異界からの救世主が来て、聖女の私はお役御免です。

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裁判

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 アルフレード殿下視点

 救世主ルナの裁判は、国民の関心を集め公開裁判となった。

 罪状が読み上げられたが、ルナは守護水晶を壊した理由について、神官たちの態度が原因で、自分は悪くないと言い放った。

「私はこの国を助けて皆から慕われる救世主になりたかったのよ?そりゃー、身体が辛い時には、ちょっと我儘だったかもしれないけど、私は基本的にみんなに優しく気さくにしてきたわ。なのに、私の悪口を言う神官がいたから……」

 全く悪びれないルナはその場に居た神官を指差した。

「あっ、私、あの神官も嫌だった。私が辛い時、仮病扱いして、もううんざりって顔をしたんだから!」

「だからといって、守護水晶を破壊していい理由にはならない。救世主ルナが、守護水晶を破壊した事は、我が国を危機に陥れた国家転覆罪に当たる」

「どうしてよ?私はこの国を助けるつもりだったのよ?結界はいつだって張れるんだから、壊しても問題無いじゃないっ!!」

「お前が守護水晶を壊した結果、我が国の聖女が結界を張るために命を落とした」

「そんなの、知らないわっ!私の力なら命なんて懸けなくても、直ぐに強い結界を張れたのよ?あなた達が私に頼まないからじゃない。無駄死ね。でもそれって私のせいかしら?あなた達が無能だからでしょ?」

 ルナは自らの行いを全く反省していなかった。我が国に力が無いから、大騒ぎになっただけで、自分にとって守護水晶など無くても、この国を危機に陥れることにはならないと言い張る。

 リズリーネの犠牲を無駄死にと言い放った救世主に怒りが募る。今すぐこの手で……、その衝動を、拳を握って耐えた。
 悔しくて……目の前が真っ赤に染まる。

 けれど、ルナがいくら言い訳をしても、彼女の罪は明白だった。

 水晶を壊し王族である俺に剣を向けた事は事実。

 法廷で彼女は極刑を言い渡された。

 死刑だと言われても、ルナは相変わらずの態度。

「私は神様から頼まれてこの国を助けに来たのよ?私のピンチには神様が助けにくるはずだわ」

 ルナはそう言って、地下牢でもふてぶてしい態度。そして、その態度は死刑執行の日まで変わることは無かったと言う。





 

 彼女の死刑執行の日。

 刑場の柵の向こうには大勢の見物人がいた。
 彼女は見物人を睨みつけながら、執行台の階段を昇った。
 民衆から石が投げつけられ、顔に当たると、ルナは何かを大声で叫んだ。
 額から血が流れ落ちる。髪は乱れ、頬は痩せこけ、それでも、瞳だけは怒りでギラついていた。

 その細い首にロープが掛かり、ようやく彼女の表情が恐怖に歪んだ。
 民衆が固唾を呑んで見守る中、彼女の真下の床が開いた。

 ガタンーー

 首がカクンと曲がり、身体がゆらゆらの力なく揺れる。

 救世主ルナが死んだーー

 そして、執行人がルナの遺体の側に行きその絶命を確認し頷く。

 その瞬間、まばゆい光が辺りを包み、俺は目を開けていられずにギュッと目を閉じた。

 次に目を開けるとそこには

「神様だっ!!」

 空に浮かんで私達を見下ろすのは、真っ白な髪に長い顎髭の老人。
 神話の絵に出てくるそのままの姿の神様が居た。

「ラハール王国の民よ。今回の事は未熟な天界人が引き起こした混乱。すまなかった。元凶となったルナの魂は私が預かろう。下界の魂の輪廻には干渉せん決まりじゃから、ルナがこの世界での生を終えるのを待っていたんじゃ」
 
 大きな声じゃ無いのに、直接脳に響くのか、不思議とその声はよく聞こえた。

 そして、神様はルナの身体から抜けていった球体を手に取った。
 あれが、魂か?

「お詫びとしてルナをこの世界に転移させた天界人の魂を結晶化してこの国を見守らせる事にした。今後数百年、この結晶は聖なる光を宿し続けることが出来るだろう。今後は、魔物を恐れる事なく安心して生活するがよい。
それと、国を護るために犠牲になって国を護ろうとした聖女は天上界で預っておった」

「神よっ!聖女様は無事なのか?」

「うむ。今、リズリーネをここに」

 神様が杖を空に掲げると、空からゆっくりとリズリーネが降りてきた。

 リズリーネの身体は光に包まれ、まるで女神のようにまばゆい姿。

「聖女様の復活だ」
 
 誰かの呟きに呼応するように、歓声が辺りに広がっていく。

「リズ……」

 彼女は、少し恥ずかしそうに広場の中央に降り立った。

 俺はリズリーネの側に駆け寄り、愛しい人の顔をじっと見つめた。

「リズリーネ、……おかえり。そして、ありがとう」

「は、はい。あの……こんなに注目されて恥ずかしいのですが……」

「君が守った人々だ。みんな、君が戻ってきてくれたことを喜んでいる」

「……ええ。私も戻ってこれて嬉しいです」

 目の前のリズリーネは確かに俺のよく知る彼女で……。

「君が戻って来たのがまだ、信じられない。抱きしめて良いだろうか?」

「……はい」

 俺は言葉も無くしてただ彼女の細い身体を抱きしめた。

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