上 下
19 / 28
主要団員選抜団体戦

総当たり戦―前編

しおりを挟む
 「試合始め!」

 試合だからって、刃を潰したりなんかしない。致命傷を与えたら失格だけど。それ以外は本気でやらなきゃ選抜の意味がない。士気をあげるように雄叫びがあがり、それぞれが自分のチームを勝てるように上手く連携しようとしたり、バラバラに散らばり切り結んだりしている。

 案の定、一部に集中して袋叩きしているだけのどうしようもない数の勝負になっていますね。

 これでは、チームの連帯感はあまり期待できませんよ。一時的に同じ標的がいるっていうだけで、協力しているって自覚はないですね。

「なんか俺たちを無視した私怨の戦いだなぁ、これは」

「泣きながら戦っているのが多いね」

「そんなに嫌なのかな訓練」

「私は好きだなー訓練、たのしいよー?」

 四人は座り込みながら観戦と雑談を始めてしまいました。ここは戦場なのに、気を抜きすぎな気がします。でも、確かに無視されているようでなんだか、腹が立ってきました。

「みんな? 私が突っ込みます。戦場を荒らしましょう」

 みんなの返答は耳に入ってこない。ただ、戦場を走る風になったように駆け出した。みんななら上手くフォローしてくれる。そんな信頼が私には感じられる。一週間の時間、お互いの信頼は確かに絆となりここにあるはずだから。

「うわぁー!! 団長が攻めてきたぞ!? 散れ! 散れ!」

 戦場の空気を変えるために鬼になったつもりで駆けて、次々、手加減をしながら動けないように微妙なさじ加減で転がします。気功で体内の気を練りあげて技量の数値に任せて、足腰を狙います。体術ですね、アイカさんが教えてくれたので技能に増えています。

「負けるなー?! 引くなー! 数で攻めろー! ヒィ」

 指揮をとる団員を中心に攻め落としていくのが、定石ってやつですよ。なんだか、楽しいですね。なんで、イオリたちは私を引きこもりにさせたのでしょうか? 戦えましたよ私でも。まぁ、最初は動く体に戸惑いましたけど。最初がいけなかったのでしょうか?

 さあ、これで指揮は崩れました。ここからどう動くか団員に期待しましょう。

「ま、負けました! 投降します」

 あら? 張り合いがありません。やはり、今のまま鍛えていてはすぐに負け根性が染み付いてしまいそうです。訓練の見直しですね!

「ありゃー、狩猟団の力を見せると言うより団長の異常さがめだっちゃうね」

 ナタシャが言う通りです。ん? 私が異常なの? こんなのソルジャーたちに、比べれば普通ですよ?

 大魔術もありませんし。ね? あれ?

 なぜか観衆が引いています。なんでこうなったのでしょうか?
しおりを挟む

処理中です...