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6.二人の関係
しおりを挟む「ユースティア様は、またどこかに行くんですよね?」
「……。どうしたんだ?」
アウラは冴えない表情。
いつもの弾けるような笑顔は無くて、街から帰ってきた後、ずっと何かを考えているようだった。
あんなに街に出て楽しそうにしていたのに……。
俺の昔の仲間たちの態度のせいか?などと考えていたが、そうでは無かったみたいだ。
「ユースティア様にはおうちがあるんですよね~~。いつかは帰っちゃうと思うと悲しくて~~。ユースティア様は外の世界の人だって思い出しました~~。ずっと楽しくて、忘れてましたぁ~~。」
「いや、俺は……。暫くはアウラの家に……。」
魔王討伐の後は目標も無くて、冒険者のようにふらふらと生きてきた。だから、アウラと出逢って、彼女を助けるなんて言いながらずっとアウラの家に滞在してきた。
「しばらくって、いつまでですかぁ?」
アウラは本当にずっと俺にいて欲しいと思っているのか?その目が必死で、本当に悲しそうで……。
あー、そうか……。
アウラはずっと取り残されてきたんだ。
一人取り残されるその孤独を誰よりも知っている。
だから、あんなに「死にたい」と俺に縋ってきたんじゃないか……。
真っ青な顔で……震えながら……。
死ぬより辛い孤独を知っているアウラに、出ていくなんて言えない。
「アウラが許してくれるなら、ずっとアウラのそばにいるよ。ずっと俺と一緒に暮らそう?この家をもっと大きく直して……。」
「ほ、本当ですか?家族やお友達は寂しがりませんかぁ?」
「いつでも会いに行けるし、大丈夫だ。俺は絶対にアウラを残してどこかに行くなんて事はしない。だから、安心してくれ。」
「ほわぁ!う、嬉しいですぅ~~。本当はずっとちょっと不安だったんです~~。ユースティア様は突然来たから、居なくなるのも突然なんじゃないかって……。」
そんな不安を抱えていたなんて、知らなかった。アウラはいつも笑顔でいたから。
だけど……。
一人きりの生活で彼女が笑うことなんてほとんど無かっただろう。
俺もいつか、彼女より先に死んでしまうのか?
その後、アウラは……?
俺は彼女をそっと抱きしめた。
「アウラ……。」
彼女の孤独につけこむようで……。
だけど、今、伝えなければ。
「俺の伴侶に……なってくれないか?男女がずっと一緒にいるっていうのはそういう事なんだ。」
「伴侶……ですかぁ?それは、お話にあった恋人同士みたいに?」
「そう、俺とずっと一緒にいるんだ。」
「そうしたら、ユースティア様は何処にも行かない……?」
「ああ。もし、何処かに行かなければならない時には一緒に連れていく。ずっと一緒いよう。」
「はい。」
☆
そんな会話をした後も俺達の関係は変わらなかった。
家族のようでありながら、父でも兄でも無い。友情とも違う。
アウラと俺はそんな関係が続いた。
俺は購入してきた木材を組み立てて、自分用の椅子を作った。そして、綺麗に直した調理台の横の棚に二人分の食器を片付ける。
荒れていた魔女の家は、まるで新婚家庭のように全ての物がペアで揃っていく。
さすがに自分のベッドを作るのは気が引けるので、俺はずっと寝袋で眠っていた。
俺達はその後も2~3日に一回は街に出た。
そしてアウラは毎回アイスクリームを食べに行きたがった。
店先でいつも美味しそうに食べる彼女を覚えた店主が少し多めにアイスをサービスしてくれる。
アウラはもう街に出ることを怖がらない。むしろ喜んでついてくる。彼女にとっては街には驚きと発見がいっぱいでオモチャ箱のようだった。
花売りの少女にお花を貰ったり、大道芸を見て大喜びしたり……。彼女の目に映る世界はきっと色鮮やかで美しいのだろう。
☆
「はい!アウラちゃん、チョコソース多めにかけといたよ!」
「デンさん、ありがとう!!」
その日も、俺達はすっかり常連になったアイスクリーム店に来て、アウラのお気に入りのチョコアイスを食べていた。
彼女がアイスを一口食べたその時ーー
「ユースティアから離れなさいっ!!」
突然、背後から声がして振り返るとリリアがアウラに鋭い視線を向けていた。
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