異分子マンション

カナデ

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「しかしリツコさんは、心のどこかで〝ありのままの自分を受け入れてくれる人が欲しい〟と思っていらっしゃる。そんな潜在意識を読み取ったからこそ、こうしてお誘い申しあげたのです」

「別にあたしは…………まぁいいや。話を進めてくれます?」

「かしこまりました。先ほど〝心を読む力〟と申しましたが、彼女いわく『リアルタイムな心情だけでなく、心に根付く深い部分まで伝わってくる』とのことです。彼女からあなたの〝異彩いさい〟も聞かせていただきました」

 初めて聞く単語に首を傾げる。
 ハルは胸ポケットからペンを抜き取ると、先ほど渡した手紙の端に漢字を記してくれた。

「〝異なる彩り〟と書いて異彩。当マンションでは〝普通と違う部分や能力〟のことをそう呼んでいます。そして異彩を持つ人のことを〝異彩者いさいしゃ〟と呼びます」

「異なる彩り……。あたしのやつはそんな洒落たものじゃないですけど」

「リツコさんの異彩は〝赤い眼〟ですよね?」

「……はい。左だけ特殊なコンタクトをしてます」

「生活に不便はないですか?」

「当たり障りなくバイト生活をしてますよ。友達と呼べる人間は一人もいないけど」

「現時点でファミリアに興味をお持ちであれば、詳しい話をさせていただきますが。いかがなさいましょう」

「ファミリアじゃなく、住人に対する興味みたいなものですけど……聞かせてほしいかな」

「承知いたしました。まずは当マンションに入居した場合について、約束事を説明させてください」

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