何人か見えた。
 リトのように転移酔いする天使も少なからず居るので、その人達は飛行魔法で空を飛んで移動するのだそうだ。
 天使の翼は鳥と同じ構造で翼の力のみで飛ぶこともできるが、風魔法との相性が抜群にいいため、天使はまず風魔法を覚えて飛行魔法をマスターするらしい。魔法を併用した方が、より安全で楽に飛べるのだとか。


 エルマーの解説によると、天使飛行区域が地上30~50メートルの間で、50メートル付近には目に見えない天井があり、そこから上は飛べないようになっている。
 50メートルより上空は馬車専用飛行区域で、衝突事故が起こらないように徹底されている。因みに区域を分けるのは交流年時のみで、普段は見えない天井もなく、どこまでも上空へと飛ぶことが出来るらしい。

「ねえ、空を飛ぶってどんな気分なの?」
「うーん、あまり考えたことないなあ。呼吸するってどんな気分って聞かれてるのと同じような感じかなぁ」

 それくらいごく当たり前に出来ることのため、特別感はないらしい。
 人間からしたら、自身の体のみで空を飛ぶことは、結構憧れがあるんだけどな。
 そんなことを思っていたら、浮遊魔法のデモンストレーションを受けれるところがあるけど体験してみるかと提案された。

「えっ、行きたい!空を飛べるの?」
「飛行魔法とは正確には違うんだけど、体を浮かせるってところは同じだから、いい経験になると思うよ。あとで案内しようと思ってたんだけど、折角だから今から行こうか。人間に毎回大人気なんだよ」

 この先の噴水広場で、行っているとのことで、予定を変更して早速向かうことになった。
 広場に近づくにつれて、歓声や拍手が徐々に聞こえてくる。今まさに観光客が空中に浮かぶ体験をしている最中なのだろう。
 私も早く飛んでみたい!と逸る気持ちを落ち着かせて、簡単に取材プランを頭の中で練る。

 天界へ来て初めての魔法体験、すごく楽しみだ!

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