10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第4章 天界取材

71話 ユニコーン獣舎再び

 そして最後にやって来たユニコーンエリア。
 閉園時間ギリギリだからなのか、私達三人だけしかいないようだ。
 朝と変わらずユニコーンの姿は見えないまま。

 暫く待ってみたけれど、やはり姿は見せてくれないかと肩を落とし、残念だけど帰ろうかと話していたその時、不意に一頭のユニコーンが姿を現した。
 私達から距離はあるが、正面に立っているユニコーンは、じっとこちらを見つめている。

 艶のある美しい真っ白な毛、淡いパステルイエローを主としたオーロラ色の立派な角、淡いクリーム色がグラデーションになっていて羽根の先が所々銀色に光って見える大きな翼。

 一目で上位者だとわかる堂々とした佇まいとその美しさに、しばらく目が離せず、瞬きも忘れて見入ってしまう。

 すると、「こりゃ珍しいこともあるもんだ」という声が聞こえて、ハッとしてそちらを向くと、鈍い金髪をオールバックにして眼鏡を掛けた渋いベテラン執事っぽい雰囲気の飼育員さんが近くまでやって来てくれた。

「エルマー様がいらっしゃるということは、貴女様がグリフォンの子の名付けを行った方ですかな?」
「…ご存じなのですか?」
「そりゃあもう。従業員全員が大騒ぎしていますからな」

 エルマーに一礼してから私に視線を移し、目尻の皺を深くして人当たりの良い優しい笑顔で答えてくれた飼育員さんは、動物園のユニコーン全頭と契約していて、ユニコーンエリアの責任者を長年務めているそうだ。
 そんな飼育員さん曰く、姿を現したこのユニコーンは特に警戒心が強く、これまで一度も観光客に姿を見せたことがないらしい。

「長年動物園ここに居りますが、初めてのことです。あの子が興味を示すとは、貴女はどうやら特別な何かをお持ちのようだ」
「特別な何か、ですか?」
「ええ。それが何かまではわかりませんが、彼ら上位の魔獣は、我々天使よりも本質を見る力が強い。警戒心の強いあの子が姿を見せたということは、悪い事ではないのでしょうな」
「そうですか…」

 もう一度ユニコーンへと視線を戻すも、既に姿は見えなくなっていた。
 とても綺麗な色合いだったから、もう一度見たかったなあ。



 閉園時間が迫ってきたため、ユニコーンエリアを後にし出口へと向かいながら、三人並んで歩く。

「天界動物園はどうだった?」
「楽しかった!なんだか色々あったけど、貴重な体験が出来たし、もふもふ達に癒されて疲れも取れたし、綺麗なユニコーンも見れたし」
「有意義な休日になって良かったよ。僕も楽しかった」
「でも、結局エルマーに色々説明してもらっちゃったから、仕事の時と変わらなかったよね。ごめんね?」
「気にしないで。僕がついて行きたいって言ったんだから。それに、シエナに頼られるのはすっごく嬉しいし、全く負担じゃないから、仕事以外でももっと頼ってくれて良いよ?」

 そう言ってこてんと首を傾け、少し期待の籠った瞳で見つめられる。
 うぅ…なんだかエルマーが小悪魔に見えてくるよ……
 どこでそんな技を覚えてきたの……

「本当に?そんなこと言ったら、私、調子に乗ってあれもこれもって頼っちゃうよ?」
「ふふっ、いいよ。でも、そんなこと言ってても、シエナは遠慮するだろうし、自分で出来ることはやっちゃうだろうから、僕が勝手にお節介を焼くことにするね」

 私の言葉が本心でないことはわかりきっているとでも言うように、冗談っぽく言ったエルマーはとても楽しそうな顔をしていた。
 照れ隠しはバレバレだったみたい。なんだか逆に恥ずかしい…



 そしてこの日以降、エルマーは本当に今まで以上に過剰に色々とお世話を焼いてくれるようになった。

 私が少しでも興味を示したものがあると、取材の有無に関わらずいつでも取材できるように先回りして準備してくれているし、外交官特権と言ってはかなりの優待遇で次々にもてなしてくれるのだ。
 取材時だけでなく、ホテルの部屋で資料整理や報告書作成などをしている時にも、タイミングよく昼食や間食を届けてくれては、私が根を詰めないように休憩を一緒に取るためだけに尋ねてきてくれる。
 たまの休日には、気分転換に出かけようと言って、仕事抜きで楽しめるスポットや飲食店に連れ出してくれるし、少し疲れが溜まって来たなと感じていると、スパやマッサージを予約してくれたり、再び動物園のふれあいコーナーへと連れて行ってくれたり。

 極めつけは、天界の魔法技術開発部署への取材許可が下りたと、それはそれは嬉しそうに報告してくれたことだ。
 最重要機密事項であろう場所を、地上界との初の公の事業だからといってそんなに簡単に見せていいわけがない。
 出来れば概要だけでも聞けたらいいなと思ってはいたけれど、まさか本当に許可が下りるとは思っていなかった。

 それを聞いた時、眩暈がして倒れそうになって周りに心配をかけた私は、悪くないと思う……


   +   +   +   +   +



この世界でのユニコーンとペガサスの違いは、

ユニコーンは全身真っ白の毛で、角と翼はオーロラ色が混じっている事が多く、魔力の多さがその色に現れることが多いとされています。あと、オーラが半端ない。

ペガサスは本文の説明そのままで、馬に翼が生えた魔獣。黒い毛の子は居ませんが、栗毛や葦毛に白が混ざったような感じの色合いの毛色が多いです。
翼の色は体と同じ色で、体よりもやや白の交じり具合が多いようです。
白い羽根が混じる度合いは、個体差によります。


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