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第4章 天界取材
76話 ラウンジで
エルマーと二人で個室ラウンジでリトを待つ間、少しだけお酒を飲むことになった。
今日は早朝から働いたので、こんなに明るいうちに仕事が終わるなんて夢のようだ。
夕食前なので、軽めのカクテルをエルマーにおまかせでお願いすることにした。
出てきたのは、まるでエルマーの瞳の色のような透き通った青空色の液体に、真っ白な雲のような泡が乗ったカクテルだ。カクテルグラスに入った青いビールのような見た目で、よく見ると泡が割れる度に、キラキラした粒が淑やかに弾けている。
一口飲むと、すっきりと爽やかな口当たりで、とても飲みやすい。
天界では、よく食前酒やウェルカムドリンクとして出されるお酒の一種らしい。
「すっごく飲みやすくて美味しいね」
「口に合ってよかったよ」
そう言ってから、エルマーも口を付ける。
上に乗っている泡が、まるで意思を持っているかのように口を付けている反対側の淵へと移動し、ふわふわと揺れている。
それ飲みやすそうだなぁと思いながら、私もついつられてグラスに口を付けた。
何のリキュールなのかと思いながらちびちびと飲んでいると、ふふふっとエルマーが急に笑った。
「どうしたの?」
顔をあげてエルマーを見ると、楽しそうな笑顔で見つめられていた。
「あのね、天使はこのカクテルを飲むときに、魔法で泡を退かして飲むのが普通なんだけど」
そう言って私に腕を伸ばして、優しく上唇を指でなぞる。
急に触れられた驚きで動くことが出来ず、エルマーの行動をただ見つめるしかなかった。
離れていった指には、唇に付いていた白い泡が。
「わざと退かさずに飲んで唇に泡を付けることで、私はあなたに好意を持っていますってアピールするんだ」
白い泡の着いた指を、何のためらいもなく口元へと持っていき、瞼を伏せて舐める。
余りにも色っぽいその仕草に目が離せず、そのままエルマーを見つめてしまう。
「そして、相手の泡を拭うことは、私もあなたに好意を持っていますっていう返事なんだ」
伏せていた瞼が開き、カクテルと同じ青空色の瞳と目が合う。
少し頬を染めて優しく愛おしむみたいに微笑む目の前の天使は、それはそれは美しかった。
そして、自分のグラスを手に取ると、今度は白い泡を魔法で退けることなく口付ける。
グラスがテーブルに置かれ、彼の口元が現れると、上唇に白い雲のようなきめ細かい泡が付いていた。
そこでやっと、止まっていた脳内が動き出した。
頭の中でエルマーの言葉の意味を徐々に理解していく。
全てを理解した途端、顔に一気に熱が集中するのが分かる。多分、耳や首まで赤くなっているだろうことも。
鈍感だと言われる私でも、ここまでされれば流石に分かる。
エルマーが私に好意を持っている?
好意って、どの好意?友情?
――な訳ないよね・・・
いつから?
なんで?
私なんかのどこが?
答えのない問がぐるぐる頭を巡る。
泡を唇に着けると相手に好意があるという意味。
つまり、唇に泡を付けて飲んでいた私は、知らずに、アピールしたと。好意を。
そして、エルマーは、それを、受け取った?
その後、エルマーは、泡を・・・
考えれば考えるほど恥ずかしくて目を合わせることが出来なくなって、勢いよく俯いてしまった。
あ、しまった。今のは流石に印象悪かったかも。
こんな時ですら、身に着いた取材時用対人スキルというのは無意識に反応する。
咄嗟に取った行動とはいえ、自己嫌悪と不安が一瞬で脳内を占めていく。
けれどエルマーは、そんな私の気持ちや考えを把握しているかのように、「シエナ」と優しく呼ぶ。
優しい声色に促されて、そっと目線だけを向ける。
エルマーの口元まで視線が上がった時、ちょうど唇に着いた泡を親指で拭っているタイミングだった。
何でもないような仕草のはずなのに、異様に目が釘付けになる。
私の視線に気づいたエルマーがフッと息を洩らして笑ったのが分かった。
「シエナの事だから、好意って言っても、友達としての意味に捉えてたりして」
「そんなこと、…っ」
ないと言おうと顔を上げると、頬を赤く染めて恥ずかしそうにはにかむエルマーの姿。
「良かった。ちゃんと正しい意味で理解してくれて」
グラスに添えたままだった手に、伸ばされたエルマーの手が重なる。
「今日、いつもよりも距離が近いなって思ってたでしょ?ドキドキしてくれた?」
「うん…」
嬉しいと言って、握られた手に力が入ったのが分かった。
「いつもはアイツが居るから、少し遠慮してたんだ。シエナもすごく懐いてるし、安心しきった顔してるから、正直に打ち明けると嫉妬してた。だから、動物園で宣言してから、露骨なくらい自分の立場をフル活用して、シエナに少しでも僕の事を意識してもらえるように行動するようにしたんだ。それくらいしないと、シエナは気づいてくれないと思ったから」
動物園へ行ったあの休日以降、エルマーとの二人きりの時間が増えたのは確かだった。
あれは全て、もしかして、く、口説かれていたと、受け取っていいの?
「でも、今日は二人きりだから。ちょっと、いつも以上に、勇気出してみた」
私の思い上がりじゃない?
皆が憧れる王子様みたいな人に?
「こんなチャンス、次はいつ来るか分からないから」
今日、ずっと距離が近かったのも、そのため?
リトが一日そばに居ないなんて、殆どないことだから?
「これからは、僕の事をもう少しだけ意識してくれたら嬉しいな。一日の中で、一分でも一秒でも、シエナの心に僕だけが居る時間が増えて欲しい」
頬を赤く染めながらも真剣な目でそう言ったエルマーは、何も言えず動く事すらできなくなった私の手を、ずっと握っていた。
今日は早朝から働いたので、こんなに明るいうちに仕事が終わるなんて夢のようだ。
夕食前なので、軽めのカクテルをエルマーにおまかせでお願いすることにした。
出てきたのは、まるでエルマーの瞳の色のような透き通った青空色の液体に、真っ白な雲のような泡が乗ったカクテルだ。カクテルグラスに入った青いビールのような見た目で、よく見ると泡が割れる度に、キラキラした粒が淑やかに弾けている。
一口飲むと、すっきりと爽やかな口当たりで、とても飲みやすい。
天界では、よく食前酒やウェルカムドリンクとして出されるお酒の一種らしい。
「すっごく飲みやすくて美味しいね」
「口に合ってよかったよ」
そう言ってから、エルマーも口を付ける。
上に乗っている泡が、まるで意思を持っているかのように口を付けている反対側の淵へと移動し、ふわふわと揺れている。
それ飲みやすそうだなぁと思いながら、私もついつられてグラスに口を付けた。
何のリキュールなのかと思いながらちびちびと飲んでいると、ふふふっとエルマーが急に笑った。
「どうしたの?」
顔をあげてエルマーを見ると、楽しそうな笑顔で見つめられていた。
「あのね、天使はこのカクテルを飲むときに、魔法で泡を退かして飲むのが普通なんだけど」
そう言って私に腕を伸ばして、優しく上唇を指でなぞる。
急に触れられた驚きで動くことが出来ず、エルマーの行動をただ見つめるしかなかった。
離れていった指には、唇に付いていた白い泡が。
「わざと退かさずに飲んで唇に泡を付けることで、私はあなたに好意を持っていますってアピールするんだ」
白い泡の着いた指を、何のためらいもなく口元へと持っていき、瞼を伏せて舐める。
余りにも色っぽいその仕草に目が離せず、そのままエルマーを見つめてしまう。
「そして、相手の泡を拭うことは、私もあなたに好意を持っていますっていう返事なんだ」
伏せていた瞼が開き、カクテルと同じ青空色の瞳と目が合う。
少し頬を染めて優しく愛おしむみたいに微笑む目の前の天使は、それはそれは美しかった。
そして、自分のグラスを手に取ると、今度は白い泡を魔法で退けることなく口付ける。
グラスがテーブルに置かれ、彼の口元が現れると、上唇に白い雲のようなきめ細かい泡が付いていた。
そこでやっと、止まっていた脳内が動き出した。
頭の中でエルマーの言葉の意味を徐々に理解していく。
全てを理解した途端、顔に一気に熱が集中するのが分かる。多分、耳や首まで赤くなっているだろうことも。
鈍感だと言われる私でも、ここまでされれば流石に分かる。
エルマーが私に好意を持っている?
好意って、どの好意?友情?
――な訳ないよね・・・
いつから?
なんで?
私なんかのどこが?
答えのない問がぐるぐる頭を巡る。
泡を唇に着けると相手に好意があるという意味。
つまり、唇に泡を付けて飲んでいた私は、知らずに、アピールしたと。好意を。
そして、エルマーは、それを、受け取った?
その後、エルマーは、泡を・・・
考えれば考えるほど恥ずかしくて目を合わせることが出来なくなって、勢いよく俯いてしまった。
あ、しまった。今のは流石に印象悪かったかも。
こんな時ですら、身に着いた取材時用対人スキルというのは無意識に反応する。
咄嗟に取った行動とはいえ、自己嫌悪と不安が一瞬で脳内を占めていく。
けれどエルマーは、そんな私の気持ちや考えを把握しているかのように、「シエナ」と優しく呼ぶ。
優しい声色に促されて、そっと目線だけを向ける。
エルマーの口元まで視線が上がった時、ちょうど唇に着いた泡を親指で拭っているタイミングだった。
何でもないような仕草のはずなのに、異様に目が釘付けになる。
私の視線に気づいたエルマーがフッと息を洩らして笑ったのが分かった。
「シエナの事だから、好意って言っても、友達としての意味に捉えてたりして」
「そんなこと、…っ」
ないと言おうと顔を上げると、頬を赤く染めて恥ずかしそうにはにかむエルマーの姿。
「良かった。ちゃんと正しい意味で理解してくれて」
グラスに添えたままだった手に、伸ばされたエルマーの手が重なる。
「今日、いつもよりも距離が近いなって思ってたでしょ?ドキドキしてくれた?」
「うん…」
嬉しいと言って、握られた手に力が入ったのが分かった。
「いつもはアイツが居るから、少し遠慮してたんだ。シエナもすごく懐いてるし、安心しきった顔してるから、正直に打ち明けると嫉妬してた。だから、動物園で宣言してから、露骨なくらい自分の立場をフル活用して、シエナに少しでも僕の事を意識してもらえるように行動するようにしたんだ。それくらいしないと、シエナは気づいてくれないと思ったから」
動物園へ行ったあの休日以降、エルマーとの二人きりの時間が増えたのは確かだった。
あれは全て、もしかして、く、口説かれていたと、受け取っていいの?
「でも、今日は二人きりだから。ちょっと、いつも以上に、勇気出してみた」
私の思い上がりじゃない?
皆が憧れる王子様みたいな人に?
「こんなチャンス、次はいつ来るか分からないから」
今日、ずっと距離が近かったのも、そのため?
リトが一日そばに居ないなんて、殆どないことだから?
「これからは、僕の事をもう少しだけ意識してくれたら嬉しいな。一日の中で、一分でも一秒でも、シエナの心に僕だけが居る時間が増えて欲しい」
頬を赤く染めながらも真剣な目でそう言ったエルマーは、何も言えず動く事すらできなくなった私の手を、ずっと握っていた。
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