【鳥籠の華と髑髏】

一ノ瀬 瞬

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【鬱金香の花香】

【鬱金香の花香】

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【鳥籠の華と髑髏】

【鬱金香の花香】

[※ 一人称:改変可 二人称:改変可]
[※【】は場面の変わる様子 []は仕草]

※シリーズ構成ですが
単品でお読み頂いても大丈夫で御座います
【演者様の表現次第により変わる物語】を
目指しております
[ ]は語りかける相手への仕草部分です。
ご自由に参考程度に御覧下さい。

※1人称、2人称、改変可能
(言い回しも多少改変可能です)
(過度な改変のみ禁止です)
※男女兼用台本(視点自由)
※読み手様の御想像に御任せ致します
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

時代柄、家柄、此の身分全て【今】と違えば
私は幸福でいられたのだろうか?

何度も繰り返す問いに応えなど出る訳もなく
逃げたくても逃げ出せぬまま
窓の鳥籠を囲う格子から宵夜が照らし出す
一筋の月光を見上げて溜息を吐く

【今宵もまた私は生き延びてしまった】と。

陰鬱で重苦しい空気に呑まれそうな私
そんな私の隣で、私に微笑い掛ける少女
少女は、私の長い漆喰の髪をサラサラと
絡まった[鎖]心をほぐすように梳いてゆく



《※髪をとかされながら話を聞く》
アンタも良く飽きないもんだね…。

《※何がですか?と優しく聞かれる》

………鈍い子だね…アンタ。

いくら"私の側付き"でも
"アンタ以外"は"皆"
この店じゃ私に近寄りたがらないし
私の世話を好きでしたがるのはアンタくらい
良くもまぁ
毎日毎日飽きないもんだって言ってんだよ。


《※貴方が好きだからと幸せそうに言われ》

アンタ本当、変な子だね…。"アセビ"。

アンタくらいの気量良しで顔も良いなら
多少、感情事には鈍くても
身請けしたいって話で持ちきりだろう?

《※身請けされたくはないのだと話される》

…身請けを断ってるのも理由があるって?
………なら、その"理由"とやらを知りたいね

楼主様から【"側付き"にしている
姉女郎の御前にしか懐いていないから】
……なんて言われてね。

私にアンタが、
身請けを断る理由を聞いて来いだなんて云うんだから
人使いが荒いったらありゃしない。

身請けの話も、身請け先も
老舗の呉服屋さんの所だそうじゃないか
あの主様は性格も店の評判も文句無い
浪費癖(ぐせ)もないし悪癖も見当たらない。
"出来た人"

それにアンタを『正妻』に…なんて言われて
何を迷う事があるのかわからない程、完璧。

こんな生き地獄から抜け出せる
唯一の蜘蛛糸なんだ
何で掴もうとしないんだい、アセビ


《※貴方の話を聞き終わると
話があると、距離を詰められ告げられる》

如何したん……っ
…ぃた…いきなり押し倒す事ないじゃないか
布団だからよかったけれど…畳は…いた…?

……何でアンタが泣くのよ
今アンタが私を押し倒してるのに…

《※貴方が好きだと告げられる》
……ぇ…あ

アンタは…【私に構ってないで】
早く籠の外に…廓の外に出て仕舞えば…っ…
アンタには幸せが待ってるのに……何で…


…廓の外には何があるかも分からない
例え出たとしても…その先に
…【良い未来】が有るとは限らない
だから怖い?そんな杞憂なら
楼主様がきちんと見極めてくださってる
今回ばかりはちゃんとした相手だ

アンタを身請け出来るほどの御家柄さ
アンタに今まで与えられなかった
身体だけの悦(よろこ)びじゃない
アンタが心から微笑える幸せを…っ

《※口付けを優しくされ、口を塞がれる》

っ……ぁ…せび……っんっ…

《※幸せなんてどうでもいい、
貴方が1番必要だと言われる》

…ん…ふ…っ…ぁ
…な…に言って……私は…
このまま一人でだって…あた…し…は…


《※心の声》
今までずっと一人だった
親に、ろくに飯を食わせてもらえず
妹の世話ばかりして体も格好も見窄らしくて
石を投げられて寒い外で雨風を凌ぐ日々

口減らしのため、僅かの金の為に
今の楼主様に売られ拾ってもらってからも
楼主様と【妹】以外に髪すら触らせず
近寄らせることはしなかったけれど

花魁として、"商品"として、"姉"として
此の子を守るため
完璧な立ち居振る舞いを叩き込んだ

幾人の、幾許の相手に身体を委ね
腰紐をユラリと解き華を狂い咲かせて
【大切な妹】を守る為に此処まで上り詰めた

自由な場所も幸せも必ず
此の子に与えてやる為にと

ようやく
此の子を任せられる、身請け先に似合う
そんな主様を見つけ出したというのに
今更、嫌だと小さな頃の顔で云うなんて
私は何を間違え、たった一人、誰より大切な
【愛しい妹】を泣かせてしまっているの?


《※泣く目の前の妹に手を伸ばし》

…昔から…アンタの泣き顔だけには弱かった


《※悲しげに、涙を堪えながら
キスをして、覚悟を決めるように聞く》

……アセビ。本当にいいの?

……きっと、"この選択"は茨の道のよう
棘ばかりで貴方を傷つけて壊してしまうかも

…私と一緒に壊れてしまうかもしれないのよ


《※それでも良いと答えられる》

…答えなんて分かり切ってたわね

わっちの愛子…(いとしご)
せっかくの準備も…仕掛けも
ぜぇんぶ台無しでありんすね……。

ほんに、わっちの愛子は昔から変わりんせん
可愛らしゅうて…愛(いと)しゅうて
涙も、蜻蛉玉(とんぼだま)みたいに綺麗で
わっちも愛しておりんすよ…。
此の身が裂かれる程の思いでも

主さんとの幸せを…
そう考えておりんしたのに……。

《※泣きながら抱きつかれる》

えぇ…誰よりも大切で愛しい人
嘘なんてありんせんよ。
わっちを置いていかんのでありんしょう?
わっちがいなきゃ幸せなんかにならない
蜘蛛糸を自ら切って共に居たいと
その言葉に嘘偽りがないのなら……。

《※抱き締めながら話す》

………わっちと一緒に地獄に堕ちんしょうか
誰も邪魔なんて出来ない底まで。
…もう、戻れなくて良いなら

もう、戻るなんて言わせないけれど
…二度と離れないように…一緒に堕ちよう。

《※部屋の格子窓から、見える夜空を眺め》

嗚呼…宵月の光は
愛に酔わせ狂わせ心地のいい狂気へと
此の身を酔いしれ堕とさせる

愛しい華が袂(たもと)から零れないように
二度と離れない様に、二度と離さない様に
繋ぎ合わせ絡み合わせた指は、鎖は、
私達を別つことは出来ない
私は、胸に顔を埋める妹の黒髪を撫で梳き
口付けを堕とす

これは永遠に離さないための2人の鎖だから



これからは、ずぅっと…一緒よ。愛しい子。
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