12 / 29
結婚式
婚約期間の半年が過ぎ、明日はいよいよ結婚式。
私の両親も参列するために前の日から領主邸に泊まっている。
兄は他国へ留学中で来れないと連絡があった。戻る途中に通る国で紛争があり、今は危険らしい。
父は辺境の人の大きさを知っていたようだが、母はここの住民たちを見て驚いて卒倒しそうだった。
驚くよね?
私もびっくりしたよ。
それでも、両親ともに私が大切にされているのが分かると、ほっとしたようだ。
食事が終わった後、両親と過ごす最後の夜ということで、エヴァン様は私と両親だけでゆっくり過ごせるようにしてくれた。
「キオネが大切にされているようでとても安心したわ。」
母は紅茶を飲みながら感慨深げに話した。
すみません。学園時代は心配おかけしました。
「辺境伯殿は王都で噂されているような人物ではないのだな、私も安心したよ。陛下からは領民から慕われている良い領主だと聞いてはいたが……。」
お父様は嬉しいのか、私と同じ色の尻尾を左右にゆっくりと揺らしている。
「はい。はじめは子供とか小動物扱いで驚いたけど、とっても居心地良くて……。学園のゴタゴタで傷付いていたから……エヴァンさまが甘やかしてくれたから心の傷はすっかり癒えたわ。」
ただ、王都から逃げたくて言われるままにこの地へ来た。
エヴァンさまが真綿にくるむように大切にしてくれるから、私はここで元気になった。
エヴァンさまは優しくて格好いいし……
サイコーですっ!
「お父様、お母様、私此処に来て良かったわ。学園で公爵家の名前に傷を付けてごめんなさい。」
「いや、先日、王家からメリッサ・メイソン男爵令嬢から魅了の術の痕跡が見付かったと発表された。メリッサは捕らえられ投獄されたよ。キオネに何の瑕疵も無かったことも証明された。」
「え?」
そう言えば調査してるって言ってましたわね。忘れてました……。
「スティーブン殿下の婚約は白紙に戻り、今婚約者を探しているそうだ。我が家にも謝罪があったよ。」
「そうなんですね。」
スティーブン殿下のお相手探しは難航するわね。でも私には関係ないや。
……べーってしちゃったの可哀想だったかしら?
………まっいっか。
「お父様、お母様、殿下の事は忘れましょう。今日は親子で過ごす最後の夜です。」
私たちは久しぶりに親子水入らずの時を過ごした。お父様はお酒を飲んだ後泣いてしまって大変だったけど……。
お父様はお母様に慰められながら眠りについた。
~・~・~・~・~
翌朝
天気は快晴!!
私は早朝からエリーゼたち侍女5人がかりで支度を整えてもらった。
花嫁衣裳はカラフルな少し分厚い織物で出来ている。民族衣裳みたいで可愛らしい。
エヴァンさまはマントのような織物を羽織っている。
うん。
エヴァンさまは何を着ても格好いい。
王都とは違う結婚式。
それは本当に変わっていて……。
大きな人が多くて結婚式が見えないだろうということで、王都から来た私の両親は、一際高い壇上の席に座っていた。
そして花嫁が領民たちに見えるように、私はエヴァン様に抱えられたまま式が行われる噴水広場へと入場した。
視線が一斉に集まる。
「並んで歩かないの?」
「ああ、領民へのお披露目の意味もあるからな……。」
こんな子供みたいに抱き抱えられることにもすっかり慣れた私は彼に抱っこされたまま領民に手を振った。
「奥方様可愛い。」
「領主様は片時も離したくないそうよ。」
「見てっ!領主様の甘い笑顔っ!!」
巷にはエヴァン様の溺愛伝説が広がっている。
曰く
婚約者のために領主邸のメニューを変更した。
曰く
邸宅の中でも婚約者を常に抱きかかえている
曰く
婚約者のために特注の家具を作らせた
ともすれば、私が我が儘令嬢になりそうな噂だ。
けれど、今まで浮いた噂一つ無いエヴァンさまの溺愛は領民に好意的に捉えられているみたい。
私は知らなかった。
お父様が私たちよりも領民の注目を浴びていたことを……。
結婚式に来た領民たちはお父様が小動物の獣人だと思ったようだ。
結婚式の間ずっと耳と尻尾をパタパタ振っていたから。お父様、厳つい表情で威厳を出そうとしても、耳と尻尾でウキウキしているの丸分かりです。
私は厳かな結婚式では尻尾も耳も出さないんだから……。
私とエヴァンさまはユピテル領を守っているとされる大地の神に誓いと祈りを捧げる。
エヴァンさまは、荘重に作り込まれた祭壇へ私を抱えたまま昇っていく。
エヴァンさまが壇上に上がった途端、広場の雰囲気は一変し厳かなものとなる。
エヴァンさまは私をそっと自分の隣に下ろしてくれた。
人々の喧騒が静まる。
草花の香りを運んでくれた風が止んで広場は粛然たる雰囲気に包まれた。
「ユピテルの大地の神よ!!」
はじまったエヴァンさまの宣誓の声は澄んだ空の元、高らかに響いた。
「私達は真実の愛をここに誓う。」
「ユピテルの民よ!!」
「我ら夫婦は力を合わせ、ユピテルの民を守ることを誓おう。」
真っ青で透き通った空の元、厳かな宣誓の声は広場の遠く離れた領民にも、彼方にいる神様にも聞こえただろう。
私に見せる顔とは別の領主としての凛々しい姿。
格好いい。惚れ直しちゃうっ。
そして、私たちは領民みんなの見ている前で誓いのキスをした。
それは、はじめての時のように短いキス。
恥ずかしくて、耳がピョコンと飛び出した。
あっ。耳出ちゃった。厳かな式なのに……。
飛び出した耳をじっと見ていたエヴァンさまがそっと手を伸ばし指先で擽った。
「きゃー。」
ひ、人前で何て事をっ。。破廉恥。。
領民たちの囃し立てる声と祝福の口笛が響く。恥ずかし過ぎて笑っちゃう。
エヴァンさまも同じみたいで……。
私たちはお互いに顔を寄せて笑い合った。
領民たちの笑い声と鳥たちの囀り。
全てが交ざり合ってユピテルの空に溶けていった。
ーーー完ーーー
すみません。ちょっと最後コメディ要素が少なくなりました。
番外編で初夜
R18です。
その後
二人の楽しい日常を投稿します。
私の両親も参列するために前の日から領主邸に泊まっている。
兄は他国へ留学中で来れないと連絡があった。戻る途中に通る国で紛争があり、今は危険らしい。
父は辺境の人の大きさを知っていたようだが、母はここの住民たちを見て驚いて卒倒しそうだった。
驚くよね?
私もびっくりしたよ。
それでも、両親ともに私が大切にされているのが分かると、ほっとしたようだ。
食事が終わった後、両親と過ごす最後の夜ということで、エヴァン様は私と両親だけでゆっくり過ごせるようにしてくれた。
「キオネが大切にされているようでとても安心したわ。」
母は紅茶を飲みながら感慨深げに話した。
すみません。学園時代は心配おかけしました。
「辺境伯殿は王都で噂されているような人物ではないのだな、私も安心したよ。陛下からは領民から慕われている良い領主だと聞いてはいたが……。」
お父様は嬉しいのか、私と同じ色の尻尾を左右にゆっくりと揺らしている。
「はい。はじめは子供とか小動物扱いで驚いたけど、とっても居心地良くて……。学園のゴタゴタで傷付いていたから……エヴァンさまが甘やかしてくれたから心の傷はすっかり癒えたわ。」
ただ、王都から逃げたくて言われるままにこの地へ来た。
エヴァンさまが真綿にくるむように大切にしてくれるから、私はここで元気になった。
エヴァンさまは優しくて格好いいし……
サイコーですっ!
「お父様、お母様、私此処に来て良かったわ。学園で公爵家の名前に傷を付けてごめんなさい。」
「いや、先日、王家からメリッサ・メイソン男爵令嬢から魅了の術の痕跡が見付かったと発表された。メリッサは捕らえられ投獄されたよ。キオネに何の瑕疵も無かったことも証明された。」
「え?」
そう言えば調査してるって言ってましたわね。忘れてました……。
「スティーブン殿下の婚約は白紙に戻り、今婚約者を探しているそうだ。我が家にも謝罪があったよ。」
「そうなんですね。」
スティーブン殿下のお相手探しは難航するわね。でも私には関係ないや。
……べーってしちゃったの可哀想だったかしら?
………まっいっか。
「お父様、お母様、殿下の事は忘れましょう。今日は親子で過ごす最後の夜です。」
私たちは久しぶりに親子水入らずの時を過ごした。お父様はお酒を飲んだ後泣いてしまって大変だったけど……。
お父様はお母様に慰められながら眠りについた。
~・~・~・~・~
翌朝
天気は快晴!!
私は早朝からエリーゼたち侍女5人がかりで支度を整えてもらった。
花嫁衣裳はカラフルな少し分厚い織物で出来ている。民族衣裳みたいで可愛らしい。
エヴァンさまはマントのような織物を羽織っている。
うん。
エヴァンさまは何を着ても格好いい。
王都とは違う結婚式。
それは本当に変わっていて……。
大きな人が多くて結婚式が見えないだろうということで、王都から来た私の両親は、一際高い壇上の席に座っていた。
そして花嫁が領民たちに見えるように、私はエヴァン様に抱えられたまま式が行われる噴水広場へと入場した。
視線が一斉に集まる。
「並んで歩かないの?」
「ああ、領民へのお披露目の意味もあるからな……。」
こんな子供みたいに抱き抱えられることにもすっかり慣れた私は彼に抱っこされたまま領民に手を振った。
「奥方様可愛い。」
「領主様は片時も離したくないそうよ。」
「見てっ!領主様の甘い笑顔っ!!」
巷にはエヴァン様の溺愛伝説が広がっている。
曰く
婚約者のために領主邸のメニューを変更した。
曰く
邸宅の中でも婚約者を常に抱きかかえている
曰く
婚約者のために特注の家具を作らせた
ともすれば、私が我が儘令嬢になりそうな噂だ。
けれど、今まで浮いた噂一つ無いエヴァンさまの溺愛は領民に好意的に捉えられているみたい。
私は知らなかった。
お父様が私たちよりも領民の注目を浴びていたことを……。
結婚式に来た領民たちはお父様が小動物の獣人だと思ったようだ。
結婚式の間ずっと耳と尻尾をパタパタ振っていたから。お父様、厳つい表情で威厳を出そうとしても、耳と尻尾でウキウキしているの丸分かりです。
私は厳かな結婚式では尻尾も耳も出さないんだから……。
私とエヴァンさまはユピテル領を守っているとされる大地の神に誓いと祈りを捧げる。
エヴァンさまは、荘重に作り込まれた祭壇へ私を抱えたまま昇っていく。
エヴァンさまが壇上に上がった途端、広場の雰囲気は一変し厳かなものとなる。
エヴァンさまは私をそっと自分の隣に下ろしてくれた。
人々の喧騒が静まる。
草花の香りを運んでくれた風が止んで広場は粛然たる雰囲気に包まれた。
「ユピテルの大地の神よ!!」
はじまったエヴァンさまの宣誓の声は澄んだ空の元、高らかに響いた。
「私達は真実の愛をここに誓う。」
「ユピテルの民よ!!」
「我ら夫婦は力を合わせ、ユピテルの民を守ることを誓おう。」
真っ青で透き通った空の元、厳かな宣誓の声は広場の遠く離れた領民にも、彼方にいる神様にも聞こえただろう。
私に見せる顔とは別の領主としての凛々しい姿。
格好いい。惚れ直しちゃうっ。
そして、私たちは領民みんなの見ている前で誓いのキスをした。
それは、はじめての時のように短いキス。
恥ずかしくて、耳がピョコンと飛び出した。
あっ。耳出ちゃった。厳かな式なのに……。
飛び出した耳をじっと見ていたエヴァンさまがそっと手を伸ばし指先で擽った。
「きゃー。」
ひ、人前で何て事をっ。。破廉恥。。
領民たちの囃し立てる声と祝福の口笛が響く。恥ずかし過ぎて笑っちゃう。
エヴァンさまも同じみたいで……。
私たちはお互いに顔を寄せて笑い合った。
領民たちの笑い声と鳥たちの囀り。
全てが交ざり合ってユピテルの空に溶けていった。
ーーー完ーーー
すみません。ちょっと最後コメディ要素が少なくなりました。
番外編で初夜
R18です。
その後
二人の楽しい日常を投稿します。
あなたにおすすめの小説
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした
こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】
伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。
しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。
そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。
運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた――
けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった――
※「小説家になろう」にも投稿しています。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…
satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」
仙冬可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。
「で、政略結婚って言われましてもお父様……」
優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。
適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。
それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。
のんびりに見えて豪胆な令嬢と
体力系にしか自信がないワンコ令息
24.4.87 本編完結
以降不定期で番外編予定
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。