偏屈王と花の王子

鯖缶

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第一

拒絶

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「ごきげんよう、ミナホ様。この温室素敵ですね」

温室で和んでいると次第に暖かくて眠くなりうとうとと眠ってしまったらしい。時間にしてほんの十数分くらいだったとおもう。次に目を覚ますとそばにミナホ様が立っていて驚いてしまった。
寝癖はついてないだろうか。涎は出てないだろうか…髪を触ったり自分の頬を触ってみたりして確かめた。
特別に変なとこは無さそうだ...

案の定パッと視線は外されてしまい、覚悟はしていたが寂しい気持ちが込み上げる。

「お仕事、お疲れ様です。休憩ですか?」

笑顔で話しかける。

「あの、」
「このような場所で寝ては風邪を引きます。部屋に戻ってください」

視線は斜め下を向きながらそう言われてしまい、小さくはいとだけ答えるのに精一杯だった。

「では、失礼します」
「あ、待って...」
「っ...!!」
「ぁ...ごめんなさぃ...」

踵を返し、こちらに背を向けるミナホ様に思わず声をかけ腕に触れると勢いよく振り払われてしまった。反射的に謝ってしまい、ミナホ様の顔を見ると驚いたような顔をしている。
触れることは許されないようだ。

「...なに、か...」
「いえ...あのお話がしたくて...これからの事とか、あと...あの...」

泣かない。この人に涙で説得したくない...

「...話ならリモーネに...仕事に戻りますので」

拒絶。
わかりやすいそれにまた小さくはいとだけ答えるのが精一杯で縮こまってしまう。

温室を出ていく姿を追いながらその背中がうっすらとぼやける。
やはり、この人にとって僕はいらない人間ということなんだろうなとわかって涙が出た。


部屋に戻るまで目に張った涙がこぼれないように耐えた。すれ違う人達を驚かせないように必死になりながら部屋に入ってパタンと扉を、閉じたのを合図のようにパタパタと涙が絨毯を濡らした。それを見てほっとしたように息がこぼれた。
涙を拭ってからソファーに座って息を整える。今すごい酷い顔をしているだろうななんてぼーっと考えていると部屋のノック音がなった。

「はい...」

話をしにリモーネさんが来たのだろうか...僕が話したかったのはミナホ様なのになぁなんて思いながら扉まで行くと外から元気な声が聞こえた。

「僕だよ!カナタ!」
「カナタ様...?」

扉を開けた先には満面の笑みでこんにちわと挨拶をする元気いっぱいの義弟の姿があった。
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