約束の続き

夜空のかけら

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第9章 理の使命2

75 記憶

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あいつの記憶は…、滅茶苦茶だった。訳が分からない。
たぶん、一番古い記憶からだったのだけど、これがまた何が何だか、私?を超えている。

***

真っ暗闇の中、浮いている。辺りを見渡しても、同じ。いつからこうしているのかは…よく分からない。
ふと気が付くと、隣にネコが2匹。どこから迷い込んだのだろうと、思って見たが、ネコはネコ。
1匹が鳴いた。もう1匹も、後を追うように鳴いた。
ネコの鳴き声が、真っ暗の中に響き、消えていく。
何も起きない。
2匹のネコは、足元を身体を擦りつけながら歩き始める。
なんだ、構ってほしいのかと思って、先に歩き出した方をひょいとすくい上げてみた。すくい上げて、身体を起こそうとしたときに、すくわなかった方のネコが、腕を足掛かりに頭の上に乗った。
今度は、2匹同時に鳴いた。
目の前に、光る珠が突然出現。ゆっくりと大きくなっていく。
一旦、大きくなるのが止まった。
なんだ?どうした?と思っていたら、その光る珠の中に入ってしまったのか、闇から光へ一気に明るくなった。でも、まぶしいとか感じなかった。
ネコ2匹は、小さい女の子に化けてた。ただ、頭に乗った方は、化けた瞬間に落ちてたけど。
そうして、落ちた方は、こんなことを聞いてきた。
「私、創る。あなた、壊す。どうする?どうする?」
意味が分からない。もう1人の女の子は、お姫様だっこ状態で、涙が今にもこぼれそうな顔をして見つめてくる。はっきり言って、居心地が悪い。その子も、小さな声でこんなことを言っていた。
「私、直す。あなた、壊す。早く決めて、お願い。」
一体何を?
球体が光りつつ、膨張し始めた。
最初に言葉を発した子の周囲が円周上に何かが浮き上がってきた。
「始まったよ。もう、止められないよ。」
膨張を始めた球体の中に3人が入り、入ったと同時に爆発するように、周囲に光が広がっていく。真っ暗だった場所は、無数の光の点が輝き始めた。
そのうちの1つの光の点に降り立つと、冷たく冷えた何かが足に触れた。
水…か。
光の点は、明滅を繰り返しながら、周囲を変化させていく。
周囲の変化は、空にも及び、暗闇だった空が青い空に変化していく。
空の変化と共に、さっきまで水に触れていた足は、地面に足を着くようになり、そこから無数の草が生えてきた。
「ここを始まりの地と定め、この世界の終わりの時まで、唯一無二の場所として、封じる。私たちが創り直せる存在として、ここに血を残す。」
2人は、同時にそんなことを言い、周囲から隔離された空間内から外の創世に着手。粗方、創世が終わったのは、体感時間でわずか30分だった。
そして、
「じゃあ、血を残しましょうか。…血、出して。」
「…??」
一体何を言っているのだ、こいつ。
「応じてくれなかったから、勝手に取ったから、もうどこへ行ってもいいわ。」
いやいや、何かを取られた様子はなかったはず。
2人は、さらに何かの作業をしている。
家を作り、井戸を作り、公園や畑や…いろいろな物をどんどん作っていく。
そうして、1つの街を作り終えると、こっちを向き、
「いい加減、出ていってくれるとありがたいのだけど。」
と墜落女が言い、
「ごめんなさい。あなたがいると、私たちも安心して、去れないの。」
とお姫様女が言ったため、
その場を立ち去ることにしたかったが、どうやったら、ここから出れる?
「あなたなら、簡単よ。普通に、ここから出たいと思えばいいのよ。簡単だから、早く出ていって。」
と墜落女が吠える。

教えてくれた通りに、外に出ることにして、何かを言った方がいいと思ったので、相手に声をかけた。
しかし、思ってもいないことを発したため、怪訝に思われてしまった。
「じゃあ、またな。」
またって、なんだ?
すると、墜落女が振り向きもせずに、
「そうね。ずっと先でまた会うと思うけど、その時は受け入れてあげてね。」
といい、
お姫様女が、
「その時は、??をよろしくね。私たちは、ここに残ります。あなたの幸せな日々を祈っています。」

そんな言葉に首を傾げて、その場から何ら問題なく、外へ。
すると、出た先は、また真っ黒闇の中。
それから、しばらくは同じようなことが何度か起きて、しばらくするとそれすらもなくなってしまった。
真っ暗な闇の中で、何かを待ち続ける。
そんなことがあってから、ある時、真っ暗闇の一部に裂け目が生じていることに気が付いた。
そこから外に出ようと、その裂け目に手をかけ、光り輝く場所に久ぶりに出てきたという感じがした。

しかし、出た瞬間に巻き起こったもの。
それは、強烈な破壊衝動だった。

壊せ!壊せ!壊せ!すべてを壊し、闇に落とせ!
壊せ!壊せ!壊せ!すべてを殺し、光を奪え!

何も考えられずに、その破壊衝動のまま周囲を壊していく。
なぜ、そんな破壊衝動が沸き上がったのかも分からないまま。
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