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しおりを挟む友人――あたしには縁のない存在だと思ってきた。
今もそう考えているし、友人がほしいわけでもない。
ただ……自分と似た境遇の人々が集まってどんな生活を送っているのか、知りたい気持ちはある。
即決するわけにはいかないが、入居を検討するつもりで話を進めてみるか。
そう発言すると、ハルは「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀した。三〇一号室をあとにし、再び事務所へ。
「どのみち、あたし一人で勝手に決めるわけにもいかないんですけど。このマンションの実情、母親に話しても大丈夫ですか?」
「リツコさんの異彩をご存じで、あなた自身が『信頼できる』と思う方であれば」
「じゃあ問題ないですね」
「他にご不安な点などあれば遠慮せず相談してください。返事は急ぎませんから」
「……分かりました。とりあえず保留ってことでお願いします」
今後についての連絡等は、ハルの名刺に記載された電話番号へ――というところで面談は終了した。
アパートに帰宅したのは夕方。
母さんに電話して顛末を説明すると、『全部リツコに任せるよ』と返ってきた。最終的な判断は自分でしなさいという意味だろう。
ハルに渡されたファミリアの資料を読み、丸一日じっくり考え、入居を決意した。
これがあたしの人生の転機になるかもしれない。
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