10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

文字の大きさ
69 / 92
第4章 天界取材

62話 リーダグリフォンのお願い事

 何を話したいのか全く想像がつかなくて、とりあえず頷いておく。
 グリフォンと話をしたってトンゴさんに言ったら、羨ましがられるかな。

「いっすか?さっきから早くしろって催促がうるさ…、……、え、あぁはい。防音結界を張って…、よし!ではいくっす!」
「えっ、あ、はいっ」

 なんだか強制的に進められてるが、まあいっか。
 記者としては、何だか貴重な体験ができそうな気がして、少しワクワクしている。

「お主、名は何という?」
「シエナ・ジュルトです。人間です」

 目線は、飼育員さんではなくグリフォンに向けて答える。

「うむ。人間にしては魔素耐性がかなり高いな。高位悪魔の印が二重に付いているのも珍しい」
「…はい。私の身の安全のためにと、してくださいました」
「うむ、うむ。人間は脆弱ゆえ、その方が安全よな。して、シエナよ」

 なんだかすごくご機嫌な声に聞こえるんだけど、これって飼育員さんの演技?
 そっくりそのまま伝えるって、感情も含まれてるの?

「儂の子がもう間もなく産まれるのだが、名を付けては貰えぬか?……って、えええぇぇぇえ!!?」

 突然の叫び声にびっくりして、思わず飼育員さんの方を見ると、グリフォンの方を向いて一人で「ありえないっす!」とか「理由は!?」とか「許可が…!」とか、二人(一人と一匹?)で何やら話し込み始めてしまった。
 グリフォンも飼育員さんの方を向いているのを良い事に、この状況をとりあえずエルマーに確認してみようと振り返ると、これでもかと碧い目を大きく瞠った顔があった。

「エルマー?」
「……っ、な、なに?」

 エルマーが動揺しているなんて珍しい。
 それほどのことを、このリーダーグリフォンは私に頼んだらしい。

「あの、さっきリーダーグリフォンさんが言った名前を付けるって、そんなに驚くようなことなの?」

 動物園で生まれた赤ちゃんの名前を一般公募するのは、地上界ではよくあることだ。
 私の感覚としてはそれと同じなのだが(親から直々に頼まれるのはもちろん初めてだけど)、確かに名誉なことだとは思うが、外交官補佐の彼がそれほど驚くような事態なのだろうか。

「凄いことだよ!そもそも、希少種の群れの長と契約していない者、しかも人間が直々に話せるだけでもすごい事なのに、産まれた子供の名付けなんて!僕の知ってる限りでも初めての事だよ!」

 歴史的瞬間に立ち会えた!と、興奮しっぱなしのエルマーのマシンガントークによると、そもそもグリフォンは仲間意識が異常に高く、群れで産まれた子供は群れ全員で育てる種族なのだそうだ。
 成獣となるまでは愛情一杯に大切に育てられ、一人前と全員から認められて初めて、群れの外へ一人で出ていけるのだ。
 そんな大切な子どもの名付けを、今初めて会った人間に頼むなど、前代未聞の出来事なんだとか。

「グリフォンは未来が見えるって昔から言われてるんだ。実証はされてないけど、もしかしたら、シエナの未来に自分の子どもでも見えたのかも!」

 凄いよシエナ!と、両肩を掴まれてガックンガックン揺さぶられながら、とんでもない事になっちゃったなぁと、まるで他人事のように感じていた。


感想 0

あなたにおすすめの小説

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。