10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第4章 天界取材

77話 お使い リトside

 シエナたちと別行動の日、ちょうどいいから、兄からの面倒なお使いを済ませることにした。
 頼まれたのは、天界魔獣の素材を売っている店の調査。
 基本的には天界のみで消費される素材だが、どうしても魔界で必要な物もあるのだ。

 治癒魔法を使える者が少ない悪魔は、怪我や病気にかかった場合、基本的に自己治癒力のみで治す。人間に比べて元々回復力が高いのと、体内の魔素と魔力を循環させると更に早く回復するからだ。
 しかし魔力の循環が得意でない者や、種族的に魔法に疎い者たちの中には、それが出来ない者も多く存在する。
 そんな彼らは薬で治すのが一般的で、その材料に天界魔獣の素材が使われている。

 昔は天界から勝手に魔獣をしてきていたが、不可侵条約成立後は商店が窓口になって確立された正規ルートで輸入している。
 その商店の内の一つを最近になって兄が買収したのだが、従業員の一人が素材を闇オークションに度々横流ししていたことが発覚し、一応取引先の天界の商店も調べることになったのだ。

「天界へ行くなら、ついでに調査してきてくれるかい?」

 天界へ出発する為にシエナと合流する直前、そんなことを言い出した時は、そんな時間はないだろうと思って断ったのだが、いつものようにしつこくネチネチと、仕事を頼んでるとは到底思えない態度で喋り続けてくるから、仕方なく承諾したのだった。



 面倒事を引き寄せるくせに、その解決を他人任せにする兄にイラつきながらも、取引先商店のリストを見ながら一つずつ回っていく。
 このリストは、ホテルの部屋に最初から供えられていた郵便送受信箱ポストへ、魔界に居る兄が送って来たものだ。

 この郵便送受信箱ポストは、手紙のみ送受信できる魔道具で、各政府も使用している。
 見た目は色々あるが、俺の部屋に置いてある物はシンプルな白い横長の小箱で、やや中が透けて見えるものだ。
 界を跨ぐ連絡手段は、現在はこれしかない。天界魔界間では通信魔法は繋くことができないのだ。
 かなり高価な魔道具だが、ホテルが用意したのかエルマーが用意したのかは分らないが、俺たち三人の部屋に一台ずつ設置されていた。勿論、盗難防止の色んな魔法付きで。

 そしてどこで情報を得たのか、ホテルに着いたその日から、兄から手紙が毎日来るようになったのだ。
 非常に鬱陶しいことこの上ない。

 後でエルマーに聞くと、地上界のシエナの会社にも一台送ったらしく、報告書や進捗などのやり取りがしやすいようにとの計らいだったらしい。
 なぜ俺の部屋にまであるのかと問い詰めると、「一人だけ仲間外れは嫌でしょ?」と、当たり前かのように返された。
 ……まあそれだけ信用されていると思うことにしよう。
 有難迷惑という言葉をこいつは知っているんだろうかと、しばらくの間モヤモヤしながら過ごしたものだ。



 ということで、「暇なときにチャチャッと調べて結果を送ってくれるかい?」と取引先商店のリストを無理矢理押し付けられてしまったのだ。
 しかし、本当に暇な日が一日出来るとは。
 折角無視を決め込もうと長らく放置していたのにな。

 やはりどこかから情報を得ているのか、数日前に各商店宛ての手紙もご丁寧にまとめて送って来たのには、正直驚いた。
 兄の思い通りに事が進んでいるのが実に腹立たしいが、シエナと共に居れないなら特に何もすることがないのもまた事実なので、仕方なくこの面倒なお使いを済ませることにしたのだ。

 リストと手紙の束を亜空間収納に仕舞い、なんとも言えない気持ちのまま、渋々ホテルを出た。

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