10年に一度の異界交流で、天使と悪魔に迫られています

七居

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第4章 天界取材

80話 様子のおかしな二人 リトside

 その後、折角だからとシャンエルも呼んで、六人全員で久しぶりに夕食を食べることになった。
 ニエルヴァが行ってみたかったという店が近くにあったので、そこへ全員で向かうことに。

 移動中、いつも通りシエナの隣に並んで様子を見ていたが、特に気になることはなく、普段通りに見える。
 トンゴと今日の取材の様子を楽しそうに話していた。
 早朝からの取材だったから、疲れや眠気が出ただけだったのだろうか。



 しかし、その後もシエナの様子はおかしかった。

 店に到着して席に案内され、天使三人が店主おすすめの料理を次々に注文していく間も。
 店員の一人がエルマーのファンだったらしく、会えたことに興奮して、勝手にワインのボトルをサービスだと言って人数分の六本持ってきた時も。
 それに気づいて慌てて回収にきた店主と、まだエルマーと会話したい店員の攻防を見せられた時も。
 迷惑を掛けたお詫びと言って、結局ワインボトル二本をサービスしてくれた時も。
 料理が運ばれてきて、見た目と匂いのギャップがすごいと、食べる前から天使三人とトンゴが騒がしくした時も。


 ずっと心ここに在らずといった様子で、ぼうっとしていた。
 いつもなら、会話に加わり楽しそうにしているのにな。

 いや、薄っすらと笑顔を張り付けてはいるが、あれは取材時に偶に見る愛想笑いだ。
 俺がシエナの取材にくっ付いて行くようになった初期の頃、取材相手の腹の出てる中年男がシエナの手を握ろうとしてきたことがあったが、その時に見た笑顔と同じだ。
 あの時は俺がシエナを庇ったから男から手を握られることはなかったし、向こうが勝手に俺を恐れてそれ以降は真面目な取材態度だった。
 懐かしい思い出ではあるが、出来ればあんな笑顔は二度と見たくないし、させたくないと思ったんだったな。



 それから、ずっと見ていて一つ気づいたことがある。
 エルマーの方を見ようとしないのだ。
 大柄なシャンエルに合わせて通された大きめの六人掛けテーブルの席順は、奥からエルマー、シエナ、俺。
 その対面に、これも奥からシャンエル、トンゴ、ニエルヴァ。

 天使三人がワイワイと騒がしく喋っているため、必然と輪の中に入る席にも拘らず、頑なにエルマーの方を向かないようにしている様に俺には見える。
 取り分けた料理をエルマーがシエナに渡した時も、視線を彷徨わせて、なんというかオドオドしていた。
 仕事柄かシエナは相手の目を見て話すので、これはかなり珍しい姿だ。

 料理を各々取り分けて食事を開始してからは、料理に集中しているようだ。
 普段から食事中は料理に集中する方だが、それでも会話が無くなることはない。
 しかし今は、一切会話に入ることなく、目の前の料理に集中している。
 確かに美味いが、会話を忘れるほど夢中になる味ではない。



 暫くすると、ちらちらとシエナを見ていたエルマーが、突然彼女に顔を寄せ、耳元で何事かを囁いた。
 すると、途端にシエナの顔が真っ赤に染まった。
 赤い顔のまま、勢いよく顔をエルマーの方へと向けたかと思うと。

「エルマー!」
「ふふっ、やっとこっち向いた」
「――っ!」

 そしてまた勢いよく顔を反らして、食事に戻る。

 俺たちに余程聞かれたくなかったのか、エルマーは自分の口元と彼女の耳の周りに遮音魔法と認識阻害を使っていたため、何を言ったのか聞こえないし口元を読むこともできなかった。
 一体何を言ったんだろうか。


 その後もエルマーはシエナにちょっかいを掛け続けていたが、シエナは無視して食事に集中しようとしていた。
 しかし、その手元は全く定まっておらず、フォークで刺そうとした野菜が皿の外へ飛んだり、ナイフで切った肉が切れておらず全部繋がっていたり、空になったグラスに気付かず口付けたり。



 挙動不審なシエナが珍しくて黙って見ていたが、流石におかしい。
 ここまで動揺しているのは、俺でも初めて見るくらいだ。

 シエナが手洗いに立ったタイミングで、シャンエルとニエルヴァがエルマーに詰め寄り会話し始めたのをいいことに、俺は静かに後を追うことにした。

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