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しおりを挟む「家賃はいくらなんですか?」
「ワンルーム十畳、三万円です」
「安っ! あたしが住んでるとこの半分じゃん……」
「お部屋、案内させていただきますね」
ハルに続いて事務所を出る。
斜め右側――自動販売機やテーブルの並ぶコーナーの横に、ガラス製のドアがあることに気付いた。中に本棚が並んでいるのが見える。
「あれは何ですか?」
「住人専用の図書室です。隣のドリンクコーナーは、住人同士でお茶をするのにもお使いいただけますよ」
そんな説明を受けながらエレベーターへ。
向かった先は三階フロア。
ハルは《301》と書かれた部屋の前で立ち止まり、ドアのロックを解除した。内部はがらんとしたフローリングのワンルームで、一人暮らしには充分な広さがある。
「現在、空室はここだけです。この真下――二〇一号室は僕の部屋ですが、自室にいるのは就寝時くらいですね」
「……ここに住んでる人のこと、訊いてもいいですか?」
「異彩含め、個人情報に関わる部分以外でしたら」
「全員、ここが異分子だらけのマンションだと理解した上で入居したんですよね。似た者同士ってことでベタベタしてるんですか?」
「住人規約にもあるとおり、他者に異彩を話す・話さないは自由ですから。当然、交流の仕方も様々となります。とはいえ皆さん似た境遇をお持ちですから。自然と親近感が湧くとおっしゃる方が多いですね」
「そういうもの?」
「そのあたりは人に寄りけり、ですよ。『ここに住んで初めて友人ができた』とおっしゃっていた方もいます」
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