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第一章 放浪
8話 大器
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鍛冶屋に着いた2人は、事前にシオンが調べていた防具職人を探すことにするが、その必要もなくすぐに見つけると早速依頼をする。
「シルバニーさん初めまして。早速なんですが、運良く手に入った素材がありまして。この核を使った防具を作って頂きたいです」
そう言って取り出した核を机に置くとシルバニーはポケットから眼鏡を取り出し、その眼鏡越しの細い目を凝らしながら観察を始める。
「これは子供のアイスドラゴンの核ですか。曇りが殆ど無い。これは、一撃で倒しましたか?」
そう言われ、この魔物を倒した当事者であるメアリーは一昨日の戦いを思い出す。アイスドラゴンを倒す際、一撃ではなかったものの必要最低限の二撃で倒すことができた。
「あ、足に一回、喉に一回の二撃です」
「ほう、そうですか。ここまで綺麗な核は初めて見ました。では早速作らせてもらいますね」
シルバニーは立ち上がって工房へと向かう。それに2人はついていこうとすると、
「奥の部屋で30分程待っていてください。それまでに完成させます」
との事なので、シルバニーに呼ばれるまでの時間、2人は隣の部屋で他の武器や防具を見て回ることとなった。
2人を工房から追い出すと、シルバニーは静かになった部屋で深く深呼吸を行う。硬い茶色の手袋をつけるとその上に乗せた蒼の核をじっと眺める。このような上質なドラゴンの核を見る機会は中々なく、それがシルバニーの職人魂を刺激するのは容易だった。
上質な素材を加工することに興奮するシルバニーは一度高まった心を落ち着かせるためにもう一度深呼吸をすると、必要な道具を取り出してから鍛治台につき、そのまま顎に手を当ててどのような防具を作ろうかと悩む。
(このように上質な素材を活かすためにはどうすればよいだろうか)
数分悩んで出した答えは素材がいいのだから拘りを捨てて素材そのものの良さを全面的に引き出そうという作戦である。
そう思い立ったら行動は早く、核を手に取るとそのまま打ち込みを始め、削り出す。キンキンカンカンとリズム良く金属を打ち込む音が鳴り響く部屋で汗をだくだくと垂らしながらも、勢いを落とさないまま一気に切削を終わらせる。
削り終わった核は同じ大きさの2つと少し大きめの1つとなっていた。その一つ一つを布で綺麗に磨き上げると、煌めくように輝き始める。そのうちの一つ、元々球だったものが今となってはマーキスカットされて角張った面から光を反射させ、それは製作者本人すらもどこか神秘的な感情を覚えてしまう。
最後に、2つをその楕円の先に金属を付けることによってイヤリング。マーキスカットされたものに金属板と紐を付ける事でペンダントとする。少し遠目で見てその出来に満足したしたシルバニーは拳を握りしめると早速2人に見せるために工房を後にする。
「おーい、お二人さんできましたよ」
腹から出した大きな声で2人を呼ぶと、2人は待ってましたと勢いよくシルバニーの方に走ってくる。それを見たシルバニーは苦笑いしつつも2人を椅子に座らせると、勿体ぶって白い布をかぶせた状態で机の上に置く。
布をメアリーが外すと、そこにあるのは1対のイヤリングとペンダント。
「彫琢を頼んだわけではないのですが」
出てきたものにびっくりしたメアリーは思わずそう言ってしまう。あくまでも2人は防具を作りにきたのである。
「これは歴とした防具なんですよ」
そう言われてメアリーは首を傾げる。どう見たってそれはアクセサリーの類にしか見えない。そんな彼女の横でうんうん、と頷くシオンがメアリーに答えを告げる。
「メア、蒼の核は異能の塊なんですよ。つまりその素材を活かすにはただ防具にするだけでは勿体ないんです。このように表に露出させてイヤリングだと耳、ペンダントだと胸といった体の中でも魔素の流れる量が多い部分に近い場所に装備しやすいのがこの形なんですよ」
そう言われてもあまりピンとこないメアリーだが、ようはこの形にした方が使いやすいという事である。
「正解です。よく勉強されていらっしゃいますね。ちょっと私感が良いのでしてね、あなた達2人にはこれがピッタリだと思ったんですよ」
そう言って笑うシルバニー。
メアリーはよく分からないが自分の目の前に置かれるペンダントを手に取る。キラキラと輝くそれはとても美しく見惚れてしまう。
「ああ、そう言えばなんですがお代は要りません」
2人はなぜ?と言った表情になる。
「その代わり今後このように珍しい素材が手に入ったら私のところに持ってきてほしいです。私は武器も作れますので」
そう言われてシオンはそういうことかと納得する。つまりを言えば、珍しい物を持ってくる客を独占したいのである。メアリーはよく分かっていないようだが、言いたい事の理解を出来るシオンはそれを了承する。
メアリーは半信半疑なようだが、逆に腕の良い職人を独占できたとも言える2人はお代の代わりに感謝を伝えて工房を後にする。シルバニーさん曰く今後は特殊な方法で素材、完成した物の受け渡しをするらしいが、それはまたその時になったら話そうと思う。
「シルバニーさん初めまして。早速なんですが、運良く手に入った素材がありまして。この核を使った防具を作って頂きたいです」
そう言って取り出した核を机に置くとシルバニーはポケットから眼鏡を取り出し、その眼鏡越しの細い目を凝らしながら観察を始める。
「これは子供のアイスドラゴンの核ですか。曇りが殆ど無い。これは、一撃で倒しましたか?」
そう言われ、この魔物を倒した当事者であるメアリーは一昨日の戦いを思い出す。アイスドラゴンを倒す際、一撃ではなかったものの必要最低限の二撃で倒すことができた。
「あ、足に一回、喉に一回の二撃です」
「ほう、そうですか。ここまで綺麗な核は初めて見ました。では早速作らせてもらいますね」
シルバニーは立ち上がって工房へと向かう。それに2人はついていこうとすると、
「奥の部屋で30分程待っていてください。それまでに完成させます」
との事なので、シルバニーに呼ばれるまでの時間、2人は隣の部屋で他の武器や防具を見て回ることとなった。
2人を工房から追い出すと、シルバニーは静かになった部屋で深く深呼吸を行う。硬い茶色の手袋をつけるとその上に乗せた蒼の核をじっと眺める。このような上質なドラゴンの核を見る機会は中々なく、それがシルバニーの職人魂を刺激するのは容易だった。
上質な素材を加工することに興奮するシルバニーは一度高まった心を落ち着かせるためにもう一度深呼吸をすると、必要な道具を取り出してから鍛治台につき、そのまま顎に手を当ててどのような防具を作ろうかと悩む。
(このように上質な素材を活かすためにはどうすればよいだろうか)
数分悩んで出した答えは素材がいいのだから拘りを捨てて素材そのものの良さを全面的に引き出そうという作戦である。
そう思い立ったら行動は早く、核を手に取るとそのまま打ち込みを始め、削り出す。キンキンカンカンとリズム良く金属を打ち込む音が鳴り響く部屋で汗をだくだくと垂らしながらも、勢いを落とさないまま一気に切削を終わらせる。
削り終わった核は同じ大きさの2つと少し大きめの1つとなっていた。その一つ一つを布で綺麗に磨き上げると、煌めくように輝き始める。そのうちの一つ、元々球だったものが今となってはマーキスカットされて角張った面から光を反射させ、それは製作者本人すらもどこか神秘的な感情を覚えてしまう。
最後に、2つをその楕円の先に金属を付けることによってイヤリング。マーキスカットされたものに金属板と紐を付ける事でペンダントとする。少し遠目で見てその出来に満足したしたシルバニーは拳を握りしめると早速2人に見せるために工房を後にする。
「おーい、お二人さんできましたよ」
腹から出した大きな声で2人を呼ぶと、2人は待ってましたと勢いよくシルバニーの方に走ってくる。それを見たシルバニーは苦笑いしつつも2人を椅子に座らせると、勿体ぶって白い布をかぶせた状態で机の上に置く。
布をメアリーが外すと、そこにあるのは1対のイヤリングとペンダント。
「彫琢を頼んだわけではないのですが」
出てきたものにびっくりしたメアリーは思わずそう言ってしまう。あくまでも2人は防具を作りにきたのである。
「これは歴とした防具なんですよ」
そう言われてメアリーは首を傾げる。どう見たってそれはアクセサリーの類にしか見えない。そんな彼女の横でうんうん、と頷くシオンがメアリーに答えを告げる。
「メア、蒼の核は異能の塊なんですよ。つまりその素材を活かすにはただ防具にするだけでは勿体ないんです。このように表に露出させてイヤリングだと耳、ペンダントだと胸といった体の中でも魔素の流れる量が多い部分に近い場所に装備しやすいのがこの形なんですよ」
そう言われてもあまりピンとこないメアリーだが、ようはこの形にした方が使いやすいという事である。
「正解です。よく勉強されていらっしゃいますね。ちょっと私感が良いのでしてね、あなた達2人にはこれがピッタリだと思ったんですよ」
そう言って笑うシルバニー。
メアリーはよく分からないが自分の目の前に置かれるペンダントを手に取る。キラキラと輝くそれはとても美しく見惚れてしまう。
「ああ、そう言えばなんですがお代は要りません」
2人はなぜ?と言った表情になる。
「その代わり今後このように珍しい素材が手に入ったら私のところに持ってきてほしいです。私は武器も作れますので」
そう言われてシオンはそういうことかと納得する。つまりを言えば、珍しい物を持ってくる客を独占したいのである。メアリーはよく分かっていないようだが、言いたい事の理解を出来るシオンはそれを了承する。
メアリーは半信半疑なようだが、逆に腕の良い職人を独占できたとも言える2人はお代の代わりに感謝を伝えて工房を後にする。シルバニーさん曰く今後は特殊な方法で素材、完成した物の受け渡しをするらしいが、それはまたその時になったら話そうと思う。
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