拝啓、空の彼方のあなたへ -1000の手紙-

emi

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豚汁

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あなたへ

あなたを送り出し、もう二度と作ることはないと思っていた豚汁を作りました。

あれは、あなたがそちら側へ逝った年の春でしたね。
季節外れだけれど、豚汁が食べたいと言い出したあなた。
買い物に行ったけれど、思うように材料が揃わなくて、
冬になったら作るねって話した事、覚えていますか?

あの時、あなたは、
そっか、じゃあ、冬までお預けだね なんて、笑っていましたね。

でも、あなたは、冬を待たず、暑い夏の日に逝ってしまいました。

あなたを送り出して、寒くなった頃に、
あなたが豚汁を食べたがっていた事を思い出したけれど、
作る事はありませんでした。

だって、あなたにお供えするだなんて、もう遅いよ。

嬉しそうに、食べてくれるあなたを見る事も、
きっと、何杯もおかわりしてくれるあなたを見る事も、出来ないもの。

だから、もう遅い。

私は、あの年から、豚汁を作る事も、
「豚汁」という字を見る事も、聞く事も、全部が嫌でした。

それなのに、買い物に行ったらね。
別な料理の材料を買いに行ったつもりだったのに、
予定とは全然違うものを買っていました。

それは、偶然、安かったから とか、
たまたま目に付いたから とか、そんなふうに買い物をして、家に帰り、
料理をしたら、いつの間にか、豚汁を作っていました。

不思議だけれど、
お腹を空かせて帰ってきたあの子に、
今日は、豚汁だねって、言われるまで、気が付きませんでした。

あなたの分をお椀に注いで、手を合わせながら、
あの時、作ってあげられなくてごめんねって、 
そんな私の、悲しくて悔しい気持ちとは、逆に、
あなたの顔は、なんだか、とても、嬉しそうに見えました。

あの時、約束したもんね。

随分と待たせてしまいましたが、
やっと、豚汁を作る事ができました。

もしかしたら、買い物をしている間、
本当は、あなたは、側にいて、
豚汁作ってよ なんて、私に、話し掛けてくれていたのでしょうか。

そんな気がしてしまいました。

あなたが、喜んでくれているのなら、
きっとまた作りますね。


2016.11.10
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