欲望は、果てしなく…

夜空のかけら

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 公爵令嬢が眠っている。
 魔法師が眠らせたのだが、早く退治してほしいという希望を受けてのことだった。
 しかし、魔法師は公爵令嬢を眠らせると、いずこともなく姿を消した。

 魔法師にお付きの者が、

「眠らせたのは早く退治をするためだが、深層意識に働きかけて元からその幽霊を絶つためで、しばらく眠らせないと難しい」

と説明したためだった。

 公爵令嬢は、その後、何日も眠り続けた。
 不審に思った公爵は、王立学校長に苦情を入れたところ、思わぬ答えが返ってきた。

「幽霊は退治済み」

 だと言うのだ。

「眠り続けているのは、別の要因でそれは魔法師とは関係がないから、責任もない。言いかがりは、止めてくれ」
「なら、魔法師、あの時の魔法師を出してくれ、直々に聞きたい」
「その者なら、退治後に亡くなったぞ」

 その言葉に、わずかに呆然となったが、

「死因は何だ」
「長時間睡眠による衰弱死だ…今の公爵令嬢と似ているな」
「…呪い」
「ふむ、そう言う可能性もあるが、呪いを解くのは難しいな。術者が死んでいるからな」
「なっ…」

「そうそう、あの魔法師は、昔侯爵令嬢の家庭教師をしていた者だ。顔を見せたくないという理由で、フードを深く被っていたが」
「逆恨みなのか」
「そういったことは、本人が死んでいる以上分からない。ただ、追放されたはずの侯爵は生きているはずだ。あくまでも追放であって処刑ではないからな」
「すると、あの子は何を見たのだ?」
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