お姉さまに惚れ薬を飲まされた私の顛末

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私が婚約することになりました。

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 私がネレイド様に求婚した後、私とお姉さま、両親、それにネレイド様を交えて話し合いが行われました。

 メルヴィン・ネレイド伯爵。
 彼は、王宮の嫌われ者。守銭奴として陰口を叩く方も多いです。
 
 ですが、それもこれも王大后さまの散財のせい。王宮の財政が悪化した責任をとり、前国王陛下は当時の王太子殿下に譲位し隠居しています。

 王大后さまは、傾国の美女と謳われ、当時の国王陛下はメロメロだったそうです。王太子時代に婚約者だった公爵令嬢との婚約を破棄し、強引に結婚をされました。身分の差を越えて愛を貫くほど夢中だった女性。王大后さまは、お金を湯水のように使い贅沢の極みを尽くしたと聞きます。

 そして危機感を持ったのが、当時王太子だった今の国王陛下。父親に引退するように強く勧告したそうです。
 表向き、譲位とはなっていますが、実際は追放に近かったとか。
 今では、前国王夫妻は離宮で質素な生活を余儀なくされているようです。

 王宮の守銭奴として嫌われているネレイド様ですが、優秀で出世するのは間違い無いと言われております。将来の宰相候補。

 実は私はネレイド様の噂を聞いて尊敬していました。
 だって、お金は湯水のように湧くわけでは無いですから、ネレイド様は正しい事をしていると思うのです。

 そして、ネレイド様の陰口を言うのは、決まって贅沢に慣れた貴族たち。

 私は、ネレイド様の事を、現国王陛下の元、傾いた王国財政を再建された優秀な政務官だと思っていました。
 もちろんお会いしたことは無かったので、一目惚れするなんて思いもしなかったのですが……。

 今私はネレイド様の全てが好きで好きで、どうしようも無い気持ちです。この胸の高鳴りをどう表現したらいいのでしょう。

 この命が失われることがあったとしてもネレイド様のためなら惜しくは無いですし、ネレイド様と一緒に過ごせるなら、どんな困難にだって立ち向かうことが出来ます。

「ネレイド様のその灰色の瞳も、眉間によった皺も、きっちり撫で付けた黒髪も、仕事への真摯な姿勢も、全てが大好きです。ネレイド様、どうか私を選んでくださいませ」

 涙を流しながら、ネレイド様への恋心を訴えると、お父様は腕を組んで考え込んでしまいました。
 お母様は容赦無い非難の言葉を私に浴びせてきます。

「なんて節操の無い子でしょう。人の気持ちを考えないところが、お義母様にそっくりね。以前から、私はアリスのことで悩んでいました。この子はとても非常識で自分勝手なところがありましたもの。自分の姉のお相手に言い寄るなんて、まったく……恥を知りなさいっ」

 そんな私をお姉さまが庇ってくれます。

「お母様っ、そんなひどいことはおっしゃらないで。アリスは、ネレイド卿と出逢って真実の恋に目覚めたのよ?私は応援してあげるつもりだわ」

「まあ、グレースは優しいのね。そう、グレースが良いと言うなら、私は何も言いません。アリスはグレースに感謝なさい。でもね、貴女、自分がした行いを反省すると良いわ」

 蔑むように私を睨むと、お母様はネレイド様に頭を下げました。

「こんな子ですので、ネレイド伯爵に迷惑を掛けるかもしれません。厳しく躾けてくださいませ。手に負えないと判断なされるのなら、規律の厳しい修道院に入れますわ」

 ネレイド様は厳しい顔を崩しません。私達の話を聞いて深く溜息を吐くと、婚約を了承してくださいました。

 その時私はショックを受けていたかと言えばそうではありませんでした。
 頭の中は薔薇色です。
 大好きなネレイド様の婚約者になれるのです。

 ネレイド様と両親が今後の具体的なスケジュールを話し合っている間、私はネレイド様の横顔を眺めていました。
 切れ長の瞳も、淡々とした口調も、低い声も全てが好ましいです。


「元より、エブランシュ侯爵家から来た縁談ですので、私は構いません」

「ネレイド様、これから宜しくお願いします」

 こうして、私のわがままでお姉さまとネレイド様との婚約話は無くなり、私がネレイド様と婚約することになりました。

 なんて非常識な事だと思われるかもしれません。私だって頭ではちゃんと駄目なことだと理解しています。ですが、どうにも感情と行動がコントロールできませんでした。



 
 
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