約束の続き

夜空のかけら

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第9章 理の使命2

74 反転魔法陣

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展開についていけなくなった私は、黙っていることにしました。
続けてあいつが言ったこと…

「だれがと言うのは、少し違うか。創世の女神は2人いたのだから。」
「2人…。」
思わず、言葉がでてしまいました。
横にいるお姉ちゃんを見ながら。

「そうだ。お前たち2人が、創世の女神の生まれ変わりだ。最も、自覚させる前に死んでしまったがな。」
「死んだって、生き返ったのじゃないの?」
「生き返ったとは、一言も言っていない。”死んだ場所から、旅をしないか”とは、言ったが。」
「じゃあ、今の状況はなによ。死んでるの?」
「ある意味では、死んでいるな。」
「訳が分からない。」
「ここは、死んだ場所と同じに見えるが、実際は違う。ここは、お前たちが死んだ世界と似ているが、別の場所だ。元の世界は、反転魔法陣によって、消滅しているからな。」
「消滅って。世界って何よ。」
「世界とは、こういう場所が無数にあるのさ。詳しい説明は、面倒なのでしない。」
「そっちも知りたかったのに…。まぁ、いいわ。消滅した理由は、分かっているんでしょうね。」
「もちろん。簡単なことだ。創世の女神が消えたからだ。」
「ちょっとまって、おかしいじゃない。創世の女神の生まれ変わりが私たちなら、私たちが生まれる前も、いないはずよ。」
「確かにいないが、血は残っていて、しかもその血を引き継いだ者たちが、代行していたからな。」
「…。」
「まぁ、そんなわけで、ここは創世の女神さまがいないと、反転魔法陣で世界消滅ってことだな。」
「旅…。旅に出れば、この世界は消えるってことは、旅なんかできないってことにならないの。」
「別に、この世界を旅する訳じゃない。出発は、ここからだが、旅をする場所は別の場所だ。」
「そんなところにどうやって行くのよ。」
「もちろん、これを使う。」
あいつが指をさしたのは、反転魔法陣。
「これ?これで?」
「そうそう。世界が消滅する前に隠れ里の周囲を飲み込み始めるが、その時の余剰分を搾取。それで、目的地に飛ぶ。ああ、行く先は、決めてあるから大丈夫だ。まぁ、滞在期間はせいぜい1年間だがな。」
「はぁ、もういいわ。説明もよく分からないし、さっさと出発したい。」
「よし、反転魔法陣を起動させるぞ。」
魔法陣と思わしきものが、地面。頭の上くらい、もう少し上…いくつも出現した。空に近いほど大きくなってる。私たちは、その魔法陣の中心にいる。魔法陣のある場所と、その外側の間にはなんだか、向こうが見える壁のようなものがある。空気がゆらゆらしているように見える。
魔法陣が、少しずつ輝きだした。それと同時に、草原が消えていく。遠いところから、ゆっくりこちらへ暗くなっていく。魔法陣ぎりぎりのところまで暗いところが来た。魔法陣のところだけが明るい。よく見ると、この魔法陣は空中にあるらしい。山の山頂よりも低いみたいだけれど。
音は聞こえないけれど、周りからこの魔法陣に向かって風が吹いているらしい。なんだか色々なものが飛んでくる。壁に触れると、あっという間に消えていく。それを見ていたら、お姉ちゃんが私の肩を軽く叩いた。何だろうと思ったら、下を見てという風に指で指してる。
下を見ると、魔法陣の記号とかが書いてある場所以外の場所に、なにかが浮き上がってきた。
思わず、あいつを見ると、目を閉じて、魔法陣に両手を付いて何かに集中している様子。これは何と言いたかったけれど、とても言い出せる雰囲気じゃなかった。
額に汗をかいていて、それが絶えず流れているところを見ると、少し心配にもなった。魔法陣に両手を付いているところをよく見れば、赤い何かが身体から魔法陣に流れているのが見えた。
血!と思ったけれど、しゃがみこんでみると、赤い光が全身から湧き上がっていた。
見るからに、疲れがたまっていくのが分かった私は、自分でもよく分からない行動に出た。
あいつの額に流れている汗を思わず、素手で拭ってしまったのだ。
その瞬間。私の身体からも赤い光が出始めた。最初はぼんやりしていたのに、あいつに触るごとに、赤い光が強く出てきた。お姉ちゃんの方を見ると、お姉ちゃんも何かを感じたのか、私と反対側から、あいつの額に私と手を合わせて触れた。
私とお姉ちゃんから出た赤い光が、あいつの身体を通じて、魔法陣に吸い込まれていく。
ふと、魔法陣の外を見ると、真っ暗な感じがする。山などもなくなっていて、魔法陣以外の場所は何もなくなっているという、空虚感がある雰囲気。
魔法陣の白い光が強くなり始めると同時に、赤い光も強くなっていく。
白い光よりも赤い光が魔法陣全てを覆いつくした瞬間。全ては反転し、気が付くと、周りは一変していた。
目の前には、物凄い量の水たまり。果てが見えない。
私たちは、どこかの丘の上に座り込んでいた。
あいつが倒れていた。慌てて
「どうしたのよ。死ぬの?」
息も荒く、なかなか話せないようだったけど、なんとか言葉を出して、それでいて掠れた声で
「死なないよ。思ったよりも力を消耗した。ありがとう。力を分けてもらって、助かった。」
いままでと違う話かたに、なぜかどきどきした。
額からまだ汗が流れている。疲れた感じの顔にどきどきしっぱなしだった。
その感情よりも、あいつが心配という方に意識が向いていたのか、また額に手を触れてしまう私。
それを、あいつも遮ることもなく、触らせてくれる。

そして、その時、あいつの記憶が流れ込んできた。
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