拝啓、空の彼方のあなたへ -1000の手紙-

emi

文字の大きさ
178 / 356
2017年

不思議の始まり

しおりを挟む
あなたへ

思い返せば、私に、不思議な出来事があったのは、あれが始まりでした。

あなたの容態が、急変したあの日から、しばらくの間、
私は、過呼吸に苦しみました。

あなたの検査手術のあったあの日、
院内であの子と待ちながら、
私は、翌日に控えたあなたの一時帰宅の事を考えていました。
一緒に、どんな1日を過ごそうかと、あなたが喜ぶ顔を、思い浮かべていました。

そんな中、突然、私たちは、呼び出されました。
先生が待つ部屋へ向かう時は、嫌な予感しかしなかった。

部屋に入ると案の定、
深刻そうな先生の顔に、私は、逃げ出したい気持ちでした。
何も聞きたくない
そんな気持ちで、先生の前に座りました。

手術中にあなたの容態が急変したこと、
親御さんが健在でしたら、すぐに連絡を取ってくださいと話がありました。

すぐに連絡を取ってください

その言葉が意味することに、私は、立ち上がる事が出来なかった。

やっとの思いで、あなたのお母さんに連絡を取ると、
指定された小さな待合室で、あの子と2人、
無言で、あなたを待ちました。

思いもしなかった展開に、
もしもの事があったらと、一番最悪な状況しか考えられなくなった私は、
頭の中が混乱し、呼吸が乱れ、
自分でも、何が起きているのか分からない状態の中、
誰か呼んでくるから
あの子の声が、遠くから聞こえました。

私がしっかりしなくてはいけない時に、
私までもが、運ばれてしまったあの日から、
しばらくの間、過呼吸に苦しむ事になりました。

あの日から、
どのくらいが経った頃だったでしょうか。

家にひとりでいた私は、
1年と半年程前に亡くなったあなたのお父さんへ、
あなたを助けてほしいと、お願いの気持ちで、
あなたのお父さんの事を考えていました。

すると、
ふと、私の頭の中に、
心配しないで待ってろ
そんな言葉が浮かびました。

不思議ですが、その時、私の気持ちが、急に軽くなった事、
よく覚えています。

あなたのことは不安で堪らないままなのに、
何故か、緊張だけが解れるような、不思議な感覚でした。

そして、あの日から、
私は、過呼吸で苦しむことがなくなりました。

それまで生きて来て、あんなふうに、
外から言葉が入ってくるような、
不思議な感覚は、初めてでした。

もしかしたら、余りにも辛すぎる状況に、
自分を守るために、
私が作り出したものだったのかも知れません。

何の確証もない不思議な言葉。
あの頃の私は、あの言葉を、お告げと呼びました。

あなたを見送り、
時々、あなたが側にいてくれると感じる不思議な出来事を思い返し、
やはり、あの日、
あなたのお父さんが、助けてくれたのではないかと考えました。

あなたの残された時間を変える事が出来ない代わりに、
私の苦しさを取り除いてくれたのだと。

そちら側で、お父さんには、逢えましたか?

助けてくれて、ありがとうございましたと、
伝えてくれたらと思います。


 2017.08.05
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

処理中です...