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第4章 最後に笑うのは私たち?

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白いカーテンのようなものが、カプセル前に引かれ…
なにやら、おかしな騒ぎが発生した。

ふーむ。なかなかいい身体しているじゃないか。
…父さま?

何をじろじろ見てんだい!
近所の八百屋のおばさん?

”ばちーん”

げふぅ。
父さま殴られた!?

ほっほっほっ、これは中々、よく育ったのう。

おじいちゃん、あんたもか!男ってもう、何歳(いくつ)になっても子供なんだから。

きゃー
何よこれー、なんで裸なの??

あ、お姉ちゃん。

こっちみない!

なんで?いいじゃない。姉弟なんだから。

そういう問題じゃない!
ふぇ~ん
お嫁さんに行けなくなっちゃう~

ふぁー…ああって、ここはどこだ。
うわっ!ナニコレ、なんで裸なんだ
…お、裸の女がいる…じー

こっちを見るなって言ったでしょ!
このスケベ

グボ

ぐ、き、効いたわ、そのストレート。がくぅ…

え…
わ、大変~。動かなくなっちゃった!

なんだかうるさいわね~、
お、なぜか裸。アピールしなきゃ。どうだ、いい身体してるだろう。この大きなバストと引き締まったウエスト、ヒップも形がいいだろう。こんなのこんな機会じゃなければ、近くで見れないぞ。もっと近くに来い。

周囲からどかん、どすん、ふぁ~ となんだか怪しい音と声?

”ごちん”

いったーい。何すんのよ。

バカなこと言っているんじゃないの。少しは隠しなさい。
あんたたちもあっちへ行きなさい。

そういうおばちゃんも、丸見えだよ。
ぐぐぐ、ああ言えば、こう言う。そんな子に育てた覚えはないよ。
いや、育てられていないから。

なんだか、カーテンの向こうにいる人たちは、裸?のようだった。
しかも、パニックが起きているような…

屋敷側の部屋から、わらわらと入ってくる巫女装束を着た人たちと神官の服装の人たち。
神官の1人がカーテン内側に入った…と同時に、カーテンの外に物凄い勢いで弾き出される。

変質者が来たー
私を捕まえに来たのね~、
そのロープで何をするつもり。
俺はそんな趣味はないぞ。
ああ、それで俺になにをするの~、なんだか興奮…

それ以上はしゃべるな。気持ち悪いぞ。鳥肌が出た。


何か勘違いをしているような感じで、さらに騒ぎが大きくなったような。

巫女装束の方々が、その後に集団で入って、しばらくすると、騒ぎは収まった。
神官の人たちは、さっきの光景を見て、カーテン外で待機しているようだ。
弾かれた神官は、気絶をしているようだけど。

しゃりーん、しゃりーん

そんな涼やかな音が鳴り、巫女の1人が神官たちに、いいわよ。と言っているのが聞こえた。

神官が中に入り、静かな時間が過ぎていく。
ともえと天神さまが来た。

巫女と神官が1名ずつ、カーテンの外に出て、ともえと天神さまの前で、跪く。

天神さまが、
「どうだ。状態は安定しているか。」

神官が
「根源魂(こんげんこん)との接続状態を見ましたが、全て定着、系統管理されていることが確認されました。ただし、少々おかしい形にはなっています。」
「ん?おかしい形?」
「通常、根源魂は、系列最上位を指し、最終統合魂(トータルフラクタル)ですが、通常の根源魂と地神(ちしん)様系統が混ざった形になっています。」
「理と同じか?」
「はい。記憶やそのほかは以前と全く同一です。ただ使命も含んだ形での2つの要素が丸ごと入っています。」
「ふむ、つまり結論を言ってしまうと。」
「理さまから生まれた形のため、使命も引き継いだこととなり、事実上眷属になっています。」
「夜見君は、元々違う系統。ゆえに、根源も違うので、混じらない。理は、単為生殖に近い形で子供を成す。俺たちの系統と同じということになるな。」
「ええ、自然発生型ではなく、動機付け再構成型ですね。すぐに、トモエ天国に降ろすことはできません。これまでとは、”ちから”の使い方が違いますから、まずは日常に慣れてもらわなければ。」
「ここから出て、部屋に移動できるのは、どれくらいだ?」
「移動なら、私どもが付いていれば、屋敷内ならどこでも。」
「そうか。」

本当に、みんながあのカーテンの向こうにいるのだろうか。
「あの、天神さま。あの向こうに…。」
「おお、そうだな。みんなを呼ぶか。」
「出てきてもいいぞ。」

カーテンが引かれると、懐かしい顔ぶれが、いっぱい。
父さまは、頬がもみじ形になっていたし、1人倒れている人が…。女の子の何人かは、顔やローブから覗いている皮膚が真っ赤。長身の女性は、頭をさすっていたし、その隣で知り合いの女性の中では一番大きい八百屋のおばさんが、柔らかい顔で見ていた。

父さまがこちらに1歩踏み出すと、どすんという音とともに、姿が見えなくなった。

天神さまの前にいる神官とは別の神官が申し訳ないような顔をして、
「申し訳ありません。部屋側の慣性制御フィールドを稼働させていませんでした。」

どうやら、足を着いた際に、”ちから”の掛け方が分かっていなかったらしく、床を踏み抜いたらしい。

と、どこからか、インターホンのような声が…
「天神さまとともえさまにお聞きしたいのですが。理さまのいるお部屋の真下に、今、地下道天井を突き破って上から人が落ちてきました。顔に腫れものもあり気絶していたので、収容しましたが、どちらに運びましょうか。」

ともえは、”顔の腫れ”というところで、噴き出していたし、天神さまは、ため息をつき、

「そのまま、慣性順応室へ。治療は、専属治療者に任せればいい。」
「顔の腫れは…」
「それは、そのままにしておけ。」
「了解しました。」

父さまが消えて、びっくりしたのか一瞬、部屋の中が静かになったけど、天神さまからの連絡がおわった次の瞬間。みんな、笑いだしてしまった。

私も、目に涙を浮かべつつ、笑ってしまったけど。
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