11 / 15
勇者、困る。
しおりを挟む
――とある宿屋の一室にて――
(困ったな……)
勇者ああああは困っていた。
世界にはまだ魔王とその幹部が残っている。
しかし8日前からはじまったとされる僧侶連続失踪事件。
その始まりといわれる僧侶、クロノスは依然として行方不明のままだ。
それに戦士レイルレインとも連絡が取れない。
何者かにやられてしまったのだろうか?
クロノスは優秀な僧侶だ。
ただあくまで僧侶として優秀なのであって、回復のスペシャリストではあるが、戦闘のスペシャリストではない。
だから一人になったところを魔王の手先や手錬の暗殺者に襲われたなら、簡単にではないだろうが、おそらくやられてしまうだろう。
では戦士はどうだろうか?
と、そこまで考えていたところで
コンコン!
扉をノックする音が聞こえた。
「……どうぞ」
勇者は扉の方に向かって剣を構えた。
あまり考えたくはないが、戦士も何者かにやられてしまった可能性がある。
ガチャ
ゆっくりとその扉が開くと、そこに立っていたのは紫のとんがり帽子を被った魔法使い、リリアだった。
勇者は構えを解き。
「……お茶でもいれるよ」
そう言ってゆっくりと開いた扉を閉めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「どうぞ」
「ありがとう」
部屋のテーブルに座り、リリアは出された紅茶を少しずつすすっている。
「それで?何かわかったことは……」
「……とりあえずクロノスは亡くなったというのと、レイルレインは生きてるわ」
「そうか……クロノス……」
(9日前に、教会で見た姿が最後か……)
「……それなら、レイルレインは生きているなら、どうして姿を見せないんだ?」
「それは……」
「どうした?」
リリアは複雑な顔をしながら答えた。
「そのレイルレインがクロノスを殺したからよ」
――外では雷の音が鳴り始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~
「いや、待てそんな筈ないだろリリア?」
気持ちの整理が追いつかない。
「だってこの前までみんなで色んな戦いを潜り抜けてきたじゃないか?」
嘘だ
「けどもうレイルレイン以外は考えられないところまで来ているわ」
「何かの間違いだ」
嘘だと言ってくれ、一体何度、何度戦士に助けられたと思ってる。
「ハンターズギルドは一連の犯人をレイルレインと断定、蘇生魔法を使える人間をハンターズギルド本部に集めて一時的に保護するという形になったわ、つまり事実上ハンターズギルド対レイルレインの総力戦になる」
「もしそれが本当ならレイルレインは……」
「……まず助からないわね」
レイルレインがいかに強いと言えども、それはあくまで個人の話で、現行のハンターズギルドの総戦力は、レイルレインが所属していていた時代を超え、歴代最高の呼び声が高い。
「どうして……なぜそこまでして?」
「それは……」
言っていいものか迷っていた、ただこれは推測でなく確信に近い。
レイルレインは勇者に嫉妬していた。
ハンターズギルドによると、勇者以外は蘇生できないであろう攻撃をレイルレインは僧侶にしている、そして蘇生魔法が世界から消えた時のことを勇者とつなげると答えは出た。
「……レイルレインは勇者になりたいのよ、あなたを殺して」
(困ったな……)
勇者ああああは困っていた。
世界にはまだ魔王とその幹部が残っている。
しかし8日前からはじまったとされる僧侶連続失踪事件。
その始まりといわれる僧侶、クロノスは依然として行方不明のままだ。
それに戦士レイルレインとも連絡が取れない。
何者かにやられてしまったのだろうか?
クロノスは優秀な僧侶だ。
ただあくまで僧侶として優秀なのであって、回復のスペシャリストではあるが、戦闘のスペシャリストではない。
だから一人になったところを魔王の手先や手錬の暗殺者に襲われたなら、簡単にではないだろうが、おそらくやられてしまうだろう。
では戦士はどうだろうか?
と、そこまで考えていたところで
コンコン!
扉をノックする音が聞こえた。
「……どうぞ」
勇者は扉の方に向かって剣を構えた。
あまり考えたくはないが、戦士も何者かにやられてしまった可能性がある。
ガチャ
ゆっくりとその扉が開くと、そこに立っていたのは紫のとんがり帽子を被った魔法使い、リリアだった。
勇者は構えを解き。
「……お茶でもいれるよ」
そう言ってゆっくりと開いた扉を閉めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「どうぞ」
「ありがとう」
部屋のテーブルに座り、リリアは出された紅茶を少しずつすすっている。
「それで?何かわかったことは……」
「……とりあえずクロノスは亡くなったというのと、レイルレインは生きてるわ」
「そうか……クロノス……」
(9日前に、教会で見た姿が最後か……)
「……それなら、レイルレインは生きているなら、どうして姿を見せないんだ?」
「それは……」
「どうした?」
リリアは複雑な顔をしながら答えた。
「そのレイルレインがクロノスを殺したからよ」
――外では雷の音が鳴り始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~
「いや、待てそんな筈ないだろリリア?」
気持ちの整理が追いつかない。
「だってこの前までみんなで色んな戦いを潜り抜けてきたじゃないか?」
嘘だ
「けどもうレイルレイン以外は考えられないところまで来ているわ」
「何かの間違いだ」
嘘だと言ってくれ、一体何度、何度戦士に助けられたと思ってる。
「ハンターズギルドは一連の犯人をレイルレインと断定、蘇生魔法を使える人間をハンターズギルド本部に集めて一時的に保護するという形になったわ、つまり事実上ハンターズギルド対レイルレインの総力戦になる」
「もしそれが本当ならレイルレインは……」
「……まず助からないわね」
レイルレインがいかに強いと言えども、それはあくまで個人の話で、現行のハンターズギルドの総戦力は、レイルレインが所属していていた時代を超え、歴代最高の呼び声が高い。
「どうして……なぜそこまでして?」
「それは……」
言っていいものか迷っていた、ただこれは推測でなく確信に近い。
レイルレインは勇者に嫉妬していた。
ハンターズギルドによると、勇者以外は蘇生できないであろう攻撃をレイルレインは僧侶にしている、そして蘇生魔法が世界から消えた時のことを勇者とつなげると答えは出た。
「……レイルレインは勇者になりたいのよ、あなたを殺して」
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる