浮気した婚約者を許して政略結婚いたします。

文字の大きさ
6 / 16

6.ウィルフレッド殿下視点

しおりを挟む

 僕は未来の国王として厳しく育てられてきた。王族として恥ずかしくないマナーを身につけ、家庭教師から出された課題を真面目にこなし、身体もきちんと鍛えてきた。

 なのに、聖オーロラ学園への入学が僕の人生を狂わせた。
 あの学園で出逢ったアリアに、僕は一目で心を奪われたんだ。 どうしてか分からない。とても愚かだったと思う。
 今では、彼女のどこに魅力を感じたのか、何をそれほど好きになったのか思い出せないくらいだった。

「アリア、君と私とはきっと運命だったんだ。立場上、君を正室に迎えることは出来ないが、私の心は君のものだ。アリアだけに真実の愛を誓うよ。」

 王族である僕の言葉は重い。何度後悔したか分からない。
 僕はレイラーニとの結婚前に、アリアに言ったこの言葉の責任をとって彼女を側室に迎えた。
 
 僕のこの言葉を信じて待っていたアリアは貴族令嬢としての婚期を逃してしまったし、レイラーニからも側室を推す声があったから……。
 僕はすでに、彼女への恋愛感情は冷めていたことには気がついていた。


 けれどーーーー


「ウィルさま?」

「……ああ、すまない……。」

 彼女と過ごす初めての夜。僕のソコは反応しなかった。

 身体は正直だとも思う。どうにか誤魔化しながら自分でソコを刺激して、漸く少し芯を持たせることが出来たが、彼女に触れた途端に萎えてしまった。

「す、すまない。」

 男としてこれほど情けないことはない。彼女にも恥をかかせたと思う。

「謝らないでください。よけいに惨めになります。」

 気まずい空気。

「き、きっと積年の思いが強すぎて緊張しているのだろう。」

 けれど、何回チャレンジしても僕のソコはアリアに反応してくれなかった。

 まさか、身体が反応しないほどだとは思わなかった。


~~~~


 初めは不安そうにしていたアリアだったが、僕が不能だと知ると徐々に態度が変わっていった。

 イライラして、侍女や護衛に当たり散らすようになり、僕はアリアの本当の姿に気がついた。日中執務の間でも、アリアが手をつけられないほど騒ぐと、僕が呼び出される。

 これは後宮の主であるレイラーニの指示だ。

 アリアは侍女に虐められたと嘘をつくことがあるため、対処が難しければ僕を呼び出すことになっているそうだ。

 僕の生活がアリアにじわりじわりと侵食されていく。
 彼女にはもう恐怖しかない。学園時代、彼女に感じた感情は『真実の愛』ではなかったらしい。

 けれど、側室として迎えたからには彼女を放置するわけにもいかず、僕達は共寝を続けた。
 自分が隣に眠っているのにも関わらず、身体に触れようとしない僕の態度のせいで、アリアのプライドはズタズタだった。

 アリアは僕と常に一緒に居たがった。僕が公務で長時間離れると、侍女たちに物を投げつける。そして、隣国の皇太子の歓迎晩餐会の前日、とうとう怒りに任せて侍女に蝋燭を投げつけた。

 その侍女は咄嗟に避けたがスカート部分に火が燃え移り、足に火傷を負った。
 侍女にそんな仕打ちをしておいてもアリアは反省の色を見せない。
「私は悪くないんだから。意地悪して私の言うことを聞かないあの子が悪いのよ!」
 などと言って悪びれる様子もなく、謝罪の言葉も無かった。

 アリアを叱ったら、泣き叫んで僕を詰る。

「ウィル様が悪いんです。私を一人にするからっ!!私を何よりも優先してください。そうじゃなきゃ私……何をするか分かりませんっ。」
 あからさまな脅迫の言葉……。
 それから何よりもアリアを優先した。

 アリアが今度は何をするかを恐れて、不能な僕は身体を小さく丸めて隣に寝ることしか出来ない……。



~~~~



「ん?」

 僕が眠りについた頃、身体に重みを感じて目を覚ますと、布地の少ない下着姿のアリアが僕の上に乗っかっていた。

「何を……。」

 薄暗い部屋の中、彼女の目は血走っていて、真っ赤な唇はゆっくりと弧を描いた。

「……!!」

 下半身がすーすーすることに気がついて目をやればズボンが膝の辺りまで下ろされていた。

 重い身体を起こしてズリズリと後退ると、アリアもゆっくりと近づいてくる。笑顔のようでいて、目が全く笑っていない。

 真っ白な肌と口紅の鮮烈な赤。彼女が無言のまま、ただ笑って身体をすり寄せることに恐怖を感じた。

「ア、アリア、君は慣れない環境で疲れているんだろうっ。ゆ、ゆっくりと休んでくれ。わ、私は執務室のソファーで眠るよ。」

 怖くて、怖くて……。
 とても一緒には眠れなかった。
 僕は急いでベッドから降りて、ズボンを上げると枕を掴んで寝室を出て行った。

 中庭に設置されている灯篭の灯りだけが後宮の廊下を照らしていた。
 僕はその中を枕を抱えて歩く。

 執務室にあるソファーで眠ろうと思っていたが、中庭を見ていたら、昼間サミュエルと遊んだことを思い出した。

 高い体温、汗ばんだ手。草花と太陽の交じったような子供特有の匂い。
 レイラーニと子供たちは一緒に眠っているはずだった。僕は家族のはずなのに、そこには入れて貰えない。

「レイラーニは、部屋に入れてはくれないだろうな……。」

 胸が掻き毟られような焦燥感に襲われて、レイラーニの寝室の扉を叩いた。
 無理だと分かってはいた。
 けれど、どうしようもなく焦がれて……。向かわずにはいられなかった。

 彼女は子供の父親としては僕を尊重してくれるけど、もう僕を男としては見てくれていない。

 悲しいけれど、浮気した僕の現実だった。
 学園時代にはアリアとのキスだって見られてしまっている。僕を嫌悪するのは当然だと思う。

 今もこうして彼女の好意に甘えてアリアを側室に迎えてしまっているのだから……。


 でも……。


 結局、僕はレイラーニの寝室には入れてもらえなくて、執務室のソファーで眠った。

 そして翌日、アリアは今度は紫の小瓶を持って、僕ににじり寄ってきた。

「ふふふ。ウィル様ぁ、このお薬試してみませんかー?」

 首を傾げて上目遣いで僕を見る。甘えた口調なのに逆らえないほどの強制力のある響き。僕はアリアの目の奥の光が怖くて……。

 僕は再び寝室から逃げ出した。

 そんな日々を送るうちに僕の身体は本当に不能になったらしい。今では自慰すら出来ない……。



ーーーー



※レイラーニ視点では笑える殿下ですが、本人視点だとこんなに真剣に困っているって所を強調したくて、本編とは違う雰囲気になってしまいました<(_ _*)>
しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

【完結】愛していないと王子が言った

miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。 「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」 ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。 ※合わない場合はそっ閉じお願いします。 ※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。 この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

処理中です...