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王国の結末
今日はおめでたいのでもう1話投稿します
シルクの監禁事件は思ったより大きな衝撃だったようだ。ヒル王国の貴族は現国王の廃位を望み、国王の従兄弟にあたる侯爵家当主が国王として各国やギルドとの信頼関係の再構築に努める事になった。
ヒル王国に注がれる目は厳しい。
平民をしていても、シルクの血筋には各国の王族の血が流れる。
前国王夫妻と王太子は離宮で生涯幽閉となった。
そしてルイルイは実家に戻ったらしい。ルイルイが王太子の名を使い権力を行使したが、罪は全て王太子が負う事になった。何よりシルクに直接暴行を働いたのは王太子なのだから。
ルイルイも王太子妃を諦めて皆を巻き込んだことを反省し自分の人生を歩んで欲しい。
ルイルイは自分が虐められていると偽装し、私を陥れた。毒も冤罪だ。きちんと調べない王太子にも非はある。しかし、何よりも私はルイルイがロッテルマリアは魔女になる悪役令嬢だから陥れても構わないという態度が理解出来なかった。
私をゲームのキャラクターのように見ていて、私に何をしても良心が痛まないかのような振る舞いで、私は心底この人を怖いと思った。
ルイルイには実家の監視があるとはいえ、もうヒル王国に戻る気にはなれない。
私とシルクは再び二人でギルドの依頼を受けながら生活していた。
シルクが私に冒険者として色々教えることも減り、シルクとの生活はすっかり日常となっていた。
「フンフンフーン・・・」
「何を作っているんですか?」
私が鼻歌を歌いながら鍋を煮込んでいると、シルクが背後から顔を出して鍋の中を覗きに来た。
夫婦のような距離感にドキドキして赤くなる。
赤い頬を隠すよう顔を逸らせた。
「シチューです。」
「嬉しいですね。僕の好物です。」
きっとシルクは笑っているだろう。けど、顔を見れない。カチコチに固まっている私に気付いたシルクが
「どうしたんですか?」と顔を覗き込む。
もう耐えられない。
顔を上げて涙目になりながらもシルクを睨んで
「近すぎる。恥ずかしい。離れて。」と一気にまくし立てると、シルクが慌てて離れてくれた。
「すみません。思わず、こんなに近づかれたら嫌ですよね。」
申し訳無さそうに謝る彼を見て、慌てて否定する。
「いえ。嫌な訳じゃなくて・・・。」何か言おうと思うが言葉が続かない。シルクは
「何だかルマとこうして生活しているのが心地よくて、距離感を間違えてしまったみたいです。他意はありません。」
と弁明を始めた。シルクも耳が赤い。
二人とも黙ってしまい沈黙の時間が流れた。耐えきれなかった私は
「冷めちゃうので食べましょう。」と言って気まずい空気を霧散させた。
夕食を始めると、いつもの和やかな空気が私たちを包む。
「明日の依頼、一角猪にしない?久しぶりに食べたいなー。」
「いいですよ。気に入ったんですね。」
「とっても美味しかった。普段は塩漬け肉が多いから・・・。」
「僕も一角猪の鍋は好きです。赤鹿肉も今度食べてみますか?一角猪よりは油が少なくて筋肉質ですよ。煮込み料理がお薦めです。」
「はい。食べたいです。一角猪はね、他のお客さんも喜んでたのが嬉しかったの。実家では、人を喜ばせるような事なんてしなかったから。」
「僕もルマの嬉しそうな顔を見るのが好きですよ。」
「・・・。ありがとう。」
唐突に告げられた言葉に再び恥ずかしくなり、顔を附せる。
奇妙な沈黙が訪れ、二人でギクシャクしてしまう。
シルクは私の事をどう思っているのだろう?そう思って彼の顔を盗み見る。彼は私を見ていて、バッチリ目が合う。その目は優しく細められている。
シルクを意識してしまうと、こんな生活続けられない。心臓が持たない。だから気づかない振りをした。
元々広くない家だ。お風呂上がりに濡れた髪のシルクを見たり、リビングのベッドで寝ているシルクを起こしたりすると胸が高鳴る。シルクのお風呂上がりや寝起きは、とんでもなく艶やかだ。
そんな気持ちに気付かれたくなくて、顔を見られないように顔を背けたり俯いたりするのだが、どういう訳か、彼は私のそういう崩れた表情を見たがるのだ。
密かな攻防がありつつも日々は穏やかに過ぎていく。
次の日は予定通り、ロンさんの店で一角猪肉鍋を食べていた。相変わらず大繁盛している。ガヤガヤした雰囲気の中、二人で鍋をつついているとベンさんがやって来た。ベンさんの表情は険しい。
「何かあった?」
シルクの問いかけにベンさんがチラッと私を見る。嫌な予感。
「 ルイルイが家を出たみたいだ。現在行方不明になっている。」
シルクが顔をしかめる。
「男爵家も探しているようだが見つからないらしい。」
不安で胸が潰れそうだ。
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