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第10章 大事な記憶と魔法のお話
107 出身地
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どたばたも終わり、あったこともなかったことになり、眠らせたままでもっといい所へ送り出すことになった。記憶は、ここを出発したときに戻し、余分なものは残さない処置をした。消した記憶も今後使用するかもしれないので、一応差分だけ残してある。
前回と違い、出発に立ち会うのは、私。エリーだけ。正確には、私の中にいるお二方もいるから3人か。
黙って箱庭から打ち出される”創世の女神”が眠っている棺。今度はきちんと管理者間での意思疎通が行われているから、何の問題もない。
【しっかし、こんなに大騒ぎになるとは、思わなかったぜ】
【そうね。普通は思わないわね】
【おうさ…お父様のお友達のおかげでしょうね】
【そうだ、それだ。なんだあの龍たちは。聞いたことないぞ】
【それはそうよ。お父様とか王族以外は秘密ですから】
【秘密っていっても、あんなに堂々と姿を見せたら秘密にならないはずだ】
【それは、大丈夫。時間が経てば疑問も持たずに忘れてしまうようになっているから】
【記憶は普段でもそうだろうよ。写真とか書籍とかになら残るだろうよ】
【それもないわね。自主的に処分するだろうし、そもそも絵空事。妄想だと思うから】
【なるほどな。一応、考えられているんだな】
【お父様は、バカじゃないもの】
【お父様…か。】
【何か含みがありそうだけれど?】
【…何もないさ】
【あの子、大丈夫かしら。前回のこともあるから、今回も心配だけど】
【あの世界なら大丈夫。管理者も私の顔見知りだし】
【【顔見知り?】】
【私、あの世界の出身なの。ちょっと嫌なことがあって、困窮していた時におうさ…お父様に箱庭で救出してもらったの】
【…なぁ、この箱庭って、何らかの問題が起きた際の救出や救済のための船だよな】
【ええ、そうよ】
【そうだとするとだな。その管理者は、エリーの困窮を見て見ぬふりをしたことになるんじゃね】
【…あら、するどいわね】
【やっぱり、ろくでもない世界じゃねーか】
【その辺は大丈夫よ。救出後に、きっちり絞めておいたから。みんなで…】
【みんなって…】
【その時の王族は、おうさ…お父様とお母さま、一番上のお兄様の3人。すごかったわよ。あれは耐えられないでしょうね。ふふふ】
【【………】】
【ま、まぁ、大丈夫ならいい。ちょっと心配だっただけで…】
【そ、そうね。エリーが大丈夫って言っているのだから、心配はいらない…わよね?】
【なぜ、疑問形?】
【き、気のせいじゃないかしら…】
傍から見れば、棺を凝視したまま身動きしない人がそこにいることになるが、幸いなことに私を見ているのは、結界の維持に携わっているあの人だけ。
ただ、脳内会話が聞こえているかのように、ため息をついていたけれど。
おうさ…お父様のお友達の皆さまは、まだ近くを飛んでいて、いつここから帰るのやら。
あ、棺を追っかけていく龍がいる。あれは、赤龍?
当初はいなかった赤龍は、龍の中でも小柄で、生まれてからまだ10億年もない幼い龍。創世の女神と遊んだことがあり、その思い出を引きずっているのかもしれない。
でも、遊んでいた際の女神は、あの子ではないのだけど。他の龍たちは静観するらしい。大した能力もないと思っているのかも。
でも、龍だからね。不安要素しか感じないわ。きっと、今回も穏便には済まないような気がしてきたけれど。今から、備えておきましょう。
「お姉ちゃん、僕のこと覚えているかな。会ったら、何を話そう。」
棺は、予定通り、エリーの出身地に辿り着いた。本来であれば、現時点の指定場所から。
しかし、その場を乱したのは、並走するように飛んでいた赤龍。世界の境界結界を通る際に、龍の不可侵結界と激しく反応。周囲の空間を歪ませ、過去のある地点に、赤龍と共に墜落する結果になった。
【あれあれあれ、またこのパターンか。大丈夫って聞いたんだがなぁ~、ああ?】
【心配…。いらないの?】
【心配いらない。大丈夫、最悪。この船が迎えに来てくれるから】
【【それ、大丈夫(って言わない)か?】】
【大丈夫よ。私の妹になるんだもの】
【【え?】】
【だんだん思い出してきた。そうよ。妹と弟の双子がいたわよ】
【双子…?】
【そうよ。ふたご。そう言えば、しょっぱなから弟は妹にべったりだったわね。もしかして、赤龍かしら】
【【………不安】】
うーん。思い出してきたけれど、血の繋がりのある姉妹だったような気がしないのよね。まぁ、大丈夫でしょ。
***結界維持中(あの人)
トラブルメーカー?
エリーがトレーサーを付けるように言った理由は、これか。
前回と違い、出発に立ち会うのは、私。エリーだけ。正確には、私の中にいるお二方もいるから3人か。
黙って箱庭から打ち出される”創世の女神”が眠っている棺。今度はきちんと管理者間での意思疎通が行われているから、何の問題もない。
【しっかし、こんなに大騒ぎになるとは、思わなかったぜ】
【そうね。普通は思わないわね】
【おうさ…お父様のお友達のおかげでしょうね】
【そうだ、それだ。なんだあの龍たちは。聞いたことないぞ】
【それはそうよ。お父様とか王族以外は秘密ですから】
【秘密っていっても、あんなに堂々と姿を見せたら秘密にならないはずだ】
【それは、大丈夫。時間が経てば疑問も持たずに忘れてしまうようになっているから】
【記憶は普段でもそうだろうよ。写真とか書籍とかになら残るだろうよ】
【それもないわね。自主的に処分するだろうし、そもそも絵空事。妄想だと思うから】
【なるほどな。一応、考えられているんだな】
【お父様は、バカじゃないもの】
【お父様…か。】
【何か含みがありそうだけれど?】
【…何もないさ】
【あの子、大丈夫かしら。前回のこともあるから、今回も心配だけど】
【あの世界なら大丈夫。管理者も私の顔見知りだし】
【【顔見知り?】】
【私、あの世界の出身なの。ちょっと嫌なことがあって、困窮していた時におうさ…お父様に箱庭で救出してもらったの】
【…なぁ、この箱庭って、何らかの問題が起きた際の救出や救済のための船だよな】
【ええ、そうよ】
【そうだとするとだな。その管理者は、エリーの困窮を見て見ぬふりをしたことになるんじゃね】
【…あら、するどいわね】
【やっぱり、ろくでもない世界じゃねーか】
【その辺は大丈夫よ。救出後に、きっちり絞めておいたから。みんなで…】
【みんなって…】
【その時の王族は、おうさ…お父様とお母さま、一番上のお兄様の3人。すごかったわよ。あれは耐えられないでしょうね。ふふふ】
【【………】】
【ま、まぁ、大丈夫ならいい。ちょっと心配だっただけで…】
【そ、そうね。エリーが大丈夫って言っているのだから、心配はいらない…わよね?】
【なぜ、疑問形?】
【き、気のせいじゃないかしら…】
傍から見れば、棺を凝視したまま身動きしない人がそこにいることになるが、幸いなことに私を見ているのは、結界の維持に携わっているあの人だけ。
ただ、脳内会話が聞こえているかのように、ため息をついていたけれど。
おうさ…お父様のお友達の皆さまは、まだ近くを飛んでいて、いつここから帰るのやら。
あ、棺を追っかけていく龍がいる。あれは、赤龍?
当初はいなかった赤龍は、龍の中でも小柄で、生まれてからまだ10億年もない幼い龍。創世の女神と遊んだことがあり、その思い出を引きずっているのかもしれない。
でも、遊んでいた際の女神は、あの子ではないのだけど。他の龍たちは静観するらしい。大した能力もないと思っているのかも。
でも、龍だからね。不安要素しか感じないわ。きっと、今回も穏便には済まないような気がしてきたけれど。今から、備えておきましょう。
「お姉ちゃん、僕のこと覚えているかな。会ったら、何を話そう。」
棺は、予定通り、エリーの出身地に辿り着いた。本来であれば、現時点の指定場所から。
しかし、その場を乱したのは、並走するように飛んでいた赤龍。世界の境界結界を通る際に、龍の不可侵結界と激しく反応。周囲の空間を歪ませ、過去のある地点に、赤龍と共に墜落する結果になった。
【あれあれあれ、またこのパターンか。大丈夫って聞いたんだがなぁ~、ああ?】
【心配…。いらないの?】
【心配いらない。大丈夫、最悪。この船が迎えに来てくれるから】
【【それ、大丈夫(って言わない)か?】】
【大丈夫よ。私の妹になるんだもの】
【【え?】】
【だんだん思い出してきた。そうよ。妹と弟の双子がいたわよ】
【双子…?】
【そうよ。ふたご。そう言えば、しょっぱなから弟は妹にべったりだったわね。もしかして、赤龍かしら】
【【………不安】】
うーん。思い出してきたけれど、血の繋がりのある姉妹だったような気がしないのよね。まぁ、大丈夫でしょ。
***結界維持中(あの人)
トラブルメーカー?
エリーがトレーサーを付けるように言った理由は、これか。
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