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6.ウィルフレッド殿下視点
しおりを挟む僕は未来の国王として厳しく育てられてきた。王族として恥ずかしくないマナーを身につけ、家庭教師から出された課題を真面目にこなし、身体もきちんと鍛えてきた。
なのに、聖オーロラ学園への入学が僕の人生を狂わせた。
あの学園で出逢ったアリアに、僕は一目で心を奪われたんだ。 どうしてか分からない。とても愚かだったと思う。
今では、彼女のどこに魅力を感じたのか、何をそれほど好きになったのか思い出せないくらいだった。
「アリア、君と私とはきっと運命だったんだ。立場上、君を正室に迎えることは出来ないが、私の心は君のものだ。アリアだけに真実の愛を誓うよ。」
王族である僕の言葉は重い。何度後悔したか分からない。
僕はレイラーニとの結婚前に、アリアに言ったこの言葉の責任をとって彼女を側室に迎えた。
僕のこの言葉を信じて待っていたアリアは貴族令嬢としての婚期を逃してしまったし、レイラーニからも側室を推す声があったから……。
僕はすでに、彼女への恋愛感情は冷めていたことには気がついていた。
けれどーーーー
「ウィルさま?」
「……ああ、すまない……。」
彼女と過ごす初めての夜。僕のソコは反応しなかった。
身体は正直だとも思う。どうにか誤魔化しながら自分でソコを刺激して、漸く少し芯を持たせることが出来たが、彼女に触れた途端に萎えてしまった。
「す、すまない。」
男としてこれほど情けないことはない。彼女にも恥をかかせたと思う。
「謝らないでください。よけいに惨めになります。」
気まずい空気。
「き、きっと積年の思いが強すぎて緊張しているのだろう。」
けれど、何回チャレンジしても僕のソコはアリアに反応してくれなかった。
まさか、身体が反応しないほどだとは思わなかった。
~~~~
初めは不安そうにしていたアリアだったが、僕が不能だと知ると徐々に態度が変わっていった。
イライラして、侍女や護衛に当たり散らすようになり、僕はアリアの本当の姿に気がついた。日中執務の間でも、アリアが手をつけられないほど騒ぐと、僕が呼び出される。
これは後宮の主であるレイラーニの指示だ。
アリアは侍女に虐められたと嘘をつくことがあるため、対処が難しければ僕を呼び出すことになっているそうだ。
僕の生活がアリアにじわりじわりと侵食されていく。
彼女にはもう恐怖しかない。学園時代、彼女に感じた感情は『真実の愛』ではなかったらしい。
けれど、側室として迎えたからには彼女を放置するわけにもいかず、僕達は共寝を続けた。
自分が隣に眠っているのにも関わらず、身体に触れようとしない僕の態度のせいで、アリアのプライドはズタズタだった。
アリアは僕と常に一緒に居たがった。僕が公務で長時間離れると、侍女たちに物を投げつける。そして、隣国の皇太子の歓迎晩餐会の前日、とうとう怒りに任せて侍女に蝋燭を投げつけた。
その侍女は咄嗟に避けたがスカート部分に火が燃え移り、足に火傷を負った。
侍女にそんな仕打ちをしておいてもアリアは反省の色を見せない。
「私は悪くないんだから。意地悪して私の言うことを聞かないあの子が悪いのよ!」
などと言って悪びれる様子もなく、謝罪の言葉も無かった。
アリアを叱ったら、泣き叫んで僕を詰る。
「ウィル様が悪いんです。私を一人にするからっ!!私を何よりも優先してください。そうじゃなきゃ私……何をするか分かりませんっ。」
あからさまな脅迫の言葉……。
それから何よりもアリアを優先した。
アリアが今度は何をするかを恐れて、不能な僕は身体を小さく丸めて隣に寝ることしか出来ない……。
~~~~
「ん?」
僕が眠りについた頃、身体に重みを感じて目を覚ますと、布地の少ない下着姿のアリアが僕の上に乗っかっていた。
「何を……。」
薄暗い部屋の中、彼女の目は血走っていて、真っ赤な唇はゆっくりと弧を描いた。
「……!!」
下半身がすーすーすることに気がついて目をやればズボンが膝の辺りまで下ろされていた。
重い身体を起こしてズリズリと後退ると、アリアもゆっくりと近づいてくる。笑顔のようでいて、目が全く笑っていない。
真っ白な肌と口紅の鮮烈な赤。彼女が無言のまま、ただ笑って身体をすり寄せることに恐怖を感じた。
「ア、アリア、君は慣れない環境で疲れているんだろうっ。ゆ、ゆっくりと休んでくれ。わ、私は執務室のソファーで眠るよ。」
怖くて、怖くて……。
とても一緒には眠れなかった。
僕は急いでベッドから降りて、ズボンを上げると枕を掴んで寝室を出て行った。
中庭に設置されている灯篭の灯りだけが後宮の廊下を照らしていた。
僕はその中を枕を抱えて歩く。
執務室にあるソファーで眠ろうと思っていたが、中庭を見ていたら、昼間サミュエルと遊んだことを思い出した。
高い体温、汗ばんだ手。草花と太陽の交じったような子供特有の匂い。
レイラーニと子供たちは一緒に眠っているはずだった。僕は家族のはずなのに、そこには入れて貰えない。
「レイラーニは、部屋に入れてはくれないだろうな……。」
胸が掻き毟られような焦燥感に襲われて、レイラーニの寝室の扉を叩いた。
無理だと分かってはいた。
けれど、どうしようもなく焦がれて……。向かわずにはいられなかった。
彼女は子供の父親としては僕を尊重してくれるけど、もう僕を男としては見てくれていない。
悲しいけれど、浮気した僕の現実だった。
学園時代にはアリアとのキスだって見られてしまっている。僕を嫌悪するのは当然だと思う。
今もこうして彼女の好意に甘えてアリアを側室に迎えてしまっているのだから……。
でも……。
結局、僕はレイラーニの寝室には入れてもらえなくて、執務室のソファーで眠った。
そして翌日、アリアは今度は紫の小瓶を持って、僕ににじり寄ってきた。
「ふふふ。ウィル様ぁ、このお薬試してみませんかー?」
首を傾げて上目遣いで僕を見る。甘えた口調なのに逆らえないほどの強制力のある響き。僕はアリアの目の奥の光が怖くて……。
僕は再び寝室から逃げ出した。
そんな日々を送るうちに僕の身体は本当に不能になったらしい。今では自慰すら出来ない……。
ーーーー
※レイラーニ視点では笑える殿下ですが、本人視点だとこんなに真剣に困っているって所を強調したくて、本編とは違う雰囲気になってしまいました<(_ _*)>
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