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サーフィス様の変化
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レーモント公爵婦人のお茶会の後、サーフィス様に誘われて観劇に行った。
今話題となっている舞台は妹が姉の婚約者を奪うというストーリーで、私達が見に行くには少々気まずい。
サーフィス様は、まだあまり人気の無い若手の役者が多く所属する劇団の舞台を予約してくれていた。
その舞台は貴族や裕福な商人が行くような有名な舞台とは違って、衣裳も舞台設備も派手さや豪華さは無かった。
けれども皆が一生懸命に芝居に取り組んでるのが伝わったし、粗削りながらもストーリーもなかなか面白かった。
「あー、楽しかったわ。サーフィス様、ありがとうございました。素敵な観劇に連れてきていただいて。」
「そう?楽しめたなら良かった。」
私達は観劇の後、カフェに入って少し休みながら、お互いの舞台の感想を話し合っていた。
「以前、ミアさんにネリング王国の事を教えて貰ってから色々と調べたんだ。それでね、」
彼は、好きな事を話す時の高揚感を抑えるようにわざと言葉を区切った。
「この国の芸術を豊かに発展させるため、僕に出来ることを考えたんだ。」
「芸術を発展させる?」
彼がそんな事を考えていたなんて………。
「そう、今まで僕は絵を描いたりピアノを弾くことに夢中になってたけど、本当は絵を見たり、楽団の演奏を聞く方が好きなんだ。けれどもこの国は他国と違って芸術家と呼ばれる人が少ないから………。」
サーフィス様はそっと目を伏せた。
確かにこの国の民は富裕層以外は芸術を楽しむ余裕なんて少ないだろう。
「そうだったんですね。」
「ネリング王国は300年も戦争がない時代が続いて、優れた建造物も芸術品も残ってる。」
「300年も………。」
「僕ね、父の手伝いをする事にしたよ。施政者によっては国も芸術も壊される。それは嫌なんだ。」
サーフィス様は伏せていた視線を私に戻して姿勢を正した。
「改めて、ありがとうミアさん。僕がそれに気付いたのはギリギリのタイミングだった。今から猛勉強して王宮への出仕を目指すよ。」
前回の人生で、ネリング王国の事を話す悔しそうな表情。あれは、そういう意味だったのかもしれない、そう思った。
第二王子派は領土拡大推進派で、戦争とは無関係とはならないだろう。
一方の第一王子は穏健派で戦争を避けたいと考えている。
現在の国王陛下自体は穏健派に近い考えを持っているが後継者争いについては様子を見ているらしい。
王位を継ぐには一人では出来ない。どれだけ貴族の協力を得られるか、双方の力量を見極める構えだ。
私は目標が出来た時の彼の凄さを知っている。
ピアノの楽譜をあっという間に覚えたり、薔薇の品種改良をしたり、彼の才能は底知れないとよく思っていた。
私はサーフィス様の目を見る。
サーフィス様が少しでも自信を持てるように。
「私はサーフィス様の凄さを信じています。サーフィス様の志が高ければこの国の未来はきっと明るいです。私も出来ることを手伝います。」
サーフィス様は少し申し訳なさそうに眉をさげる。
「僕が王宮に出仕したら間違いなく政争に巻き込まれるし、ミアさんも無関係ではいられない。女性には女性の戦いがある。母は必ずミアさんの力になってくれるから………。」
「大丈夫です。」
そっとサーフィス様の手を取る。
「知らないまま陥れられることもあります。私は何も知らないままでいる事の方が怖いです。」
サーフィス様は公爵家の令息として生まれた、そして私はその婚約者だ。
やはり逃げていてはいけなかったのだと思う。
今話題となっている舞台は妹が姉の婚約者を奪うというストーリーで、私達が見に行くには少々気まずい。
サーフィス様は、まだあまり人気の無い若手の役者が多く所属する劇団の舞台を予約してくれていた。
その舞台は貴族や裕福な商人が行くような有名な舞台とは違って、衣裳も舞台設備も派手さや豪華さは無かった。
けれども皆が一生懸命に芝居に取り組んでるのが伝わったし、粗削りながらもストーリーもなかなか面白かった。
「あー、楽しかったわ。サーフィス様、ありがとうございました。素敵な観劇に連れてきていただいて。」
「そう?楽しめたなら良かった。」
私達は観劇の後、カフェに入って少し休みながら、お互いの舞台の感想を話し合っていた。
「以前、ミアさんにネリング王国の事を教えて貰ってから色々と調べたんだ。それでね、」
彼は、好きな事を話す時の高揚感を抑えるようにわざと言葉を区切った。
「この国の芸術を豊かに発展させるため、僕に出来ることを考えたんだ。」
「芸術を発展させる?」
彼がそんな事を考えていたなんて………。
「そう、今まで僕は絵を描いたりピアノを弾くことに夢中になってたけど、本当は絵を見たり、楽団の演奏を聞く方が好きなんだ。けれどもこの国は他国と違って芸術家と呼ばれる人が少ないから………。」
サーフィス様はそっと目を伏せた。
確かにこの国の民は富裕層以外は芸術を楽しむ余裕なんて少ないだろう。
「そうだったんですね。」
「ネリング王国は300年も戦争がない時代が続いて、優れた建造物も芸術品も残ってる。」
「300年も………。」
「僕ね、父の手伝いをする事にしたよ。施政者によっては国も芸術も壊される。それは嫌なんだ。」
サーフィス様は伏せていた視線を私に戻して姿勢を正した。
「改めて、ありがとうミアさん。僕がそれに気付いたのはギリギリのタイミングだった。今から猛勉強して王宮への出仕を目指すよ。」
前回の人生で、ネリング王国の事を話す悔しそうな表情。あれは、そういう意味だったのかもしれない、そう思った。
第二王子派は領土拡大推進派で、戦争とは無関係とはならないだろう。
一方の第一王子は穏健派で戦争を避けたいと考えている。
現在の国王陛下自体は穏健派に近い考えを持っているが後継者争いについては様子を見ているらしい。
王位を継ぐには一人では出来ない。どれだけ貴族の協力を得られるか、双方の力量を見極める構えだ。
私は目標が出来た時の彼の凄さを知っている。
ピアノの楽譜をあっという間に覚えたり、薔薇の品種改良をしたり、彼の才能は底知れないとよく思っていた。
私はサーフィス様の目を見る。
サーフィス様が少しでも自信を持てるように。
「私はサーフィス様の凄さを信じています。サーフィス様の志が高ければこの国の未来はきっと明るいです。私も出来ることを手伝います。」
サーフィス様は少し申し訳なさそうに眉をさげる。
「僕が王宮に出仕したら間違いなく政争に巻き込まれるし、ミアさんも無関係ではいられない。女性には女性の戦いがある。母は必ずミアさんの力になってくれるから………。」
「大丈夫です。」
そっとサーフィス様の手を取る。
「知らないまま陥れられることもあります。私は何も知らないままでいる事の方が怖いです。」
サーフィス様は公爵家の令息として生まれた、そして私はその婚約者だ。
やはり逃げていてはいけなかったのだと思う。
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