79 / 92
第4章 天界取材
71話 ユニコーン獣舎再び
そして最後にやって来たユニコーンエリア。
閉園時間ギリギリだからなのか、私達三人だけしかいないようだ。
朝と変わらずユニコーンの姿は見えないまま。
暫く待ってみたけれど、やはり姿は見せてくれないかと肩を落とし、残念だけど帰ろうかと話していたその時、不意に一頭のユニコーンが姿を現した。
私達から距離はあるが、正面に立っているユニコーンは、じっとこちらを見つめている。
艶のある美しい真っ白な毛、淡いパステルイエローを主としたオーロラ色の立派な角、淡いクリーム色がグラデーションになっていて羽根の先が所々銀色に光って見える大きな翼。
一目で上位者だとわかる堂々とした佇まいとその美しさに、しばらく目が離せず、瞬きも忘れて見入ってしまう。
すると、「こりゃ珍しいこともあるもんだ」という声が聞こえて、ハッとしてそちらを向くと、鈍い金髪をオールバックにして眼鏡を掛けた渋いベテラン執事っぽい雰囲気の飼育員さんが近くまでやって来てくれた。
「エルマー様がいらっしゃるということは、貴女様がグリフォンの子の名付けを行った方ですかな?」
「…ご存じなのですか?」
「そりゃあもう。従業員全員が大騒ぎしていますからな」
エルマーに一礼してから私に視線を移し、目尻の皺を深くして人当たりの良い優しい笑顔で答えてくれた飼育員さんは、動物園のユニコーン全頭と契約していて、ユニコーンエリアの責任者を長年務めているそうだ。
そんな飼育員さん曰く、姿を現したこのユニコーンは特に警戒心が強く、これまで一度も観光客に姿を見せたことがないらしい。
「長年動物園に居りますが、初めてのことです。あの子が興味を示すとは、貴女はどうやら特別な何かをお持ちのようだ」
「特別な何か、ですか?」
「ええ。それが何かまではわかりませんが、彼ら上位の魔獣は、我々天使よりも本質を見る力が強い。警戒心の強いあの子が姿を見せたということは、悪い事ではないのでしょうな」
「そうですか…」
もう一度ユニコーンへと視線を戻すも、既に姿は見えなくなっていた。
とても綺麗な色合いだったから、もう一度見たかったなあ。
閉園時間が迫ってきたため、ユニコーンエリアを後にし出口へと向かいながら、三人並んで歩く。
「天界動物園はどうだった?」
「楽しかった!なんだか色々あったけど、貴重な体験が出来たし、もふもふ達に癒されて疲れも取れたし、綺麗なユニコーンも見れたし」
「有意義な休日になって良かったよ。僕も楽しかった」
「でも、結局エルマーに色々説明してもらっちゃったから、仕事の時と変わらなかったよね。ごめんね?」
「気にしないで。僕がついて行きたいって言ったんだから。それに、シエナに頼られるのはすっごく嬉しいし、全く負担じゃないから、仕事以外でももっと頼ってくれて良いよ?」
そう言ってこてんと首を傾け、少し期待の籠った瞳で見つめられる。
うぅ…なんだかエルマーが小悪魔に見えてくるよ……
どこでそんな技を覚えてきたの……
「本当に?そんなこと言ったら、私、調子に乗ってあれもこれもって頼っちゃうよ?」
「ふふっ、いいよ。でも、そんなこと言ってても、シエナは遠慮するだろうし、自分で出来ることはやっちゃうだろうから、僕が勝手にお節介を焼くことにするね」
私の言葉が本心でないことはわかりきっているとでも言うように、冗談っぽく言ったエルマーはとても楽しそうな顔をしていた。
照れ隠しはバレバレだったみたい。なんだか逆に恥ずかしい…
そしてこの日以降、エルマーは本当に今まで以上に過剰に色々とお世話を焼いてくれるようになった。
私が少しでも興味を示したものがあると、取材の有無に関わらずいつでも取材できるように先回りして準備してくれているし、外交官特権と言ってはかなりの優待遇で次々にもてなしてくれるのだ。
取材時だけでなく、ホテルの部屋で資料整理や報告書作成などをしている時にも、タイミングよく昼食や間食を届けてくれては、私が根を詰めないように休憩を一緒に取るためだけに尋ねてきてくれる。
たまの休日には、気分転換に出かけようと言って、仕事抜きで楽しめるスポットや飲食店に連れ出してくれるし、少し疲れが溜まって来たなと感じていると、スパやマッサージを予約してくれたり、再び動物園のふれあいコーナーへと連れて行ってくれたり。
極めつけは、天界の魔法技術開発部署への取材許可が下りたと、それはそれは嬉しそうに報告してくれたことだ。
最重要機密事項であろう場所を、地上界との初の公の事業だからといってそんなに簡単に見せていいわけがない。
出来れば概要だけでも聞けたらいいなと思ってはいたけれど、まさか本当に許可が下りるとは思っていなかった。
それを聞いた時、眩暈がして倒れそうになって周りに心配をかけた私は、悪くないと思う……
+ + + + +
この世界でのユニコーンとペガサスの違いは、
ユニコーンは全身真っ白の毛で、角と翼はオーロラ色が混じっている事が多く、魔力の多さがその色に現れることが多いとされています。あと、オーラが半端ない。
ペガサスは本文の説明そのままで、馬に翼が生えた魔獣。黒い毛の子は居ませんが、栗毛や葦毛に白が混ざったような感じの色合いの毛色が多いです。
翼の色は体と同じ色で、体よりもやや白の交じり具合が多いようです。
白い羽根が混じる度合いは、個体差によります。
閉園時間ギリギリだからなのか、私達三人だけしかいないようだ。
朝と変わらずユニコーンの姿は見えないまま。
暫く待ってみたけれど、やはり姿は見せてくれないかと肩を落とし、残念だけど帰ろうかと話していたその時、不意に一頭のユニコーンが姿を現した。
私達から距離はあるが、正面に立っているユニコーンは、じっとこちらを見つめている。
艶のある美しい真っ白な毛、淡いパステルイエローを主としたオーロラ色の立派な角、淡いクリーム色がグラデーションになっていて羽根の先が所々銀色に光って見える大きな翼。
一目で上位者だとわかる堂々とした佇まいとその美しさに、しばらく目が離せず、瞬きも忘れて見入ってしまう。
すると、「こりゃ珍しいこともあるもんだ」という声が聞こえて、ハッとしてそちらを向くと、鈍い金髪をオールバックにして眼鏡を掛けた渋いベテラン執事っぽい雰囲気の飼育員さんが近くまでやって来てくれた。
「エルマー様がいらっしゃるということは、貴女様がグリフォンの子の名付けを行った方ですかな?」
「…ご存じなのですか?」
「そりゃあもう。従業員全員が大騒ぎしていますからな」
エルマーに一礼してから私に視線を移し、目尻の皺を深くして人当たりの良い優しい笑顔で答えてくれた飼育員さんは、動物園のユニコーン全頭と契約していて、ユニコーンエリアの責任者を長年務めているそうだ。
そんな飼育員さん曰く、姿を現したこのユニコーンは特に警戒心が強く、これまで一度も観光客に姿を見せたことがないらしい。
「長年動物園に居りますが、初めてのことです。あの子が興味を示すとは、貴女はどうやら特別な何かをお持ちのようだ」
「特別な何か、ですか?」
「ええ。それが何かまではわかりませんが、彼ら上位の魔獣は、我々天使よりも本質を見る力が強い。警戒心の強いあの子が姿を見せたということは、悪い事ではないのでしょうな」
「そうですか…」
もう一度ユニコーンへと視線を戻すも、既に姿は見えなくなっていた。
とても綺麗な色合いだったから、もう一度見たかったなあ。
閉園時間が迫ってきたため、ユニコーンエリアを後にし出口へと向かいながら、三人並んで歩く。
「天界動物園はどうだった?」
「楽しかった!なんだか色々あったけど、貴重な体験が出来たし、もふもふ達に癒されて疲れも取れたし、綺麗なユニコーンも見れたし」
「有意義な休日になって良かったよ。僕も楽しかった」
「でも、結局エルマーに色々説明してもらっちゃったから、仕事の時と変わらなかったよね。ごめんね?」
「気にしないで。僕がついて行きたいって言ったんだから。それに、シエナに頼られるのはすっごく嬉しいし、全く負担じゃないから、仕事以外でももっと頼ってくれて良いよ?」
そう言ってこてんと首を傾け、少し期待の籠った瞳で見つめられる。
うぅ…なんだかエルマーが小悪魔に見えてくるよ……
どこでそんな技を覚えてきたの……
「本当に?そんなこと言ったら、私、調子に乗ってあれもこれもって頼っちゃうよ?」
「ふふっ、いいよ。でも、そんなこと言ってても、シエナは遠慮するだろうし、自分で出来ることはやっちゃうだろうから、僕が勝手にお節介を焼くことにするね」
私の言葉が本心でないことはわかりきっているとでも言うように、冗談っぽく言ったエルマーはとても楽しそうな顔をしていた。
照れ隠しはバレバレだったみたい。なんだか逆に恥ずかしい…
そしてこの日以降、エルマーは本当に今まで以上に過剰に色々とお世話を焼いてくれるようになった。
私が少しでも興味を示したものがあると、取材の有無に関わらずいつでも取材できるように先回りして準備してくれているし、外交官特権と言ってはかなりの優待遇で次々にもてなしてくれるのだ。
取材時だけでなく、ホテルの部屋で資料整理や報告書作成などをしている時にも、タイミングよく昼食や間食を届けてくれては、私が根を詰めないように休憩を一緒に取るためだけに尋ねてきてくれる。
たまの休日には、気分転換に出かけようと言って、仕事抜きで楽しめるスポットや飲食店に連れ出してくれるし、少し疲れが溜まって来たなと感じていると、スパやマッサージを予約してくれたり、再び動物園のふれあいコーナーへと連れて行ってくれたり。
極めつけは、天界の魔法技術開発部署への取材許可が下りたと、それはそれは嬉しそうに報告してくれたことだ。
最重要機密事項であろう場所を、地上界との初の公の事業だからといってそんなに簡単に見せていいわけがない。
出来れば概要だけでも聞けたらいいなと思ってはいたけれど、まさか本当に許可が下りるとは思っていなかった。
それを聞いた時、眩暈がして倒れそうになって周りに心配をかけた私は、悪くないと思う……
+ + + + +
この世界でのユニコーンとペガサスの違いは、
ユニコーンは全身真っ白の毛で、角と翼はオーロラ色が混じっている事が多く、魔力の多さがその色に現れることが多いとされています。あと、オーラが半端ない。
ペガサスは本文の説明そのままで、馬に翼が生えた魔獣。黒い毛の子は居ませんが、栗毛や葦毛に白が混ざったような感じの色合いの毛色が多いです。
翼の色は体と同じ色で、体よりもやや白の交じり具合が多いようです。
白い羽根が混じる度合いは、個体差によります。
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。