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第一章 放浪
17話 苦悩(2)
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首を切り落とされて絶命したアイスドラゴンの亡骸は空を舞う力を失って地へと落ちていく。
それが地へと落ちた瞬間大きな破裂音と共に地響きを起こす。
そして、それはメアリーの手によって定期的に起こされる事になる。
今、メアリーの近くにいるアイスドラゴンは先週見たものと大差ないものか、それよりも小さいものだった。
それにメアリーは斬りかかって空の領域から地へと叩き落とす。仲間を倒し始めた存在に気付いたのか、数体を倒した後にアイスドラゴンの子供はメアリーの方を避けて飛び始める。
すると、これまでは走ることしかしていなかったメアリーは動きを止めて足に力を込める。
溜まった力を解放すると、弾丸のように進む事で大きくなった風の抵抗を受ける剣を無理に引き込む事なく両手で持って体に寄せる。そのまま右足のつま先に真っ直ぐ向いた剣先を少し体の外に傾けると、その瞬間に一体のアイスドラゴンと交錯した。
すれ違う瞬間に体の側面に剣先を当てがわれたアイスドラゴンの横腹には浅い傷が刻まれていた。
その傷からは血の代わりに薄紫色の蒸気のようなものが出ていた。それが流出するのを防ぐように傷口が塞がっていく最中アイスドラゴンは痛そうに体をうねらせていた。
「少しの傷なら修復するようにできているのね。流石に落とした腕とか首は治らないらしいけど。でも、もう一回同じ場所を斬ったらどうなるのかしたら」
メアリーは自分が斬ったアイスドラゴンの様子を見てそう呟く。
次の瞬間、完全に塞がった傷跡に向かって飛び出すと再びその傷を開くようにと斬りかかるが、それを防ごうとアイスドラゴンは体をうまく捻らせて回避する。
最初に斬ったアイスドラゴンのように体の中心を狙えば、たとえ避けようとしたとしても完全に避けきることは不可能だ。しかし、メアリーが狙ったのは側面。回避しようと思えば簡単に避けることができた。
メアリーの斬撃を避けたアイスドラゴンは今度はこちらからと左手を振りかぶる。しかし、その攻撃もまた空を蹴ったメアリーによって避けられる。自身の下へと潜り込んだメアリーを踏み潰そうと足を振り下ろしたが、ここは空中である。
差し出された足を剣で受け止めると、それを自身の体の外側へと持っていく。そのまま足がメアリーの横を通過していくと、メアリーは剣を再び持ち上げて胸を反らせる。
「バカね」
そう言って反らした体の先端、右腕の先に持つ刀を槍のようにアイスドラゴンの足へと突き刺す。
すると、アイスドラゴンは再び痛そうに暴れ始める。今度は反撃するわけにもいかずに暴れるだけなのだが、それもメアリーによる次の斬撃で首を落とされたことで動きを止めた。
「メアリー様も残酷な殺し方をするのですね」
「やっぱりあの刀を渡しておいて良かったですね。ですが、先ほどから戦っているのは子供ばかり。大人のアイスドラゴンと対峙した時どうなるのか」
そう言って彼女は眉間に皺を作り、何やら考え込んでいる。
彼女が口にした事は何ひとつ間違ってはいない。しかし、シオンはヘスカと違う考えを口にする。
「メアは大丈夫でしょうか。最初からエンジン全開で行ってますけど体力が保つのか心配です」
神妙そうな顔で自分の考えをヘスカに共有する。
シオンはメアリーがまだ起きてから時間が経っていない事を知っている。それもヘスカは知っているだろう。しかし、ヘスカはメアリーの寝起きがあまり良くない事は知っているだろうか?
その答えは否だろう。そして、それを知っているシオンはメアリーが万全の状態ではない事を危惧していた。
また、それを知る彼は自分がメアリーと一緒に剣を振るうことができない事に苦悩していた。
それが地へと落ちた瞬間大きな破裂音と共に地響きを起こす。
そして、それはメアリーの手によって定期的に起こされる事になる。
今、メアリーの近くにいるアイスドラゴンは先週見たものと大差ないものか、それよりも小さいものだった。
それにメアリーは斬りかかって空の領域から地へと叩き落とす。仲間を倒し始めた存在に気付いたのか、数体を倒した後にアイスドラゴンの子供はメアリーの方を避けて飛び始める。
すると、これまでは走ることしかしていなかったメアリーは動きを止めて足に力を込める。
溜まった力を解放すると、弾丸のように進む事で大きくなった風の抵抗を受ける剣を無理に引き込む事なく両手で持って体に寄せる。そのまま右足のつま先に真っ直ぐ向いた剣先を少し体の外に傾けると、その瞬間に一体のアイスドラゴンと交錯した。
すれ違う瞬間に体の側面に剣先を当てがわれたアイスドラゴンの横腹には浅い傷が刻まれていた。
その傷からは血の代わりに薄紫色の蒸気のようなものが出ていた。それが流出するのを防ぐように傷口が塞がっていく最中アイスドラゴンは痛そうに体をうねらせていた。
「少しの傷なら修復するようにできているのね。流石に落とした腕とか首は治らないらしいけど。でも、もう一回同じ場所を斬ったらどうなるのかしたら」
メアリーは自分が斬ったアイスドラゴンの様子を見てそう呟く。
次の瞬間、完全に塞がった傷跡に向かって飛び出すと再びその傷を開くようにと斬りかかるが、それを防ごうとアイスドラゴンは体をうまく捻らせて回避する。
最初に斬ったアイスドラゴンのように体の中心を狙えば、たとえ避けようとしたとしても完全に避けきることは不可能だ。しかし、メアリーが狙ったのは側面。回避しようと思えば簡単に避けることができた。
メアリーの斬撃を避けたアイスドラゴンは今度はこちらからと左手を振りかぶる。しかし、その攻撃もまた空を蹴ったメアリーによって避けられる。自身の下へと潜り込んだメアリーを踏み潰そうと足を振り下ろしたが、ここは空中である。
差し出された足を剣で受け止めると、それを自身の体の外側へと持っていく。そのまま足がメアリーの横を通過していくと、メアリーは剣を再び持ち上げて胸を反らせる。
「バカね」
そう言って反らした体の先端、右腕の先に持つ刀を槍のようにアイスドラゴンの足へと突き刺す。
すると、アイスドラゴンは再び痛そうに暴れ始める。今度は反撃するわけにもいかずに暴れるだけなのだが、それもメアリーによる次の斬撃で首を落とされたことで動きを止めた。
「メアリー様も残酷な殺し方をするのですね」
「やっぱりあの刀を渡しておいて良かったですね。ですが、先ほどから戦っているのは子供ばかり。大人のアイスドラゴンと対峙した時どうなるのか」
そう言って彼女は眉間に皺を作り、何やら考え込んでいる。
彼女が口にした事は何ひとつ間違ってはいない。しかし、シオンはヘスカと違う考えを口にする。
「メアは大丈夫でしょうか。最初からエンジン全開で行ってますけど体力が保つのか心配です」
神妙そうな顔で自分の考えをヘスカに共有する。
シオンはメアリーがまだ起きてから時間が経っていない事を知っている。それもヘスカは知っているだろう。しかし、ヘスカはメアリーの寝起きがあまり良くない事は知っているだろうか?
その答えは否だろう。そして、それを知っているシオンはメアリーが万全の状態ではない事を危惧していた。
また、それを知る彼は自分がメアリーと一緒に剣を振るうことができない事に苦悩していた。
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