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第6章 消された奥様のデスゲーム

57 急成長の裏側

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”おめでとうございます。ランクアップしました。”

…え??昨日、何もしていないよ私。なのに、なんでランクアップしたのだろう。思い当たる点が全くなかったから、そんなことを思った次の瞬間、ヒラメキました。これ、しんかちゃんの経験の反映じゃないかって。昨日まであった、木々は全く見えず、見渡す限り全てお花畑になっているような感じ。木々は全て消えている。きっと食虫植物も粉々になっただろうし。その影響じゃないのかな。
しかし、すごい勢いでランクアップした。ランクアップしたのは、私がダントツでトップだったらしく、そのご褒美も、もらってしまった。魔法の全属性ブーストらしい。魔法を発動すると効率よく行使できるとか、威力だけじゃなく、範囲や密度、複数の魔法の同時実行までできる優れもの。これだけでも嬉しいのに、魔力が一定以上に上昇したので、スキルアップボーナス。初級魔法の統合系である"御前中の魔法”を取得した。
しかし、体蔵庫から出していないのにマニュアルが読み取れる。その上、左の上の方に数字が出現した。
12/1013
一体、何を意味しているのだろうかこの数字は。いや、なんとなくどこかで見たような感じもする。はっきりしないから、これは無視かな。そして、そのさらに右側に出たのは、順位?だった。
1位、1位、1位(次者は、R1L13)
一番右は分かる。たぶん、私の次に高いレベルの人がレベル13なんだろう。ダントツだね。私。棚ぼたって感じもするけど。ランク2になったけれど、前回と同じくレベルアップ時のステータス操作は自分ではしない。フルオートに設定。フルオートに伴って、スキルが1つ追加された。追加されたスキルは、共存共栄。きっと、しんかちゃんとのことなんだろうなって思っていた。実際のところ、想像以上のスキルと気が付いたのは、私が街の跡地へたどり着いてからだった。

***学校にいた時に、デスゲームへ強制参加させられた、とある男子生徒***

よく分からない存在に、この世界にいる悪魔を倒せと言われて飛ばされてきたこの世界。運が良かったのか、海岸にうつ伏せになっていたところを、漁師さんたちに助けられた。こう見えても、釣りは得意だ。意思疎通も問題なくできていたので、恩返しという感じで、漁師さんたちと外洋に出て魚を取ることになった。みんな、マイ釣り竿を持っていたけれど、1本貸してもらって釣ってきました。わいわいがやがや酒や釣ってきた魚をみんなで食べていた時、1人の漁師が空を見て慌て始めた。その慌てた様子を見ていた他の漁師や女子供も空を見た次の瞬間、我先にと自宅へ走り始めた。俺も、助けてもらった漁師さんに引きずられながら家の中へ。借りた釣り竿をどうしようかと思ったけれど、それは放っておいていいとか。なんでこんなに大騒ぎなのかと聞けば、ここから街を挟んだ反対側にある森に嵐を友とする花が咲いているという。花の嵐と恐れられているその花は、成長の最終段階で周囲に暴風を吹きだして、自分たち以外の動植物を粉砕。それを自らの生存圏を広げるための肥やしとて利用。成長した花は、新しい寄生者に付いていき、新天地でその寄生者を苗床として増やすという。
寄生者と言っていたけれど、そもそも暴風で自分以外の動植物を吹き飛ばすのだから、どこからその寄生者はくるんだ?と思っていました。翌朝、左上に出た数字を見、メッセージを見てどこへ逃げようかと焦り始めた。

0/1013 最下位、最下位、最下位/R1L0
R2接近中。順位差による間引きが実行されると、あなたは死亡します。
レベルを早急に13以上に上げてください。

***森に隣接した街にいた、12人の生徒たち***

いきなり異世界に飛ばされた1,000人を超える人達の中で、俺たちは運がいい。街周辺に俺を含めて12人の生徒がいたからだ。俺は、そのリーダーとなって、悪魔とかを倒そうと思う。まずは、装備の確認だ。全員同じだった。自らがもらった特異能力を隠しながら、部下たちの特異能力を他のやつに聞かれないように耳元で話させた。
すると、全員同じ特異能力を持っていることが分かった。しかも俺の特異能力も同じ。どういうことだ?俺だけの優遇だと思っていたが、まさかこんなことだとは、思わなかった。腹いせに、最後のひょろっとしたやつを蹴り飛ばして、憂さを晴らしてしまったのは、可愛い方だろう。あいつは、お腹を抑えながら意味不明な声をあげていたが。いい気味だ。とりあえず、他のやつには内緒にしておこう。
しかし、困ったこともある。金がない。食事をするにも金は必要だ。誰かの装備を売ってもいいが、大した金にならんだろう。少しそこらへんを歩いているやつに聞いてみよう。
どう見ても怪しいと思えるやつに聞いてみた。
「おい、聞きたいことがある。この街で手っ取り早く、簡単に金を稼ぐ方法はなんだ。」
「ふん、聞きたいといいながら、態度がでかすぎるんだよ。」
売り言葉に買い言葉。少し暴れたが、相手から聞き出すことができた。
一番簡単なのは、人身売買だそうだ。奴隷商人に売却する人を預けた段階で手付金が支払われ、オークションで落札した金額の8割を取得できると言うものだった。
12人の仲間だと思っている、おめでたい奴らから、まぁまぁ好みの女を2人確保して、残りの9人は売却することにした。
そして、今、俺は9人分の手付金を手にしている。9人の手付金に落札間違いなしと確約できるとして、金貨
9枚+11枚の20枚をもらった。明日の夜、オークションが開かれる。これは笑いが止まらない。

今日は夕方から強風が吹き始めた。オークションが始まるまで、少し時間があると思って地下市場から地上に出ようとしたが、門番が通してくれなかった。なんでも、地上は暴風が吹き荒れているとか。風ごとき、なんで恐れているのか、笑い飛ばそうと思ったが、門番は笑わず、そんなに信じられないのなら地上を見てくればいいと言って、門を開けて地上へと促していた。
風ごときで、ばっかじゃねぇのと思っていたが、想像以上の被害が出ていた。地下に入る前までにあった街を囲んでいる街壁(がいへき)が全てなくなっていた。風で街中にあった家やギルド、石造りの屋敷まで、その風で吹き飛ばされている。慌てて、門の前まで行き、すぐにここを開けるように門番に怒鳴った。しかし、反応がない。実際、すごい風と音があった。門のところにいて、扉を叩いていればそのうち気が付くだろうと、がんがん叩いていた。しばらくすると、門が開いたので身体を滑り込ませたうえで、抗議をしていたが、さっきまで風音で音がまったく聞こえない状態になっていた。
だが、今は完全に無風状態。ただ、森の方からおかしい重圧を感じる。扉を閉めて、地下市場に行けばと思い、地下への階段を下り始めた。市場に着くと、もぬけの殻。誰もいない。上の方でも何かが騒いでいるようだが、俺に渡されたVIPルームへ。やはり誰もいない。奴隷商人の部屋に行くと、大量の書類が床にまき散らかされていた。いよいよおかしいと思い、廊下にでると、さっきまでいなかったじじいがいた。ここの管理人とか言ったか、高齢だから今回のオークションを最後の仕事にするとか、言っていたやつだ。話を聞けば、風を共にした花が、全てを吹き飛ばす風を放つために溜め込んでいると、意味不明な反応。ふざけていると思い激高した俺が、じじいに掴みかかろうとした時に、床面から浮き上がった感じがした。次の瞬間、俺は死んでいた。
死んだ状態で街の上から街全体を見ると、全て粉砕されていた。しかも、地面にも深い溝が幾重にも走っていて、街から逃げ出した人たちも容赦なく、暴風に切り刻まれていた。
俺は蘇生した。しかし、出発地点に戻って俺に待っていたのは、出発前に見せられた校長の末路。俺が溶けていくのを感じながら、意識が遠のいていく…

***

森に隣接していた街は、暴風により地上建造物も地下構造体も全て吹き飛ばされた。
この暴風により、歩が知らないうちに、12人が死亡していた。
その12人は、異世界転移した者。
12/1013 の意味を悟った時、トリハダが出るまで、もう少し…
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