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1.転生したみたい
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私はヴァネッサ・アイオロス。
アイオロス公爵家の長女だ。
そしてオースティン・エンデュミオン、我がクレイオ王国の第1王子の婚約者でもある。
私には前世というか、別の国で別の人生を歩んでいた記憶がある。
その国は日本。ここよりもっと文明の進んだ国だった。細かいことは覚えていないが、この国のような身分制度は無かったような気がする。
私は幼い頃からお妃教育を受け、この国の王妃となるべく努力してきた。
遊ぶ時間なんて無い。だけど、これはこの地位に生まれついた自らの役目。
そう思って我慢した。
婚約者といっても政略的なものだし、幼い頃の私たちはほとんど会うことは無かった。
けれど、10歳の時に王妃様主催のお茶会でオースティン殿下を見た時、私はショックを受けた。
ガチャガチャと茶器の音を立てる耳障りなマナー。身体はだらしなくでっぷりと太り、ドスドス仰け反って歩く姿はお相撲さん。
(えっ!これが未来の私の旦那さま……?)
私は心のどこかで、王子様はカッコいいと思い込んでいた。洗練された仕草。心を鷲掴みにするような魅惑的な微笑み。
そんな王子様を夢見ていた私の心は、この瞬間粉々に崩れ落ちた。
勝手に理想を押し付けて申し訳ないと思う。
だ、だけどっ!!
お妃教育って何の自由も無いの!!
努力の結果がこんなコデブ猫背王子なんて嫌よ!!
家庭教師の皆様!
私にはお茶を飲むときのほんの少しの物音も許さないのに、オースティン殿下には甘く無いですか?
「アンジェ(オースティンの姉・王女)はしっかりしていたけど、オースティンは弟気質なのね。だけど男の子って可愛くて厳しく怒れないのよ!」
オホホと王妃様が笑うと、私の母も大きく頷いた。
「分かりますわぁ。私もダニエル(私の弟)には少し甘くなってしまいますもの。」
やっぱりね。お母様ダニエルには優しいものね。私には『未来の王妃がそんなことで弱音を吐くなんて!』って厳しいクセに……。
私は前世の記憶があるからグレないけれど、本当だったら姉弟で差を付けるとショックだからね?
そんな私の気も知らず、旧知の仲である王妃様とお母様はニコニコしながらのんびりとお茶を飲んでいた。
☆
二人ののんびりした会話を聞きながら、殿下との会話をどう切り出そうか考えていたとき、カサと葉が擦れる音が聞こえた。
王妃様の背後の植木が僅かに揺れ、茂みからキラリと何かが光るのが見える。
ナイフだ!
刃物が見えた瞬間身体が動いた。
「危ないっ!!」
王妃様を庇うように前に飛び出した直後、肩に衝撃が走る。
「「「ヴァネッサ!!」」」
肩に強烈な痛みを感じて自分が刺された事に気がついた。
「闖入者だっ!!追えーーーーっっ!!」
ジンジンと脳に響く痛み。そして何故か身体が急に熱くなって息が苦しい。
オースティン殿下が真っ青な顔で私を覗き込んでいる。10歳の子供には衝撃的な光景なのだろう。
「わたくしは大丈夫です。王妃さまを早く避難させてくださいませ。」
殿下を安心させるよう微笑んで見せた。
地面に倒れた私を抱きかかえてお母様が泣いている。声がひどく遠い……。
これはVRゲームの世界じゃ無いんだ……。
前世バトルゲームをよくしていたことを意識が途切れる寸前に思い出していた。
アイオロス公爵家の長女だ。
そしてオースティン・エンデュミオン、我がクレイオ王国の第1王子の婚約者でもある。
私には前世というか、別の国で別の人生を歩んでいた記憶がある。
その国は日本。ここよりもっと文明の進んだ国だった。細かいことは覚えていないが、この国のような身分制度は無かったような気がする。
私は幼い頃からお妃教育を受け、この国の王妃となるべく努力してきた。
遊ぶ時間なんて無い。だけど、これはこの地位に生まれついた自らの役目。
そう思って我慢した。
婚約者といっても政略的なものだし、幼い頃の私たちはほとんど会うことは無かった。
けれど、10歳の時に王妃様主催のお茶会でオースティン殿下を見た時、私はショックを受けた。
ガチャガチャと茶器の音を立てる耳障りなマナー。身体はだらしなくでっぷりと太り、ドスドス仰け反って歩く姿はお相撲さん。
(えっ!これが未来の私の旦那さま……?)
私は心のどこかで、王子様はカッコいいと思い込んでいた。洗練された仕草。心を鷲掴みにするような魅惑的な微笑み。
そんな王子様を夢見ていた私の心は、この瞬間粉々に崩れ落ちた。
勝手に理想を押し付けて申し訳ないと思う。
だ、だけどっ!!
お妃教育って何の自由も無いの!!
努力の結果がこんなコデブ猫背王子なんて嫌よ!!
家庭教師の皆様!
私にはお茶を飲むときのほんの少しの物音も許さないのに、オースティン殿下には甘く無いですか?
「アンジェ(オースティンの姉・王女)はしっかりしていたけど、オースティンは弟気質なのね。だけど男の子って可愛くて厳しく怒れないのよ!」
オホホと王妃様が笑うと、私の母も大きく頷いた。
「分かりますわぁ。私もダニエル(私の弟)には少し甘くなってしまいますもの。」
やっぱりね。お母様ダニエルには優しいものね。私には『未来の王妃がそんなことで弱音を吐くなんて!』って厳しいクセに……。
私は前世の記憶があるからグレないけれど、本当だったら姉弟で差を付けるとショックだからね?
そんな私の気も知らず、旧知の仲である王妃様とお母様はニコニコしながらのんびりとお茶を飲んでいた。
☆
二人ののんびりした会話を聞きながら、殿下との会話をどう切り出そうか考えていたとき、カサと葉が擦れる音が聞こえた。
王妃様の背後の植木が僅かに揺れ、茂みからキラリと何かが光るのが見える。
ナイフだ!
刃物が見えた瞬間身体が動いた。
「危ないっ!!」
王妃様を庇うように前に飛び出した直後、肩に衝撃が走る。
「「「ヴァネッサ!!」」」
肩に強烈な痛みを感じて自分が刺された事に気がついた。
「闖入者だっ!!追えーーーーっっ!!」
ジンジンと脳に響く痛み。そして何故か身体が急に熱くなって息が苦しい。
オースティン殿下が真っ青な顔で私を覗き込んでいる。10歳の子供には衝撃的な光景なのだろう。
「わたくしは大丈夫です。王妃さまを早く避難させてくださいませ。」
殿下を安心させるよう微笑んで見せた。
地面に倒れた私を抱きかかえてお母様が泣いている。声がひどく遠い……。
これはVRゲームの世界じゃ無いんだ……。
前世バトルゲームをよくしていたことを意識が途切れる寸前に思い出していた。
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