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まだざまぁにたどり着きませんでした。
「お母様、アシュレッド様では、私と殿下を会わせる事も出来ないの。殿下の側近の一人のくせに無能だわ。どうしましょう?フローラを襲う事も出来なさそうだし。」
お母様は真剣な表情で何かを考えているようだ。
「ねぇ、キャサリーン、貴女そんなに殿下が好きなの?」
「え?いいえ。ただ、フローラよりもわたくしの方が王太子妃には相応しいはずですもの。フローラの臣下なんて真っ平です。」
私は単にフローラより下である事が嫌だった。
まるで私の方が劣っているようではないか。
「この際、公爵夫人でいいのではなくて?アシュレッド様ならば貴女にベタ惚れでしょ?」
「嫌よ。あんな愚図な男!」
「いいからお聞きなさいな。」
お母様は護衛の男に聞こえないよう声を潜めた。
「公爵夫人ともなれば、今よりもフローラにも殿下にも会うチャンスが生まれます。」
チャンスーーー
………もしかしてっ、
お母様が何を言いたいのかに気付いてお母様の顔を見る。
お母様は自信ありげに笑みを深め頷いてみせた。
★
お母様の話を聞いて数日間考えた。王太子妃に拘っていたけれど、公爵夫人の方が楽ではないか。
それにフローラを排除出来れば、この胸に溜まった鬱憤を晴らせる。
「お母様。わたくしアシュレッド様と結婚するわ。」
そう報告すれば、お母様は満足げに微笑んだ。
「そうなさい。あら?彼は結婚してたかしら?」
「大丈夫よ。アシュレッドは私に夢中だもの。結婚するって言えば喜ぶわ。感動して泣くかもしれないわね。確か結婚相手は大したことない令嬢でしたもの。」
「そう。貴女の気持ちが決まったのならアシュレッド様に会いに行きましょう。折角だから新しいドレスでも購入したら。」
「そうしようかしら?」
「お嬢様ならどんなドレスでもお似合いですわ。いっそ、アシュレッド様のお色にしては?」
コリーはイキイキと私の支度を整えてくれた。
鏡に映った自分を見る。
ーーーーー完璧。
キルケー公爵家に訪問して、アシュレッド様の奥様に会った。
さして美しくも無い凡庸な顔立ち。
身体もぽっちゃりしていて、正直みっともない。よくあんな外見で公爵夫人が務まると思ったものだ。
自分と私を比べて落ち込む彼女を見ていると、胸がスッとした。
本来、私と同じ部屋で話をするのも烏滸がましいのだ。
ブサイ伯爵令息の件で学んだ私は、彼女の外見への軽蔑を表情に出すことは無い。
私の代わりにコリーが彼女を侮辱する言葉を投げつける。
けれど使用人達が彼女を庇うのが忌々しい。
本来の仕えるべき人間を分かっていないのだ。
「あの使用人達の態度は問題だわ。」
帰宅後、お母様とコリーと一緒に公爵家の使用人の処遇について相談した。
「酷い使用人達でしたわ。全員くびです。退職金も払わずに追い出しましょう!」
「大丈夫かしら?」
「アシュレッド様ならお嬢様のする事に文句を言う事はありませんわ。」
「そうなさいな。あんな無礼な使用人、全員即刻解雇でいいでしょう。」
二人共、公爵家の使用人達にはかなり腹が立ったらしい。
私たちはアシュレッド様との結婚式のドレスや会場について話し合っていた。
そして2回目の訪問でもアシュレッド様には会えなかった。
あの執事のせいに違いない!
クビだ、クビだ、クビだ、腹が立つ!
とうとう借金の取り立て人が来て、私たちは急いで公爵家を訪れた。
アシュレッド様となかなか会えない事に苛立つ。
彼が私と会えば直ぐに解決する問題だ。
私が来たと知ったら彼は即刻この醜い女を捨てるだろう。
そしてーーーー
とうとう彼が帰って来た。
「お帰りなさいませ。アシュレッド様。」
満面の笑みで彼に駆け寄る。
けれど、想像の彼とは違う冷たい視線を私に向けた。その冷たさは身体の芯から凍えるよう。
一瞬怯んだ。
けれど、この視線の意味に気付いて直ぐに表情を取り繕う。この視線は私に向けたものでは無い。
彼は使用人達に怒っているのだろう。私たちを蔑ろにしたから。
私は潤んだ目で彼を見上げ、彼の袖を掴み涙を流してみせた。
ーーーその時
信じられない事に、彼が私の手を振り払った。
はぁ?
何様のつもり?
怒りを抑え、弱々しく彼を見上げる。
ーーそれでも、彼は冷たく蔑んだ目で私をみている。アシュレッド様のあんな表情……見た事が無い。
私が泣き崩れても抱き起こす事もせず、醜い妻の元へ歩み寄った。
はぁ?
この美しい私より、その醜い女を取るつもり?
その溺愛ぶりを見せつけるかのように
妻を抱き寄せる彼への怒りで、頭に血が逆流するのを感じた。
怒りで手が震える。
え?私の事を気持ち悪いって言った?
ーーー信じられない。
けれど、私に待っていた悪夢はそれだけでは終わらなかった。
その後起こった事は地獄のようで、とても現実とは思えなかった。
「お母様、アシュレッド様では、私と殿下を会わせる事も出来ないの。殿下の側近の一人のくせに無能だわ。どうしましょう?フローラを襲う事も出来なさそうだし。」
お母様は真剣な表情で何かを考えているようだ。
「ねぇ、キャサリーン、貴女そんなに殿下が好きなの?」
「え?いいえ。ただ、フローラよりもわたくしの方が王太子妃には相応しいはずですもの。フローラの臣下なんて真っ平です。」
私は単にフローラより下である事が嫌だった。
まるで私の方が劣っているようではないか。
「この際、公爵夫人でいいのではなくて?アシュレッド様ならば貴女にベタ惚れでしょ?」
「嫌よ。あんな愚図な男!」
「いいからお聞きなさいな。」
お母様は護衛の男に聞こえないよう声を潜めた。
「公爵夫人ともなれば、今よりもフローラにも殿下にも会うチャンスが生まれます。」
チャンスーーー
………もしかしてっ、
お母様が何を言いたいのかに気付いてお母様の顔を見る。
お母様は自信ありげに笑みを深め頷いてみせた。
★
お母様の話を聞いて数日間考えた。王太子妃に拘っていたけれど、公爵夫人の方が楽ではないか。
それにフローラを排除出来れば、この胸に溜まった鬱憤を晴らせる。
「お母様。わたくしアシュレッド様と結婚するわ。」
そう報告すれば、お母様は満足げに微笑んだ。
「そうなさい。あら?彼は結婚してたかしら?」
「大丈夫よ。アシュレッドは私に夢中だもの。結婚するって言えば喜ぶわ。感動して泣くかもしれないわね。確か結婚相手は大したことない令嬢でしたもの。」
「そう。貴女の気持ちが決まったのならアシュレッド様に会いに行きましょう。折角だから新しいドレスでも購入したら。」
「そうしようかしら?」
「お嬢様ならどんなドレスでもお似合いですわ。いっそ、アシュレッド様のお色にしては?」
コリーはイキイキと私の支度を整えてくれた。
鏡に映った自分を見る。
ーーーーー完璧。
キルケー公爵家に訪問して、アシュレッド様の奥様に会った。
さして美しくも無い凡庸な顔立ち。
身体もぽっちゃりしていて、正直みっともない。よくあんな外見で公爵夫人が務まると思ったものだ。
自分と私を比べて落ち込む彼女を見ていると、胸がスッとした。
本来、私と同じ部屋で話をするのも烏滸がましいのだ。
ブサイ伯爵令息の件で学んだ私は、彼女の外見への軽蔑を表情に出すことは無い。
私の代わりにコリーが彼女を侮辱する言葉を投げつける。
けれど使用人達が彼女を庇うのが忌々しい。
本来の仕えるべき人間を分かっていないのだ。
「あの使用人達の態度は問題だわ。」
帰宅後、お母様とコリーと一緒に公爵家の使用人の処遇について相談した。
「酷い使用人達でしたわ。全員くびです。退職金も払わずに追い出しましょう!」
「大丈夫かしら?」
「アシュレッド様ならお嬢様のする事に文句を言う事はありませんわ。」
「そうなさいな。あんな無礼な使用人、全員即刻解雇でいいでしょう。」
二人共、公爵家の使用人達にはかなり腹が立ったらしい。
私たちはアシュレッド様との結婚式のドレスや会場について話し合っていた。
そして2回目の訪問でもアシュレッド様には会えなかった。
あの執事のせいに違いない!
クビだ、クビだ、クビだ、腹が立つ!
とうとう借金の取り立て人が来て、私たちは急いで公爵家を訪れた。
アシュレッド様となかなか会えない事に苛立つ。
彼が私と会えば直ぐに解決する問題だ。
私が来たと知ったら彼は即刻この醜い女を捨てるだろう。
そしてーーーー
とうとう彼が帰って来た。
「お帰りなさいませ。アシュレッド様。」
満面の笑みで彼に駆け寄る。
けれど、想像の彼とは違う冷たい視線を私に向けた。その冷たさは身体の芯から凍えるよう。
一瞬怯んだ。
けれど、この視線の意味に気付いて直ぐに表情を取り繕う。この視線は私に向けたものでは無い。
彼は使用人達に怒っているのだろう。私たちを蔑ろにしたから。
私は潤んだ目で彼を見上げ、彼の袖を掴み涙を流してみせた。
ーーーその時
信じられない事に、彼が私の手を振り払った。
はぁ?
何様のつもり?
怒りを抑え、弱々しく彼を見上げる。
ーーそれでも、彼は冷たく蔑んだ目で私をみている。アシュレッド様のあんな表情……見た事が無い。
私が泣き崩れても抱き起こす事もせず、醜い妻の元へ歩み寄った。
はぁ?
この美しい私より、その醜い女を取るつもり?
その溺愛ぶりを見せつけるかのように
妻を抱き寄せる彼への怒りで、頭に血が逆流するのを感じた。
怒りで手が震える。
え?私の事を気持ち悪いって言った?
ーーー信じられない。
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